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彩湖 さいたま・戸田市

2013年07月08日 10時17分15秒 | 川・水・見沼
彩湖 さいたま・戸田市

「彩湖という人造湖をご存じですか」と聞いてみると、東京の人はもちろん、埼玉県の人でも知らない人が多い。「荒川第一調整池は」と聞いてみると、ほとんどの人が首を傾げる。

戸田市、さいたま市、和光市、朝霞市、志木市にまたがり、ハンノキ林で知られる秋ヶ瀬公園と人造湖「彩湖」を含めた一帯の河川敷が荒川第一調節池。

荒川第一調整池とその中にある彩湖は、さいたま市の中央部から川口市にまたがる見沼田圃(たんぼ)に匹敵するほどの水と緑の大規模空間なのに、もっと活用されていいのではないか。

エジプトはナイル川の賜物だと言われる。それに習って言うと、埼玉県は荒川の賜物だ。

荒川はその名のとおり、「荒れる川」である。この川を治めるため、地元の人々も為政者も力を尽くしてきた。この荒川第一調整池や彩湖もその努力の一つである。

第一の名が付いているのは、この調節池のすぐ北の羽根倉橋と上江橋の間に荒川第二調節池、その上流に第3、第4、第5の調節池の計画があったからだ。調整池とはふだんは公園などに使用、洪水、台風の増水の際は一時的に貯水、下流の被害を少なくする平地のダムである。

第一調整池は、広い川幅を活かして、川の中にもう一つの堤(囲ぎょう堤)を築いてつくられた。着工は1970年。1995年に一般公募で真ん中の湖が彩の国にちなんで彩湖と命名され、彩湖が完成したのが1997年。第一調整池全部が完成したのは2004年である。計画から完成まで34年もかかった大工事だ。

羽根倉橋から笹目橋までの5.8km。総面積は彩湖の5倍強の5.85平方km、 貯水量は彩湖の4倍弱の3千9百万立方m。「平地のダム」で、人工の自然空間だ。 

その中で常時、水を湛えている貯水池が彩湖である。周囲8.5km、面積1.18平方km、深さ10.7m、総貯水量は1060万立方m(埼玉県人口の6日分)。この貯水量は洪水時の見沼田圃(たんぼ)の湛水量とほぼ同じだ。

彩湖は、洪水対策と同時に東京の夏場の渇水対策も兼ねる。荒川に余剰水がある時は水を貯め、足りない場合は、貯めている水を、水道用水を取水している秋ヶ瀬取水堰の上流に補給し、水道用水を確保する。

ここで取水された水は左岸の大久保浄水場から、さいたま、戸田、川越、志木など16市1町約380万人、右岸の朝霞浄水場からは東京23区の西部などへ供給されている。

水質保全のため、噴水でプランクトンの細胞を破壊したり、湖底3か所に設置したパイプから気泡を発生させ、水の対流を起こさせ、水質悪化を防ぐ曝気循環装置もある。4か所に設置された階段状の滝に、湖底から組み上げた水を流して水中に酸素を送って水質改善を図ることもできる。

水質悪化を恐れて、湖面でボートやモーターボート、ヨットなどの使用は許されていない。

彩湖周辺の自然環境も整備されていて、湖の北部のさいたま市南区側には「荒川彩湖公園」、湖の中部の戸田市側には「彩湖・道満グリーンパーク」が広がり、市民の格好の遊び場になっている。さいたま市側には「田島ヶ原サクラソウ自生地」もあり、シーズンにはサクラソウ祭りでにぎわう。

湖の中心部をまたぎ、戸田と和光市を結ぶ幸魂(さきたま)大橋は、埼玉県を代表する斜張橋で橋長約1500m。東京外環自動車道と国道298号線が通る。

この橋より南側は、野鳥と自然保護のため、立ち入り禁止になっていて、オオタカ、ハヤブサ、ノスリなどのタカ類、コミミズクなどのフクロウ類など貴重な野鳥を見かけることもある。野鳥観察にも使われている。

代表的なのは繁殖のため南から渡ってくる夏鳥オオヨシキリで、湖の周辺のアシ原で子育てをするため、「ギョギョシ ギョギョシ」とにぎやかだ。

植物に興味がある人なら、彩湖・道満グリーンパークの一角にトダスゲの保存地がある。彩湖自然学習センターもあるので、訪ねてみたら勉強になる。

さわやかな風に吹かれて、荒川の高い堤防の上から遠く秩父の山を望める。堤防から荒川や彩湖、公園、武蔵野線の鉄橋や幸魂大橋を眺めると、実に幸せな気分だ。見沼田圃と荒川第一調整池と、二つの首都圏屈指の大規模な水と緑の空間を持つさいたま市民らは、本当に恵まれている。




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