パオと高床

あこがれの移動と定住

鄭銀淑(チョン・ウンスク)『韓国の美味しい町』(光文社新書)

2011-09-03 01:39:53 | 国内・エッセイ・評論
韓国の地方にある美味しい食を訪ねる本だ。といって、お店の紹介本ではない。また、韓国伝統料理の蘊蓄語りに終始する本でもない。その料理がそこに存在していることの背景となる適度な蘊蓄とその料理の概要を語りながら、著者が訪ねた食堂に触れる、バランスのよい本になっている。
もちろん、食事の店をもっと知りたい人や、歴史的な食の蘊蓄を知りたい人には物足りないかもしれないが、あっ、この地方に行って、この料理食べてみたいと思うことができるし、地方でその伝統料理を支えている料理人の姿が見えるような気がするわけで、楽しい一冊なのだ。
まず、全州ピビムバから入る。お店は「盛味堂(ソンミダン)。そして、晋州ピビンバなどへと広がっていって、安東の「ホッチェサパッ」まで行く。次は冷麺。「平壌冷麺」と「咸興冷麺」の麺の違いなどを語りながら名店をさらりと訪ね、北朝鮮からの冷麺の渡来に触れていく。この定番二つから、一気に韓定食、宮廷料理へ。
全羅道の食の豊かさにかなり力点を置きながら、釜山のテジクッパやミルミョン、パジョンにもページをしっかり割いて、マッコリも登場する。コンナムルクッパ、キムチ、チョギ、トッカルビと、奇抜なものではなく、そこに行けばおいしく食べられそうなものを、定番を繰り出してくる。
行ったことのある店も出てきて、ああ、そうそう、こんなだったと思ったり、行ってみたいところにも出会えたり、また、そうかあの時食べていたらと思えるものもあって、ごろごろしながら楽しめた。ああ、韓国に行きたい。
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