東日本大震災後、公衆電話の役割が見直されている。震災時、一般の電話や携帯電話は通信規制されたが、公衆電話は優先的につながったため、被災者らが列をつくった。NTT西日本は設置場所をホームページに掲載予定で、京都府も避難所に災害時専用の公衆電話を備える検討に入った。
総務省によると、震災時、東京都や被災地では通話が殺到し、一般の固定電話で最大90%、携帯で同95%の通信規制が行われた。一方、公衆電話は災害時優先電話として比較的スムーズにつながった。
NTT西は災害時に備え、公衆電話の場所をホームページに掲載することを決めた。6月にも公開し、京都、滋賀では屋外の約3800カ所を掲載する。
府と京都市は、帰宅困難者の待機場所となる寺院やホテルに、無料で災害時のみ利用できる「特設公衆電話」の設置を検討する。府防災・原子力安全課は「被災者は家族の安否確認を第一に考える。駅の混乱防止のためにも、通信確保は重要だ」とする。
NTT東日本は昨秋から東京23区のコンビニ店に特設公衆電話の設置を始めた。秋までに約千店舗に整備する方針だ。
一方、携帯電話の普及で、公衆電話の削減に歯止めがかからない。2011年3月末の府内の設置数は5142台、滋賀県内は2290台で、10年前の半数以下となった。NTT西は本年度も管内の約1割を廃止する方針で、同社広報室は「維持は大幅な赤字。災害対策は自治体と連携し、特設公衆電話で代替する」と話す。
公衆電話を管理する自営業者らでつくる「日本公衆電話会京都支部」の宮田勲支部長(67)=伏見区=は「撤去を防ぐため、家の電話を使わずに公衆電話でかける店主もいる」と苦労を話し、「街中から消えた後に気付いても遅い。台数維持のため行政の支援が必要だ」としている。
(6月3日付け京都新聞・電子版)