ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

埼玉県について新聞、本、雑誌、インターネット、TVで得た情報に基づきできるだけ現場を歩いて書くエッセー風百科事典

紅葉中津峡 秩父市

2012年11月12日 17時59分17秒 | 名所・観光
紅葉中津峡 秩父市

12年11月9日、中津峡は紅葉の真っ盛りだった。

埼玉県随一の紅葉の絶景ポイントと聞いていたので、一度は訪ねたいとかねがね思っていた。幸い好天。秋の陽を受けた紅葉は光り輝き、予想をはるかに上回る豪華さだった。

紅葉にもいろいろある。イロハモミジ、ツタ、ハゼ、ウルシ、ドウダンツツジ、ニシキギのように文字どおり紅いのもあれば、イチョウ、ブナ、コナラのように黄葉、つまり黄色いもの、クヌギのように茶褐葉とでも呼ぶべきか、茶色っぽいものもある。

それぞれの色の違った葉が並存したまま目に映るのが、いわゆる紅葉なのだろう。

自然の紅葉では、黄葉、茶葉が多い。中津峡のは所々に紅葉が際立ち、豪勢さを盛り上げる。

地図を見れば分かるように中津峡は、奥秩父の中で最も西側にある。北進すれば志賀坂峠で群馬県、西進すれば三国峠で長野県に至る。

埼玉・長野県境の十文字峠を源にする中津川が深い峡谷をえぐる。両岸に、100mにも及ぶ絶壁がそそり立つところもある。それが全山紅葉しているのだから、圧倒される。

奥秩父随一の美観で県の名勝地に指定されているのも十分うなずける。

中津峡の問題はアクセスである。

さいたま市の武蔵浦和から鉄道、バス、徒歩で出かけると、武蔵野線で秋津で西武池袋線に乗り換え、飯能で特急に乗り換え、西武秩父駅から走って秩父鉄道お花畑へ。終点の三峰口で西武観光バスに乗って約50分。中津峡の中心地、相原橋で下車するまで3時間以上かかる。特急を使うのはバスに乗り遅れないためである。日に数本しかないからだ。

相原橋から徒歩で仏石山トンネルを迂回して川沿いの仏石山遊歩道と持桶トンネルの手前にある深紅の「持桶の女郎もみじ」(写真)を見て、持桶トンネルを迂回して川沿いの持桶遊歩道へ。

「女郎もみじ」が中津峡の目玉で、この二つの遊歩道から眺める紅葉が中津峡の華である。

なぜ「女郎もみじ」と呼ばれるのか。

その由来について、秩父観光協会大滝支部に残るメモによると

かつて中津峡には48の瀬があり、48の丸木橋がかかっていた。そんな昔の秋のある日、もみじが盛りを迎えた持桶に、山奥には見られないあでやかな男女がなぜか突然現れた。

二人は紅葉の美しさと手持ちの酒に酔いしれ、たわむれに舞い踊った。

二人がどこから来たのか、どこに帰ったのか、見た村人はおらず、いつとはなく姿を消していた。

そこにある日本のもみじの紅葉が二人のあでやかな姿に似ているので、人々は「女郎もみじ」と呼ぶようになった。

紅葉は300年余を経ているという。

持桶遊歩道から「彩の国ふれあいの森」にある「こまどり荘」に向かう途中にある民宿中津屋でこの話を聞いた。寒い日だったので、昼間から二人にあやかって銘酒「秩父錦」二本を熱燗で飲み、その昔をしのんだ。