漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「孰ジュク」<煮炊きする>と「熟ジュク」「塾ジュク」 

2024年05月03日 | 漢字の音符
 ジュク・たれ・いずれ  子部

解字 甲骨文は、「先祖を祀る建物+人が手をだす形」。先祖を祀る建物は篆文で亯キョウになる字。[漢字字形史字典]は、「殷代には祭祀名として使用されており、建物で行われる儀礼の様子を示したものであろう」とする。金文は女を追加した形などが用いられたが祖先神に飲食物をたてまつって、祖先神をもてなす意を表わす。篆文は「亯キョウ(先祖を祀る建物)+羊(ひつじ)+丮ケキ(人が両手を出す形)」の会意となり、人が羊の肉の料理で祖先神をもてなす形。現代字は、亯⇒享に、丮⇒丸に変化し、羊が略されたが、羊の肉を煮炊きすることから、煮る意がある。しかし、本来の意味でなく、「たれ・だれか」「いずれ・いずれか」の意に仮借カシャ(当て字)された。
意味 (1)たれ(孰)。たれか(孰か)。 (2)いずれ(孰れ)。いずれか(孰れか)。「孰方どちら」「孰方どっち」「孰賢」(孰(いずれ)か賢(まさ)れる) 「師與商也孰賢」(師と(與)商と孰(いず)れ也(や)賢(まさ)れる」(論語)。 (3)にる(煮る)。にえる。  

イメージ 
 「仮借カシャ(当て字)」
(孰)
 「にる」(熟・塾)
音の変化  ジュク:孰・熟・塾

にる
 ジュク・うれる  灬部
解字 「灬(火)+孰(にる)」の会意形声。火でにること。孰が「たれ・いずれ」の意味に使われるようになったので、灬を付けて「にる」意とした。転じて、果実や穀物がうれる・みのる、また「じゅうぶんに」の意ともなる。
意味  (1)にる(煮る)。にえる。「半熟ハンジュク」「熟食ジュクショク」(よく煮た食べ物。また、それを食べること) (2)うれる(熟れる)。みのる。そだつ。「成熟セイジュク」「早熟ソウジュク」 (3)じゅうぶんに。よくよく。「熟練ジュクレン」「熟読ジュクドク
 ジュク  土部
解字 「土(つち)+孰(=熟。みのる・そだつ)」の会意形声。土がこいの部屋で子供を教育(みのる・そだつ)すること。
意味 (1)まなびや。学舎。昔、門の両側の建物で家中の子弟を教えたのに基づく。「塾舎ジュクシャ」「塾生ジュクセイ」「学習塾ガクシュウジュク」「義塾ギジュク」(義捐ギエン金で公益のために設けた塾) (2)もんべや(門部屋)。長屋門の両側にある土壁の建物。門番や使用人が住んだ。「門塾モンジュク」(門脇の部屋)
<紫色は常用漢字>

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