漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「聿イツ」<ふで>と「筆ヒツ」「律リツ」「昼チュウ」「画ガ」「津シン」「書ショ」

2023年08月29日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 イツ・イチ  聿部         

解字 甲骨文・金文は、先が三本にわかれた筆を手にもつ形。篆文から手が筆の軸にかさなり、下部も変化した。現在の字は篆文の形を引き継いでいる。筆の原字。
意味 ふで(聿)。のべる。

イメージ 
 「ふで」
(聿・筆・律・葎・昼・画・劃) 
 「形声字」(津・書)
 「その他」(肄)
音の変化  イ:肄  イツ:聿  カク:画・劃  ショ:書  シン:津  チュウ:昼  ヒツ:筆  リツ:律・葎  

ふで
 ヒツ・ふで  竹部
解字 「竹(たけ)+聿(ふで)」の会意形声。竹の柄の筆。
意味 (1)ふで(筆)。「毛筆モウヒツ」「土筆つくし」(土から出てくる筆のような、つくし) (2)かく。かきしるす。「筆記ヒッキ」「代筆ダイヒツ」「筆耕ヒッコウ」(筆で田を耕すように生計をたてる。①写字をする人。②文筆により生計をたてる人)
 リツ・リチ・のり  彳部
解字 「彳(人の行くべき道)+聿(ふで)」の会意。書き表わされた人の行くべき正しい道。
意味 (1)のり(律)・おきて。さだめ。「法律ホウリツ」「規律キリツ」「律義リチギ」 (2)音楽の調子。音階。「旋律センリツ」「音律オンリツ」 (3)漢詩の体のひとつ。「律詩リッシ」(第3・4句、第5・6句がそれぞれ対句をなす漢詩。五言と七言がある)
 リツ・むぐら  艸部
解字 「艸(草)+律(律する。おきてにより束縛される)」の会意形声。トゲのある草であることから、トゲで人の行動を律する(自由にさせない)草の意。
意味 (1)むぐら(葎)。ヤエムグラやカナムグラなどのつる草の総称。トゲがあり生い茂って人の動きをさえぎる。荒地や湿地などに雑草として密生し藪をつくる。 (2)人が訪れず荒れ果てたさま。「葎生むぐらふ」(ムグラが生い茂ること)「八重葎やえむぐら」(むぐらが繁茂しているさま。荒廃した家のさま)
[晝] チュウ・ひる  日部         

解字 篆文は「聿(ふで)+日(太陽)+凵(区切る)」の会意。日の出ている時間を区切って書く形で、ひるまを表わした。旧字体は日の下の一線を残した形。新字体は聿を尺に置き換えた。尺は長さの単位でひるまの長さを示す。
意味 (1)ひる(昼)。ひるま。「昼間ひるま」「昼夜チュウヤ」 (2)まひる。正午ごろ。「昼食チュウショク」「白昼ハクチュウ
[畫] ガ・カク・え・えがく  田部      

解字 篆文は「聿(ふで)+田(土地)+凵(区画する)」の会意。耕地の区切りを図面上に描く意。また、区切りをつけようと計画(はかる)こと。のち、絵画の意味ができた。旧字体は区画が田の下に一線となり、新字体は聿(ふで)の大半を略して一として田に続け、下に凵をつけた形。
意味 (1)かぎる。くぎる。さかい。「区画クカク」 (2)はかる(画る)。「画策カクサク」「計画ケイカク」 (3)え(画)。えがく(画く)。「絵画カイガ」 (4)漢字を構成する点や線。「画数カクスウ
 カク  刂部
解字 「刂(刀)+(くぎる)」の会意形声。刀でくぎること。現在は画が書きかえ字となる。
意味 かくする(劃する)。くぎる。区分けする。かぎる。「劃一カクイツ」(全体を一つに区切る、一様にする。=画一)「劃定カクテイ」(区切りをつけて定める。=画定)

形声字
 シン・つ  氵部
解字 「氵(かわ)+聿(シン)」の形声。シンは進シン(すすむ)に通じ、川を舟で進んでついた向こう岸、船の渡し場をいう。また、滲・浸シン(しみ出る・しみる)に通じ、身体からしみ出てくる汗・なみだなどをいう。
意味 (1)つ(津)。みなと。渡し場。「津駅シンエキ」(船着き場の宿場)「津涯シンガイ」(舟を着ける岸)「津波つなみ」(津を襲う大波)「大津おおつ」(地名) (2)しる(汁)。あせ・なみだ・つばき、など。「津液シンエキ」(つばき)「津津シンシン」(つばがわくように次々とわき出る)「興味津々キョウミシンシン
 ショ・かく  日部          

解字 古代文字は「聿(ふで)+者(シャ⇒ショ)」の形声。ショは諸ショ(もろもろ)に通じ、もろもろのことを筆で書くこと。現在の字は者の下の日だけが残った形。
意味 (1)かく(書く)。かきしるす。「書写ショシャ」「清書セイショ」 (2)しょ(書)。書いたもの。てがみ。ほん。「書簡ショカン」「書物ショモツ

その他
 イ・ならう  聿部

解字 篆文第一字は「聿(先が三本にわかれた筆の変形)+㣇(長毛の獣の形)」、第二字は㣇が「ヒ矢」に変化した肄となり、この字が現在に続いている。[説文解字]は第一字について「習(なら)う也。聿に従い㣇の聲(声)」とし、㣇は発音を表す字としている。意味は、①ならう。筆をうごかし習う。②ひこばえ(切り株から生じる枝)があるが、②の意味は解字不能であり、長毛の獣の形とされる㣇イが関与しているのかもしれない。正体不明の字ですが、聿を含むので、ここに配置しました。
意味 (1)ならう(肄う)。学習する。練習する。「肄業イギョウ」(わざをならう)「肄習イシュウ」(肄も習も、ならう意)「肄武イブ」(武術をならう) (2)ひこばえ。切り株から生えた短い枝。「其(その)肄(ひこばえ)の條(えだ)を伐(き)る」(「詩經·周南」)
覚え方 ヒ矢(ひや)、ふで(聿)もち、肄(なら)う。
<紫色は常用漢字>

  バックナンバーの検索方法
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