Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

相模湖ワカサギ調査が開催されました

2010-12-30 | 水圏環境リテラシープログラム
キッズアース様の体験型科学教育プログラムの一環として,ワカサギ調査が実施された。対象は1年生から6年生までの小学生。横浜市の子供たちが中心であるが,遠く岩手からも参加があった。
場所は,横浜市から1時間ほどの相模湖。ここでは,深さ4-5mの湖上に係留したドーム船内から釣り糸を垂らしてワカサギを釣る。

移動中の貸切バス内では,ワカサギ博士の自己紹介のあと,チカとワカサギの分類のアクティビティを行った。ワカサギはもともと海の魚である。ある海域ではチカしかいないと思われていたが,ある高校生が「これ,何となく違うんじゃないの?」という疑問からワカサギの発見につながったことを,ラーニングサイクル理論に基づき体験的に学習した。ワカサギとチカの分類を通して,科学的な認識を高める訓練を行ったのである。
ちょうど,さかなクンのクニマス発見の記者会見の次の日であり,クニマス発見の例と,チカしかいないと言われていた海でワカサギを発見したストーリーの話がマッチングしたようである。

また,バス内では耳石のアクティビティを行った。耳石の役割を説明したあと,耳石の拡大写真を配布して,実際に年齢査定を行う作業を体験的に行なった。

総勢約30名の子供たちは相模湖に着くやいなや,早速ドーム船に乗り込んだ。釣りは初めてという子供たちがほとんどであり,ワカサギ釣りは全くのはじめてである。手巻式の小さな竿に針が10本ほど着いた仕掛けを結びつけるのは大変な苦労であったようだ。針が,靴下や洋服にからまり,返しが付いているのでなかなか取れない。また,隣同士で仕掛けを絡ませたりと,釣りまでの苦労が多かった。しかし,それでも悪戦苦闘しながら餌の赤虫をつける。中には,はじめて見る赤虫を触ることができずに戸惑っている様子の子どももいた。

今回のワカサギ調査では,夏の暑さの影響により個体数が少なかったが,オイカワがかかると子どもたちも監視役の大人たちも興奮状態であった。釣り上げた魚を飼育したいと持ち帰る子どももいた。

釣りのあとは,ワカサギを配布して耳石の採取を行った。耳石のある場所を説明したあとに,実物の耳石標本を見せ,その後に写真を使った年齢査定の方法を教えた。実際にワカサギから耳石をとれたのは半数であったが,参加した児童全員が熱心に耳石を採取していた。また,ルーペを使って年齢査定を行った。

最後はバスの中でワカサギ調査の振り返りを行った。今回の大きなテーマは科学的な思考力を育成すること。観察して,発見し,疑問を持ち,仮説を立てること,すなわち科学する基本的な事項を釣りと耳石による年齢査定を通して学んだ。振り返りアンケートの結果,大半の子供たちが理解を示していた。今回の学びがどのように定着していくのか,今後学習の成果を期待したい。




さかなクンの記者会見

2010-12-25 | 水圏環境リテラシープログラム
さかなクンの記者会見が白鷹館で行われた。報道陣が多数出席し,学長の挨拶の後,さかなクンからクニマス発見の経緯が報告された。

発見はこの春だという。ちょうど,私も春先にクニマスの記事を読み,さかなクンにクニマスが見つかるといいねと,話したことがあった。

きっかけは,どうしても絵を描くには本物をぜひ見たいという気持ちがクニマス発見につながったという。

西湖で発見したクニマスを最初に描いたのは,館山市にある水圏環境教育研究フィールドセンターであるとのことであった。

さかなクンは,最後子供たちへのメッセージとして,「私は絵を書くのが好きです。絵を描くには本物に触れることが一番大事です。これから,私も子供たちと一緒になって自然の中で体験をしたい。たくさんの感動を味わって欲しいと願っています。」としめくくった。

体験活動はフランス,アメリカ,フィンランドでも重視している。しっかりとしたプログラムと仕組みがある。生きる力を養うには体験活動が重要であるというのは世界の常識である。日本の子供たちにも体験活動の機会を増やしたいものである。

t地域との協働による沿岸域管理モデル構築

2010-12-18 | 水圏環境リテラシープログラム
本日は上記のワークショップが東京で開催されるため、とんぼがえりであった。
沿岸域管理モデルと言ってもテーマは限定されていない。そもそも日本にはない言葉であり、定着には時間がかかるかもしれないが、大事な事であるので、研究が必要だ。

最後に沿岸域住民を代表して漁業者を含めた4人の方に登壇していただき、意見を伺った。その中で、印象に残っている事は、ファシリテーターとしての大学への期待だ。沿岸域管理に関連してESDが話題になった。日本で、最も成功している県は岡山県であるといい、その秘訣は、公民館にファシリテーターを常駐させた事であるという。最近は、地元大学が関わる様になりさらに充実したという。

この例の様に、地域に責任者を常駐させるというまさに、リテラシー部門が進めようとしている事であり、もっと推進すべき事であるというシグナルと受け止めた。

また、他大学と同じカリキュラムではなく、もっとオリジナルを生かした取り組みをして欲しい。との声もあった。


今後、こうした地域住民の声を無駄にしない大学の対応が期待される。

ボトムアップ型ガバナンスは必要でない?

