鳩山邦夫法相の発言は、「近代刑法の精神」「推定無罪」の大切さを改めて認識させてくれたので高く評価する

2008年02月17日 19時21分05秒 | 政治
◆共産党の志位和夫委員長が2月17日、山梨県昭和町で記者会見し、鳩山邦夫法相が、鹿児島県志布志の選挙違反事件で逮捕・起訴された住民が鹿児島地裁で無罪判決を受けた件で、「冤罪とは言えない」と述べたことについて、「検察の違法捜査を擁護する発言であり、許しがたい発言である」と批判したうえで、「法務大臣としての資質に欠ける。任命権者の福田首相は、鳩山法相を罷免すべきだ」と要求した。
 しかし、日本国憲法第31条(法定の手続きの保障)以下、第40条(刑事補償)までの規定や刑事訴訟法上の規定を総じて、逮捕・起訴された「容疑者・刑事被告人」は、「有罪判決」を受けて、刑が確定するまでは、「無罪の推定」を受けているのであるから、正確には「犯罪人」とはいえない。あくまでも「容疑者・刑事被告人」であるに過ぎない。志布志で逮捕・起訴された住民は、「無罪の推定」を受けて、刑事法廷での審理の結果、検察側が「有罪の立証」をできず、自由心証主義に立脚する裁判官の判断で、被告人全員が「無罪判決」を受けたのであり、住民は「冤罪」を被ったわけではなかった。
◆冤罪とは、本当に罪がないのに有罪判決を下され、刑が確定して服役させられた者をいう。この「有罪判決を受け、刑が確定した」というところが重要なポイントなのだ。たとえば、富山県起きた事件で逮捕・起訴されて、有罪判決を受け、服役した後に、「真犯人」が判明したような事件の被害者は、紛れもない「冤罪の被害者」である。つまり志布志の住民は、「冤罪の被害者」にされかけ、間一髪のところで、裁判官に救われたということである。
この意味で、鳩山法相の発言は、正確な発言であり、東大法学部卒業の「法学士」なるが故に厳密に述べたと言える。志位委員長が「検察の違法捜査を擁護する発言であり、許しがたい発言である」と批判したのは、明らかに間違いである。
◆最も問題なのは、マスコミを含めて、一般国民の多くが、官憲により「逮捕・起訴」され、「容疑者・刑事被告人」を、この段階では「無罪の推定」を受けているにもかかわらず、いかにも「有罪判決が確定」して服役している「犯罪者」のように意識してしまうところである。これは、「近代刑法の精神」をしっかりと理解していないところに由来する「悪弊」である。前近代的な古い意識とも言える。もっと言えば、日本国民のなかに巣食う「風土病」のようなものである。一日も早く払拭しなければならない。特高警察など官憲から厳しく追及されてきた共産党の末裔である志位委員長が、「警察・検察アレルギー」に依然として囚われているのは、理解できるけれど、大事なのは、国民の間に「「近代刑法の精神」を植え付け、正しく醸成することである。
◆とくにマスコミが「無罪の推定」を受けている一般市民を「容疑者」あるいは「刑事被告人」と呼んで報道していることも、「近代刑法の精神」に反している。
日本の司法が「裁判員制度」がいよいよ実施され、一般市民が重大事件の刑事裁判に参加する時代になっているのに、マスコミ自体が、「近代刑法の精神」を疎かにしている状況下では、それこそ、「冤罪」が多発する危険がある。この点から、「近代刑法の精神」や「推定無罪」について改めて考えさせてくれた鳩山法相の発言を高く評価し支持したい。
ちなみに韓国では、「裁判員制度」よりもっと進歩した「陪審員制度」を採用していることを見逃してはならない。

にほんブログ村 政治ブログへ
ブログランキング
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする