パオと高床

あこがれの移動と定住

馬場あき子『短歌への招待』(読売新聞社)

2009-02-24 03:17:11 | 国内・エッセイ・評論
招待されてしまいました。

ことわざの中に「律」を見て。短歌の「律」について語り始める。
語りはいにしえの律から現代短歌の律へと進む。実際の歌を引きながら、語り口は明快である。
律の大衆性に依拠して歌う歌、それとの格闘のあとを刻む歌。そこに、次には「調べ」が現れる。短歌の中心的な構成要素が、引き出される。
さらには短歌史を辿る。近代短歌を正岡子規の『歌よみに与ふる書』と雑誌『明星』派の流れの中で、いかに短歌が近代短歌に変遷していったかが語られる。そこに横たわる、万葉集と古今和歌集。それをめぐる措定と反措定。また、たびたび起こる短歌滅亡論との対峙の中から常に展開を繰り返してきた短歌の流れが綴られる。そして、戦後短歌は前衛短歌の衝撃を持って、現代短歌へと続いてくる。
その結節点での論争に触れ、また、重要な流れを作った価値観にも触れる。斎藤茂吉の「ますらをぶり」と釈迢空の「たをやめぶり」。その二つとも少し違う「旧派和歌」の伝統文体。「男歌」と「女歌」。その二つを入れ替える歌。それぞれが、もたらす歌の趣。
短歌に接するときの、楽しみと深みとを伝達してくれる本である。問題意識を刺激してくれる。さらなる深みへの道案内になってくれる一冊でもある。

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