「他部署の仕事を知ることができたことがとても有益だった」
これは、研修終了後の受講者アンケートなどでもたらされることが多い感想の一つです。
研修の感想については、やはり研修テーマに関するものがもっとも多いわけですが、冒頭のように「お互いの部署の情報が得られたことが有益だった」と感じる人が多いのも事実です。
これは長年同じ会社に勤めていたとしても、他部署の仕事については案外知る機会が少ないということの表れなのでしょう。
それでは、どうすれば有益であるお互いの仕事のことを知る機会を得ることができるのでしょうか。
そこで、思い出したのが「ワイガヤ」です。
かつてホンダ(本田技研工業)で有名になった「ワイガヤ」を聞いたことがあるという方も多いでしょうが、「ワイガヤ」とは文字通り「ワイワイガヤガヤ」と賑やかに意見交換をすることです。
所属や立場に関係なく、同じ組織に所属する人が大勢で行う会話のことを指していました。
ホンダでは、このような場が自然発生的に設けられていたことにより、お互いの仕事の内容に触れることができたり、問題点を共有できたりしていたそうです。おそらくこれを通して新しいアイディアなども浮かんだりしたことでしょう。
一方、このワイガヤは仕事の話だけではなく、ときにはプライベートの話などにも発展したために単なる雑談のようにもとらえられ、メリットだけではなくデメリットも指摘されました。
先日、弊社が担当した研修の中で、事前に上司が書いた受講者へのメッセージを受講者が受け取る時間を設けました。その際、一人の上司が書いたメッセージ(改善点)に「作業中の必要以上の私語の削減に注意を払って欲しい」といった記述がありました。
この受講者が仕事中にどれくらいの私語をしていたのか、現場を見ているわけではないので、実際のところはわかりません。
ここで指摘されているように、仕事中の必要以上の私語は慎まなければなりません。一方で仕事に関係する話なのか単なる時間の浪費にすぎないものか、このような会話は線引きが難しいのも事実です。
仕事の生産性の向上が叫ばれている中、「仕事中の会話は生産性を阻害するもの」と一律に決めつけてしまうと、自分の仕事だけを黙々とこなすようになります。その結果、隣の人が担当している仕事すらわからないようなことが発生してしまい、職場での情報共有ができないという弊害が生まれる可能性もあります。
Face to Faceのコミュニケーションは一見すると無駄のようにも思えますが、冒頭の感想のように有益な部分もあることから、巡り巡って生産性の向上に寄与している部分もあります。
かつては、ホンダのワイガヤのように日本の組織の特徴的なものともされていたFace to Faceで行うコミュニケーションが減りつつあります。今後、お互いの仕事の内容や問題点を知る機会を設け、それをどう活かしていくか、働き方改革や生産性向上が求められている現在だからこそ、重要な課題なのではないでしょうか。