スローラーナー(Slow learner)とは、学ぶのが遅い人という意味です。ファストラーナー(Fast learner)のように、飲み込みが早く要領の良いタイプとは正反対です。そのため、成果が出るまで平均的な人より時間がかかってしまいます。
それでもスローラーナーはマイペースでコツコツ学び続けることができます。勉強したことを着実に積み上げていくので、いつの間にかファストラーナーを追い抜くこともあります。「ウサギと亀」のようですね。
スローラーナーの特徴をみてわかると思いますが、競争的な状況や短期集中型の課題には向いていません。
企業における人事評価はどちらかといえばファストラーナーに有利です。特に最近は「今すぐ」結果を出せる人を企業が求める傾向にあるからです。
したがって、企業研修に対しても「短時間で身に付いて、すぐに使えるスキル」を要求します。コミュニケーションやロジカルシンキングといった技法指向の研修はもちろん、問題発見・課題解決といった本来は積み上げていくことでしか身に付かないテーマに対しても「すぐに使える」ことが求められています。まさにファストラーニングですね!
その結果、研修では「テンプレート」のような一種の解法パターンを練習して時間切れになってしまいます。そして、職場に戻ってからそれを実行することになります。
結論から言えば、目先の問題の半分くらいは上手く片付きます。研修の成果としては上出来かもしれません。
しかし、それでは組織の根っこに横たわるやっかいで本質的な問題には歯が立ちません。
そうしたやっかいな問題に直面すると「それはすぐに結論が出ない問題だから」、「他の部署まで巻き込むのは難しいから」、「前任者が時間を使って苦労したけどダメだったから」・・・といった言い訳を正当化してしまうことになりかねません。
目先の仕事に振り回されず、時間と手間のかかる問題にじっくり取り組んで組織を変えていくことができる人間=スローラーナーこそ、いま最も必要とされている人材ではないでしょうか。
(人材育成社)