漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「兓シン」<カミサシ>と「朁サン・セン」「蚕サン」 「潜セン」「簪シン」

2021年09月18日 | 漢字の音符
 シン・サン  儿 部          

解字 篆文は兂シン(髪に留める用具のカミサシ・髪挿し)二本をならべた形で、カミサシの先がするどい、髪のすきまに入りこむ意。簪シン(かんざし)の元になった字。 
意味 するどい。尖るさま。細くするどい。せまいすきまにわりこむ。たすける。


 サン・セン  曰部 

解字 篆文は「曰(いう)+兓シン・サン(カミサシ)」の会意形声。曰(いう)に先がするどいカミサシを加えて、言う行為をゆがめること。つまり、そしる・中傷する意となる。譖シンの原字。現代字は曰⇒日に変化。また、兓シンは横長の字であり、右辺(旁つくり)に配置することがむずかしいため、朁サン・センが兓シン・サン(はいりこむ意)の代わりに使われる。
意味 (1)そしる。譖シンの原字。 (2)兓シン・サン(はいりこむ)の代替え字。 (3)かつて(=曽)。

イメージ
 「そしる」(譖)
 「はいりこむ」(潜・蚕・僭・簪)
音の変化  サン:朁・蚕  シン:譖・簪  セン:潜・僭

そしる
 シン・そしる  言部
解字 「言(ことば)+朁(そしる)」の会意形声。朁は、そしるの原字。言をつけて元の意味を表す。
意味 そしる(譖る)。そしり。中傷する。「譖訴シンソ」(そしり訴える)「譖言シンゲン」(そしりの言葉)

はいりこむ
[潛] セン・ひそむ・もぐる・くぐる  氵部
解字 旧字は潛で「氵(水)+朁(=兓。はいりこむ)」の会意形声。水にもぐる意。新字体は旧字の兓 ⇒ 夫夫に変化した替になった。右辺の替は、替タイ(かえる)と字形が同じであるが別字である。
意味 (1)もぐる(潜る)。水にもぐる。くぐる(潜る)。「潜水センスイ」「潜航センコウ」「潜り戸くぐりど」 (2)ひそむ(潜む)。かくれる。ひそかに。「潜入センニュウ」「潜在センザイ
[蠶] サン・かいこ  虫部
解字 「虫+虫(たくさんのむし)+朁(=兓。はいりこむ)」の会意形声。桑の葉の間に入りこんでいるたくさんの虫の意で蚕(かいこ)を表す。のち、蠶⇒蚕に簡略化された。蚕は、天からもたらされた貴重な虫の意。
意味 かいこ(蚕)。桑の葉を食べて脱皮をかさね繭(まゆ)をつくる虫。繭から生糸ができる。「養蚕ヨウサン」「蚕糸サンシ」「蚕繭サンケン」(蚕の作った繭)「蚕食サンショク」(蚕が桑を食べるように少しづつ侵してゆくこと)
 セン  イ部
解字 「イ(ひと)+朁(=兓。はいりこむ)」の会意形声。人が他人の領分に入りこむこと。
意味 (1)おかす。こえる。「僭越センエツ」(身分を越えて出すぎる)「僭称センショウ」(身分を越えた称号を名乗る)「僭主センシュ」(武力で王位を奪い帝王の称号を僭称する者)「僭賞センショウ」(度を超えた褒美)「僭賞濫刑センショウランケイ」(度を超えた褒美と刑の濫発。適正を欠いた賞罰) (2)おごる。
 シン・サン・かんざし  竹部
解字 「竹(たけ)+朁(=兓。はいりこむ)」の会意形声。髪に入りこむ竹製のカミサシ。竹に限らずさまざまな材料のカミサシをいう。当初は髪にさして冠を固定する道具であったが、のち、これに飾りがつき、婦人の髪にさす装飾品の「かんざし」となった。
意味 (1)かんざし(簪)。婦人の髪にさす装飾品。「花簪はなかんざし」「玉簪たまかんざし」「簪占かんざしうら」(簪による占い) (2)冠の固定具。「簪笏シンコツ」(簪としゃく(笏)。貴族の礼装)
<紫色は常用漢字>

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