Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

水産について考える会ー鉄イオンにかけた人生ーが開催されました

2010-10-23 | 水圏環境リテラシープログラム
山口県宇部市在住の「鉄イオン供給による環境改善」に取り組んでいる杉本幹生さんの講演が,水産について考える会で会員30名を対象に楽水会館で開催された。自己紹介の後,30年の取組として鉄イオンによる環境浄化の実践例を詳しく説明していただいた。

講演の中でもとりわけ印象的だったのは,「自分の利益のために取り組んでいるのではない,海洋がこの技術によって改善され多くの皆さんの利益につながることだ本望だ」とおっしゃったことだ。資本主義の原点である現在と自己の利益からは生まれない考え方であり,まさしく自然と人間が共存するための究極の考え方である。

鉄イオンは自然界にある物質である。このイオンのおかげで,多くの生物が生息できる。例えば,脊椎動物の赤血球,植物のクロロフィルのように動植物にとってなくてはならない物質だ。

その物質が様々な原因によって水圏環境で不足がちになっている。鉄イオンは多くの生物にとってなくてはならない物質だ。鉄イオンがなくなれば生息できなくなる生物が出てきてしまう。

海藻がその典型的な例であろう。場所によっても異なる。磯焼けの原因として食害が挙げられているが,おそらく2次的なものであり,食害以上に海藻絶対的な量が減っているのではないか。しかし,実証的な実験はこれからだ。

もちろん,鉄イオンが不足して困っている生物は海藻だけではない。これからの展開が楽しみな分野である。






日仏海洋教育情報交換会が開催されました。

2010-10-18 | 水圏環境リテラシープログラム
地中海大学の代表団をお招きして「日仏海洋教育情報交換会」が開催された。
まじまる前に,学長室において本シンポジウムでは両者がお互いに協調しながら,海洋教育を推進することが再確認された。

10年ほど前からICM(総合的な沿岸域管理)をマルセイユ市が実施しているが,地域住民の科学的認識を高めることがとても重要であるという。
マルセイユ市では定期的にステークホルダーに対して講習会を実施しているが,実施するたびに成果が出ている。ICMにとって教育は大切なものである。とりわけ,ボトムアップから発せられる管理になるように円卓会議を幾度となく開催しているが,この方式は住民の自主性を高める上でうまくいっているという。

ティボボタ博士は地中海大学の海洋研究センターに所属しているが,科学的な認識を高めることがとても必要であり,そのために努力している。これまでは,総合科学もが多かったが,専門性の高いカリキュラムを作っている。科学をコミュニケーションツールとして取り入れようととしている。

一方,日本からは我が国の海洋教育の特徴,本学の新しい取り組みである水圏環境リテラシー教育推進プログラムを紹介した。前半は,サイエンティフィックな取り組みの具体例を説明し,後半に海苔養殖と開発のコンフリクトについて説明したが,サイエンティフィックな教育内容よりも,海苔養殖など伝統的な産業や文化に興味深く聞き入っていた。

また,会場の海洋科学を専攻するPHDコースの学生らは,海洋管理に於ける科学者の役割に関するトークで特に興味を持ち聞き入っていた.

今回は,アウトリーチとしての海洋教育のあり方を情報交換したが,我々の取り組みの方が,学習者中心のプログラムに近いものであるようだ。

しかし,すでに総合的な沿岸域管理がマルセイユ市の部局においてスタートしている点は先方が先行している。

また,その時に大切なのは大学の役割であると語った。市町村がICMを推進する上で,大学との密接な関わりが重要のようだ。

第4回閉伊川大学校わくわく自然塾が開催されます:10月30日和井内

2010-10-15 | 水圏環境教育センター
第4回閉伊川大学校わくわく自然塾が開催される運びとなった。10月30日,宮古市和井内の閉伊川漁業協同組合養魚場で開催される。今回は,閉伊川漁業協同組合のご好意によりはじめて開催される学習会である。
施設見学,ヤマメ,サクラマスの整体を学んだあと,お昼にはサクラマス(ヤマメ)のちゃんちゃん焼き!。海洋の総合的な理解のためには,食育は欠かせない。

対象は,大人でも参加可能。お子様連れでご参加いただきたい。 

http://gallery.me.com/hypomesus#100016/0001yE&bgcolor=black
「なあどか,すっぺす! 子供たちの明日のために 閉伊川大学校」

里海探偵団が行く!の書評が公開されました

2010-10-14 | 水圏環境リテラシープログラム
9月下旬に発刊となった【里海探偵団が行く!】の書評がブログ「食農教育交換日誌」に公開されています。

http://blog.syokunou.net/?p=1309

この中で,筆者は海山川の体験活動ではどうしても私たち大人は教えたくなる。
この本には,楽しいことに,気になることに,わくわくすることが詰まっている。
大切だと思うことは、子どもが自分の中で気づいていくことが大事なのである。

