近江八幡市と安土町にまたがる「西の湖」と、琵琶湖につながる「長命寺川」が、世界の湿地の保全を目指すラムサール条約湿地として正式に登録された。既に登録済みの琵琶湖の区域を拡大。韓国で開催中の第10回締約国会議で10月30日、登録認定証が授与された。専門家は「人の活動と自然の調和が保たれてきた貴重な場所で、登録の意義は大きい」と評価する。
西の湖は220ヘクタールあり、琵琶湖につながる29の内湖の総面積の半分を占める。約3キロの長命寺川を通して琵琶湖に注ぐ。琵琶湖は1993年に条約湿地として登録されており、今回、その登録区域6万5602ヘクタールに新たに382ヘクタールが加わった。
拡大分は0・5%にすぎないが、広大なヨシ群落と多彩な動植物の生息地として価値が高いと研究者は見る。ヨシ群落は109ヘクタールあり、近畿地方で最大級。貴重種とされる植物26種が育ち、約120種の鳥類が生息する。
県琵琶湖環境科学研究センターの西野麻知子・総合解析部門長は「ヨシ群落の6割が集中する内湖が登録区域に含まれていなかったことが不自然」と、追加登録を評価する。
西野さんはヨシを生活に利用する人間の活動で、西の湖周辺の生態系が200年以上維持されてきたことを指摘。「土地利用が長い間変わらないことで人為的な自然がつくられ、生き物との調和が保たれてきた」という。
外来魚の繁殖に脅かされている琵琶湖固有の魚の種類が多いことも西の湖の特徴だ。開発を免れたヨシ群落や小さな水路、複雑な地形が残されているからとみられる。
西野さんは「近年はヨシの利用が少なくなり、ヨシ産業が衰退している。登録拡大で注目が集まり、持続的な土地の利用につながってほしい」と期待している。
(林勝)
(10月31日付け中日新聞・電子版:同日付け京都・電子版なども報道)
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20081031/CK2008103102000001.html
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008103000203&genre=H1&area=S00