ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

埼玉県について新聞、本、雑誌、インターネット、TVで得た情報に基づきできるだけ現場を歩いて書くエッセー風百科事典

女子栄養大学 坂戸市

2014年06月05日 16時13分33秒 | 食べ物・飲み物 狭山茶 イチローズモルト 忠七めし・・・

学生時代は唯物論が全盛の時代だった。「史的唯物論」が幅を利かせていたのである。

へそ曲がりだから、なんとなくしっくり来ないので、いろいろ読み漁っていると、唯物論の中に「唯食論」というのがあることを知った。

今どき唯食論を唱える人もいないようなので、一言で言えば、ドイツ語を直訳すると、「人間はその食ったところのものである」というのである。

味は分からないのに大食漢、大酒飲みだったので、わが意を得た思いだった。

今はやりの栄養学そのものの考え方である。

唯食論と栄養学を結びつけてくれたのは、川島四郎先生だった。陸軍経理学校卒後、東京帝大農学部に進み、食糧学、栄養学を研究、終戦時は陸軍主計少将だった。

腹が減ったときに、ポケットに入れてあるナッツや小魚をかじって「百歳まで生きるよ」と言っておられたのに、アフリカのケニアでマラリアに二度かかり、1986年91歳で亡くなられた。

ナイロビに滞在中、教え子の所に、「アフリカ人はこんな粗食でなぜ生きておられるのか」を研究するため、毎年来られたので知り合いになった。

「栄養学とは、昔は営養学と書いて、ドイツでは馬を肥やす学問だったんだよ」と教わったのも先生だった。

日本に帰って、数多い先生の分かりやすい栄養学の本などを読んでいるうち、女子栄養大学と月刊「栄養と料理」を知った。

いつか大学を訪ねてみたいものだと思っていたら、2002年5月31日(土)坂戸市のキャンパスで学園祭「若葉祭」をやっているというので、思い切って訪ねた。創立以来80年になるという。

この日午後、香川芳子学長(創立者香川綾さんの長女)が「魔法の栄養学」という講演をする日程もあったからである。

東武東上線の若葉駅から徒歩で5分というのも気にいった。埼玉県内には大学は数多いのに、駅から離れているところが多いからだ。

講演は、綾さんの残した「4群点数法」をパソコンの画像を使って分かりやすく説明するものだった。食品を第1群(乳・乳製品、卵)、第2群(魚介・肉・その加工品、豆・豆製品)、第3群(野菜、芋、果物)、第4群(穀類、油脂、砂糖)に分け、1日各3点、3点、3点、11点と計20点食べるというもの。

学長はまた、朝食をとることが大人にも子供にもいかに大切かを強調された。

おなじみの話ながら、その言わんとするところは、永遠に新しい。栄養学は地味ながら、それを習慣化すると魔法のような効果を発揮する可能性を秘めているからである。

日本は、中国や朝鮮半島に比べて、食生活の貧しさから「医食同源」の思想に乏しい。このため、栄養失調に基づく結核やらい病が蔓延、戦後も塩分過剰摂取による脳溢血などが国民病の一つである。

香川栄養学が重視するのは、病気になってから患者を治すのではなく、食を通じて「病気を予防する」、つまり「予防医学」にある。

高齢化に伴う生活習慣病など食の問題が見直される中で、香川栄養学は自治体や企業などに受け入れられて、最近それこそ引っ張りだこ。協定を結んでいる社会連携活動は、県内ばかりか香川県や沖縄久米島町など全国に広がり、多過ぎて枚挙に暇がないほどだ。

産学連携のトップバッターで、世界でも類のない栄養専門大学の面目躍如である。

埼玉県や県教育委員会、埼玉医科大学、県農業大学校、川越総合卸売市場内で「食育ショップ」)などとも連携を進めている。

地元坂戸市とは、市内にある城西大学、明海大学とともに、連携して「葉酸プロジェクト」を推進しているのはよく知られている。

葉酸は、DNA合成に関わっているので、妊娠初期に不足すると、無脳症や二分脊椎などの先天異常をきたしかねない。その不足はアルツハイマー症や動脈硬化を招くとも。

このため市内では葉酸入りの米やパンなども開発された。私も帰りに正門近くの売店で売っている葉酸米の小箱を買って帰った。


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