バイオリンを手に指揮をするヴィリー・ビュッヒラー。
この正月休み、「ウィーン・シュトラウス・フェスティヴァル・オーケストラ」の演奏を聴きに行ってきました。
創立35周年のウィーン・シュトラウス・フェスティヴァル・オーケストラは、ウィーン音楽の伝統的な様式を踏襲したオーケストラです。J・シュトラウス等のウィーン音楽の魅力には定評がありますが、期待以上の演奏会でした。
オーケストラというと、私はこれまでどちらかというと厳格なイメージを持っていましたが、今回の演奏では指揮者のヴィリー・ビュッヒラーがとても情緒豊かで、満面笑顔でユーモアのある指揮をしていました。
指揮者が指揮をしつつバイオリンを奏でたり、時にコンサートマスターが指揮者になったり観客を巻き込んで一体感を作るなど、終始一貫して楽しい雰囲気の演奏会でした。
オーケストラは、ご存知のとおり弦楽器・管楽器・打楽器・鍵盤楽器その他,さまざまな楽器を組み合わせた大規模な合奏団です。パートごとに選りすぐられた演奏家が集結し、一体となって音楽を紡ぐわけです。
今回の演奏も実に見事に調和が取れていましたが、国籍も年齢も違うプロの演奏家がどのようにチームとして集結していくのだろうかと以前から疑問に思っていたところ、先日の朝日新聞にそれに関して指揮者の佐渡裕さんの記事が紹介されていました。
それによれば、「楽団員は多国籍で価値観も違う。一つのパートがドイツ人だけということはまずない。異文化の対立もある。でもオーケストラにはオーディションがあり、一つの席を世界中から200人ほどが競う。その上で一定の試用期間があり、ルールを守れなかったり、対人関係が築けないような人はその間に落とされる」とのことです。
企業の組織のみならず、オーケストラにおいても全体最適の視点が求められているということですね。
私たちは組織の中で仕事をしていると、つい自分の仕事や自部署の仕事がうまく進むように、部分最適の視点で仕事をしてしまいがちです。でも、少し目線を高くして全体を見渡すと、自分が正しいと考えていたことが全体としては必ずしも正解ではないことがあります。自分の仕事を大切に一所懸命取り組むことが、時には視野を狭くしてしまうことがあることを認識しておく必要があるわけです。
また、佐渡さんは「個性の強い集団だけれども、絶妙なのはそれぞれが役割を知っていてやり遂げること」 そして「その個性をまとめるためには指揮者には繊細な指示を言い続けるタフさが必要」とも言っています。
そして指揮者、リーダーに必要なものは「型を持たないこと。ものを創っていくことにみんなが喜びを感じるように指揮することが大切で、そのためには誰よりも創る喜びに満ちていなければならない」と言っています。
佐渡さんのお話は、企業などの組織におけるリーダーに求められるものに通じるところが多いと思いますが、自ら「創る喜び」を感じつつ「みんなが喜びを感じるように指揮」をするという視点をどう人材育成に活かして行くか、今年の大きな課題になりそうです。
(人材育成社)