全国で初めて年内に設立される見通しになった広域地方公共団体「関西広域連合」構想をめぐり、参加予定の滋賀県が、中部圏にも「広域連合を作るなら入りたい」と秋波を送っている。もともと地理的にも経済的にも中部圏とかかわりが深いうえ、「関西では大阪府などにのみ込まれるのではないか」という警戒感が根強いからだ。中部では広域連合設立の具体的な動きはないものの、経済的な地盤沈下が目立つ関西よりも、トヨタ自動車を中心に立ち直りの兆しをみせる中部に目が向いているようだ。
■甲賀忍者流で両にらみ…岐阜・三重・福井と「日本まんなか共和国」も結成
「滋賀県が僻地(へきち)として扱われるのではないか」。滋賀県議会は今月13日の本会議で参加に必要な規約案を賛成多数で可決したが、審議の際、埋没を懸念する声が噴出した。設立に伴う負担金の額の大きさでトップ3となる大阪、兵庫、京都各府県を警戒する一方、地理的に岐阜、三重両県と接しているだけに規約案に中部との連携を求める付帯決議を添え、関西のみに傾斜することにくぎを刺した。
県議会がとりあえず関西の一員として足並みをそろえることにゴーサインを出したのは、近畿で唯一「空白県」となっているドクターヘリの共同運航にメリットがあると判断したためだ。
ドクターヘリは医師や看護師が乗って災害や事故の現場に急行、負傷者をすぐに搬送できるが、このドクターヘリへの評価も、大阪や京都への通勤圏となる大津市など湖南地域と、長浜市など湖北地域の間では温度差がある。湖北地域では、今後、大阪府吹田市から飛行するヘリが、高い救命率が保てる一定時間で急行できない問題もあり、県議会では地元県議から「中部との共同運航のほうが利便性が高い」との異論が続出した。
もともと滋賀県は、経済や自治体間の連携では中部との結びつきが強い。愛知県が事務局を務める「中部圏知事会」にも近畿2府4県では唯一参加。岐阜、三重、福井の本州の中央付近の他の3県とともに新しい地域づくりを目指す「日本まんなか共和国」を結成して観光振興などで協力し合ってきた。
こうした中部シフトは、関西経済の地盤沈下も影響している。平成20年秋のリーマンショック以降、経済浮上の糸口を見いだせない関西を尻目に、トヨタ自動車が黒字化を達成した中部は回復傾向が目立っている。9月に発表された基準地価でも、名古屋圏で上昇地点が多く、大阪圏は完全に取り残されることになった。
現在のところ、中部に広域連合をつくる具体的な動きは浮上していないが、嘉田由紀子知事は「広域連合は重複して入れないことはない。中部にできれば、当然参加を検討する」と述べ、関西広域連合発足後も中部に対する目配せを続ける意向だ。
◇
【用語解説】広域連合
地方自治法に基づき、各自治体にまたがる防災や医療などの分野に共同で取り組む組織。都道府県を廃止し、新たな法律を必要とする「道州制」とは異なる。関西広域連合は任期2年の「広域連合長」や年2回開く「広域連合議会」を置く。都道府県同士の広域連合設立に向けた動きは、関東や九州でも出ている。
(10月27日付け産経新聞・電子版)
http://sankei.jp.msn.com/region/kinki/shiga/101027/shg1010271148005-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/region/kinki/shiga/101027/shg1010271148005-n2.htm
■甲賀忍者流で両にらみ…岐阜・三重・福井と「日本まんなか共和国」も結成
「滋賀県が僻地(へきち)として扱われるのではないか」。滋賀県議会は今月13日の本会議で参加に必要な規約案を賛成多数で可決したが、審議の際、埋没を懸念する声が噴出した。設立に伴う負担金の額の大きさでトップ3となる大阪、兵庫、京都各府県を警戒する一方、地理的に岐阜、三重両県と接しているだけに規約案に中部との連携を求める付帯決議を添え、関西のみに傾斜することにくぎを刺した。
県議会がとりあえず関西の一員として足並みをそろえることにゴーサインを出したのは、近畿で唯一「空白県」となっているドクターヘリの共同運航にメリットがあると判断したためだ。
ドクターヘリは医師や看護師が乗って災害や事故の現場に急行、負傷者をすぐに搬送できるが、このドクターヘリへの評価も、大阪や京都への通勤圏となる大津市など湖南地域と、長浜市など湖北地域の間では温度差がある。湖北地域では、今後、大阪府吹田市から飛行するヘリが、高い救命率が保てる一定時間で急行できない問題もあり、県議会では地元県議から「中部との共同運航のほうが利便性が高い」との異論が続出した。
もともと滋賀県は、経済や自治体間の連携では中部との結びつきが強い。愛知県が事務局を務める「中部圏知事会」にも近畿2府4県では唯一参加。岐阜、三重、福井の本州の中央付近の他の3県とともに新しい地域づくりを目指す「日本まんなか共和国」を結成して観光振興などで協力し合ってきた。
こうした中部シフトは、関西経済の地盤沈下も影響している。平成20年秋のリーマンショック以降、経済浮上の糸口を見いだせない関西を尻目に、トヨタ自動車が黒字化を達成した中部は回復傾向が目立っている。9月に発表された基準地価でも、名古屋圏で上昇地点が多く、大阪圏は完全に取り残されることになった。
現在のところ、中部に広域連合をつくる具体的な動きは浮上していないが、嘉田由紀子知事は「広域連合は重複して入れないことはない。中部にできれば、当然参加を検討する」と述べ、関西広域連合発足後も中部に対する目配せを続ける意向だ。
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【用語解説】広域連合
地方自治法に基づき、各自治体にまたがる防災や医療などの分野に共同で取り組む組織。都道府県を廃止し、新たな法律を必要とする「道州制」とは異なる。関西広域連合は任期2年の「広域連合長」や年2回開く「広域連合議会」を置く。都道府県同士の広域連合設立に向けた動きは、関東や九州でも出ている。
(10月27日付け産経新聞・電子版)
http://sankei.jp.msn.com/region/kinki/shiga/101027/shg1010271148005-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/region/kinki/shiga/101027/shg1010271148005-n2.htm