人間には食欲・睡眠欲・性欲・物欲・名誉欲等があるようであるが、最後まで残るのは食欲らしい。
その食欲を満たす食事の基本マナーには、1.姿勢を正しキチンと座わる。2.食卓に肘を付かない。3.食べるときに音を立てない(うどん・蕎麦は例外)。4.口の中に食べ物を入れたまま喋らない。5.口の中の食べ物を飲み物で流し込まない――等々がある。またそれとは別に健康面から、『よく噛むこと! ぐい飲みはいけない』との言葉もある。
私は舌の手術を受けてからは、口に入れた食物はドロドロになるまで噛まないと飲み込み難いため、よく噛まざるを得なくなった。以来、私の食事からは“ぐい飲み”という言葉は消え、胃には甚だ好ましい状態になった。
だが私が完全に“ぐい飲み”と縁が切れたわけではない。晩酌ではタンブラーで焼酎を飲んでいるが、外での食事や何かの会合の席では、医者に勧められた焼酎ではなく日本酒を飲む。偶になら日本酒もいいだろうとの考えからである。
そしてその際は、“諸般の事情で”小さなお猪口ではなく“ぐい飲み”を使用することになる。