とこれまでの実践を交えて感想を述べていただいた。


COP10が始まりました

2010-10-11 | 水圏環境教育センター
いよいよ,名古屋でCOP10がはじまった。COPとはConference of the Parties の略で,国際条約を結んだ国が集まる会議のことを指す。国際条約の一つ「生物多様性条約」は,10回目の締結国会議を名古屋で行うので,COP10名古屋と呼んでいる。

主催は生物多様性条約事務局(カナダ・モントリオール)で,日本は議長国である。

生物多様性条約は,国連環境開発会議(地球サミット)に先立つ1992年5月22日に採択され,リオデジャネイロで開催された地球サミットで署名開放され,1993年12月29日に発効し,世界193カ国,日本は1993年5月に締結している。

この条約の目的は3つあり,
1地球上の多様な生物をその生息環境とともに保全すること
2生物資源を持続可能であるように利用すること
3遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ衡平に配分すること
となっている。

これを閉伊川に当てはめると,水質の悪化,河口域の環境の改変による生物相の変化など,問題がないわけではない。しかし,ミクロで見た場合,これといった話題にのぼるほど大きな問題はない様に見える。問題になるのは,乱開発が進む都市部や途上国になるであろう。

しかし,地球規模の環境の変化はマクロ的な発想から見ないと解決策が生み出されない。例えば,海ゴミの問題や温暖化,海流の変化による生物相の変化である。こうした問題は時間をかけ,そして多くの人々が取り組まないと解決できない。こうした問題に対して,議長国としての対応が問われる。環境と人間が共存して生きてるという里海里山の概念を持つ日本が中心となり,世界にその考えをアピールしたいものである。

全国ゴミサミットが開催されます:11月2日,3日衆議院第2議員会館

2010-10-10 | 水圏環境教育センター
このブログで以前紹介したが「太平洋ガーベッジパッチ」,つまり「太平洋ゴミベルト」というとピンとくるのであろうか,海ゴミが海流の影響で一箇所に集中している海域があるという。推定では350万トンとされている。そのほとんどが,厄介なプラスチックである。

その海ゴミ問題に関するサミットが東京で開催されるとのしらせを受けた。

私自身,映像を見るまではそれほどまで深刻に考えていなかった。それというのも,閉伊川周辺ではあまりゴミの堆積が問題とならないからである。ワカサギ仔魚調査でも,植物系のゴミがほとんどであり,細かいプラスチックは川では観察されていなかった。

太平洋ゴミベルトでは,プラスチックが細かく粉砕され,プランクトンの餌となったり,魚類の餌となっているという。また,プラスチックを整形するときに使う魚卵状の球形のプラスチック(レジンペレットという)が大量に海洋に流出し,それはDDEやDDD(DDTが変化した物質,DDTは自然界に存在しない物)を多量に吸着しているという。それらをもし,生物が捕食すると汚染された物質を効率よく体内に吸収することになる。

本日,山口川の調査をしたが,コンビニ袋に包まれたゴミがポイ捨てされている。同行した山口ショッピングセンターの社長さんは「いつも捨てられるんですよ。ここはゴミ捨て場だと勘違いされている。がっかりです」ゴミの捨てられている状況を知り,啓発活動の重要性を改めて痛感した。


ガラパゴス携帯に思うー権利の主張と利益との関係

2010-10-08 | 水圏環境教育センター
ガラパゴス諸島には、世界でも珍しい固有の生物が暮らしている。しかし、その希少生物たちは、外来種の進入に弱い生き物たちだ。しかも、他の環境には適応出来ないであろう。

こうした状況は、日本の携帯電話の現状によく似ていると言われる。日本の携帯電話は世界に類を見ないほど高機能であるが、汎用性が低く世界の市場では太刀打ち出来ないという。ガラパゴス諸島の希少な生き物に例え、皮肉を込めて「ガラパゴス携帯」というそうである。

こうした状況は、携帯電話に限らない。自社の製品を優先的に購入させようと誘導するような製品群が多く見受けられる。しかし、そうしたものは消費者が離れ、かえって利益を減少させる事にもつながる。また、日本に限った事ではないし、家電製品だけでもない。既得権の主張などにもよく見受けられる事象だ。漁業権がその一つかもしれない。すべての漁業者に当てはまるこことではないことを理っておくが,海岸に訪れる一般客に対して、「ここは私たちの生活の場所である」といったよそ者を排除する態度や意思を表明する。これでは、消費者が漁業の理解が阻まれ、結果的に魚を食べなくなり、魚価は上がらないことにつながるなる。最終的に、利益を上げることが出来ず、補助金に頼ることになる。(何度もいうがこれがすべての漁協や漁業者に当てはまることではない事を断っておく。)