2010-12-18 | 水圏環境リテラシープログラム
沿岸域管理に関する研究会がとある市町村で開催された。研究会は、県振興局、技術センター、市町村の課長、部長、漁協などである。

来賓から、統合的沿岸域管理に関する説明会が開催され、これまでの縦割りではなく、横串をさした形で統合的に沿岸域を管理できる仕組みがこれからの時代には必要であると説明があった。

それに対して、これまでもそうした対応はなされており、特にこれから必要であるという意見は出なかった。

おそらく、何らかの問題意識が存在してはじめて必要性が生まれてくるのであろう。今のところそうした必要性はないようである。

今回の説明会で感じた事は、すでに行政の体制が整った状態の中で、新たな枠組みを導入しようとするのは、大変なパワーが必要という事である。特にも、根本的部分である「ボトムアップ型ガバナンス」という考え方事態が今まで続いた120年の教育システムに真っ向から相対立しているのである。まず、この考え方から違いを説明し理解を広めていかなくてはいけない。


クニマスの発見の快挙

2010-12-16 | 水圏環境リテラシープログラム
驚いた。絶滅したと誰もが信じて疑わなかった。それががくつがえされた。しかも、それは良い意味で。この様な事は、今時あり得ないのではないか。

魚類を愛好する人間の一人としてこのうえない喜びである。
次は、生態調査が望まれる。どこで産卵しているのか、どの様な再生産を繰り返してきたのか。多魚種との競合関係はどうなっているのか。なぜ、交雑個体が見当たらないか。

悪者扱いされがちな人為的な行為が70年の歳月を経て評価された。

それはさておき、今回の大発見の立役者はたいしたものだ。もし、熱心に探索を続ける人物がいなければ、見出す事だできなかったであろう。そしてそのエネルギーとは、単なる研究者としての専門知識のみならず、専門分野をわかりやすく伝えようとする社会知識の両面を備えた両義的な精神。この両義的人間がこれからの時代を切り開く人物であるという確信を持った。

日本海洋政策研究会

2010-12-05 | 水圏環境リテラシープログラム
日本海洋政策研究会が東京海洋大学において開催された。海洋政策研究というテーマで様々な研究分野の方々が集まり,実に興味深い研究会であった。楽水会館善幸ホールは満員御礼出会った。

午前中のパネルディスカッションでの議論では,海洋政策の方向性に関する議論が行われた。海洋は我が国にとって重要であるにも関わらず,国民から重要視されていない。特に,船舶職員の減少,漁業者の減少などの問題に同対処すべきか。

これに対し,的を得た回答が法律の専門家からあった。現在の経済システムでは,消費財として緊急性の高いものが優先され,価値が付けられる。しかし,公共財のようなものに対しては値段がつかないのである。それが,市場経済の宿命である。このようなことを解決するのは,政府の役割だ。政府がどのようにして,公共財を守っていくのかが,問われる。

小さな政府の重要性が叫ばれるが,ある程度政府がしっかりと自分の役目を果たすことは大切だ。その役目とは,方向づけをすることだ。これからどのように,国民の生活を方向づけるのか,それが一番大切だ。市場経済に流されない,普遍的な価値付けを行ってほしい。と願う。

しかし,問題がある。その問題とは,政治家と政府の役人の問題だ。と語る政治学者もいた。将来の方向づけを優先的に行うことが出来る役人は皆無に等しいという。何故ならば,政府の役人は出世することが一番の価値であるからである。そして,政治家もいかに人気を得て票を集めるかが重要であり,そのような方向にいかざるを得ない状況にある。という。

それでは,何をすればいいのか,ある科学研究者は人材育成の必要性を語った。最後の結論は,人材育成なのである。しかし,その多くの議論が通常漠然としたものである。こう出来ればいい,という願いで終わる。


私たちが訴えていることは,具体的な人材育成の手法と方向性である。水圏環境教育の理念が多くの人々に理解されることを願う。

なお,来年1月から日本海洋政策学会が発足することが決まった。

ベネッセコーポレーション高校通信講座WEBサイト

2010-12-02 | 水圏環境リテラシープログラム
ベネッセコーポレーション高校通信講座の担当者様の訪問を受けた。ベネッセでは、CSR(企業社会貢献活動)の一環として環境教育に力を入れているが、この度WEBサイトにて、海洋に関する問題を取り上げる事になりそうだ。

詳細についてはこれから詰める事になるが、高校生向けのコンテンツとしてどの様な内容に仕上げて行くか検討を進めていきたい。

我が国において、現行では普通教育において海洋に関する学習内容が欠如しているため、系統的な学習がなされていない事は問題であると、これまでも何度も訴えてきた。しかし、近年学習素材として海洋が取り上げられる様になってきているのは、島国という風土を私たちは決して忘れていない証拠であろう。

より良い海洋の学習教材を全国の高校性に提供したいものである。