なぜ、このような状況なるのであろうか?それは、目先の利益や権利を追及し過ぎると結果であると考える。確かに、これまで培ってきた発明や権利を守るためには、とりあえず目先の自己の利益を優先させる事が堅実な方法であろう。将来の事や他人の事を考えるのはもっての他である。

しかし、将来や他人の事を考えるのは、本当に利益に反する事であろうか?を考える必要がある。権利を主張する対象物は、利用者が価値を決めるケースが少なくない。もし、利用者の価値観に変化が生じた場合、これまで主張した権利が価値の低いものか、あるいは無い物に変化してしまうという可能性が数限りなく存在する。

こうした状況を打破するためには、どうすればいいのであろうか?権利を主張する側と利用するがわとの間のギャップを取り払うことが一つの解決策であろう。そこに、この閉塞感を打破し新しい価値を生み出す可能性が秘められれている。

伝統的なエコ知識

2010-10-07 | 水圏環境リテラシープログラム
 水と私たちは切っても切れない関係にある。水は私たちになくてはならないものであり,私たちは水に対して必然的に影響を与えてきた。水の重要性は未だに変化はないが,逆に私たちの水への影響は度が過ぎる程耐えかね無い状態だ。私たちは,まさに湯水のごとく水を使い,使ったあと更に水への負荷を与えている。水を使う限り,水への負荷は当然といえば当然である。

 しかし,そのマイナスの事実にあまり目を向けてこなかったのが,これまでの資本主義社会のシステムであった。水へのマイナスの影響を考えることは経済発展にマイナスの影響を与えることになる。

 ところが,最近になって,水環境の悪化は著しい。今までは,無視できるレベルであったが,今はそうはいっていられない状況だ。経済発展と共に,私たちは明らかに水の環境に目を背けてきたのである(もちろん科学技術によって環境への負荷はある程度減少したが)。自然へ目をそむけることは,自然から見放されることになる。ようやくそのことに気がついてきた。

 本日,待ちに待った「近代日本の地域づくり(農文協)」が届いた。その中に,琵琶湖畔の人々の生活が掲載されている。
 「川の水を汚さないための工夫がさまざまにこらされていました。集落を流れる水路はわざと蛇行させて窪地をつくり,汚物を沈殿させて定期的にくみ上げて肥料にしました。水路で下着やオムツなどを洗うことは強くいましめられ,オムツ洗いはタライで行ない,洗い水は便所に入れるという習慣がありました。(中略)食器などを洗う川の洗い場では鯉を飼ってご飯粒などを餌に食べさせるなど,家庭生活から出る排水・廃棄物はほとんどすべてが生産にまわされ,そのような暮らしの中で,結果として水域の汚染(富栄養化)が防がれていました。」

 このように,古くから川を汚さないように注意を払い生活を営むことで,湖の環境を守り日常生活に支障をきたすことのないように自然環境を保全し,水の環境と人間とが共生をはかっていたのである。このような知識のことを「伝統的なエコ知識」と呼ぶことにする。

 おそらく,このような伝統的なエコ知識は日本各地で古くから存在しているものと推察される。閉伊川上流で生まれ育った私の祖父は,食事後はご飯茶碗にお茶を注ぎ,汚れを取り除いてから食器を洗っていた。今はそのようなことをする人は少なくなったが,まさに伝統的なエコ知識だ。

 もちろん,現代社会においては科学的な知識や認識は必要であるが,こうした伝統的なエコ知識を全国の各地域で見い出し,伝承し,子供たちの未来へとバトンタッチしたいものである。

日仏海洋教育情報交換会のご案内です

2010-10-05 | 水圏環境教育センター
10月18日に開催される日仏海洋教育情報交換会のポスターが完成した。

発表者は私と大学院生,学部4年生が水圏環境教育,水圏環境リテラシープログラム,ESD活動の実際を発表し,フランス側からは地中海大学のセカルディー先生とチィボボタ先生がフランスでの大学を拠点とした海洋教育について発表する。フランスからはマルセイユの地中海大学を始めとした訪問団20名が来学する。

午前中は,水圏環境教育実践をやらせていただいている港区立港南中学校,港区立港南こども中高生プラザ(プラリバ)を訪問する予定だ。

夕方は,フランス大使館でのレセプションに招待されることになっている。

海外研究者との交流を通じていつも考えるのは,日本の海洋教育の特殊性である。日本の海洋教育は水産が中心である。他の国はありえない47校もの水産高校の存在。水産系大学の数の多さ。しかし,その独自性がうまく発揮出来ているかどうか疑問が残る。もっと日本の独自性を明確にしアピールしていきたいものである。