Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

メキシコ湾における国連(UNIDO)プロジェクトの展開

2012-09-30 | ツイッター

Dr.Poffilioさんにメキシコ湾におけるUNIDO(国連工業開発機関United Nations Industrial Development Organization)の取り組みを紹介していただいた。
メキシコ湾では,UNIDO主導による二国間連携によるTDA(Transboundary Diagnostic Analysis)が実施されている。

TDAは国境をまたいで共通の目的を持って取り組むプロジェクトで,メキシコ湾の多面的な持続可能な利用・開発と協調を目指している。TDAのテーマは
1) 海洋の生産性
2)生態系の健全性と汚染
3)魚類と漁業
4) 社会経済学
5) 海洋ガバナンスであり
3つのパイロット実証プロジェクトとして
i)生態系の健全性の監視
ii) マングローブ林の復元
iii) 漁業資源の回復
を実施している。

アメリカとメキシコのそれぞれの研究者が協力してメキシコ湾全体を管理する理由は,海洋生態系は複数の国々に関連があるからで,領海のように国の都合によって線を引いても,海洋生態系は分けることができない。地球上には64カ所に大規模な海洋生態系が存在するが,どの海洋生態系でも同様である。

もちろん海洋生態系は海だけの問題ではなく,私たちの生活する陸域にも関連がある。水圏環境に対する意識の向上が最も重要なのである。現在では,研究者だけでなく二国間の教育関係者が毎年集い,お互いに教育に関する情報交換を行っている。また,ジュゴンを守るためのプログラムを立ち上げるなど小学校にも出向いて授業を行うこともある。持続的な開発のためには教育が欠かせない。もちろん研究者の情報は大変役に立つが,政策決定するためには研究者の情報をわかりやすく伝えていく役割が必要である。Dr.Poffilioさんはそうした役割を果たすための統合的な機能を持ったエクセレンスセンターを設置することを望んでいる。

多国間による海洋生態系マネジメントの一事例として,メキシコ湾における取組を紹介してもらった。我が国でも沿岸域の総合管理に取り組もうとしているが,幅広い専門家による研究,教育,アウトリーチ,インリーチによる生態系マネジメントが実現することを願いたい。

非水産・海洋系大学に於ける水圏環境教育の集中講義

2012-09-21 | 水圏環境教育

非水産・海洋系大学であるI大学において水圏環境教育に関する講義(「水圏生物と環境」)を4日間にわたって実施した。
大学生は人文系環境科学を専攻する大学2年生~4年生である。テキストには第二版となった魚類環境生態学入門を指定し、学生たちにレポートをまとめていただき,実物の教材を交えた講義を行った。4日朝8時40分~夕方16時15分までの講義は大変有意義なものであった。

学生たちの感想を聞くと,「環境問題に関する解決法について学んでいるいるが,実際の水圏生物についてここまで深く学んだことはない。水圏環境問題を叫んでも,どれだけの人々が水圏環境に興味を持ち理解しているのか。残念ながら決して多くないだろう。このような講義はぜひ,多くの人々に履修を勧めたい」と水圏環境に関する知識や理解がいかに我が国で普及していないかがよくわかる感想であった。ちなみにこの大学は沿岸部に世界有数の漁場を有しているが,水圏に関する授業は本格的に開講されていない。


水圏環境教育の教材製作のフィールド実習も行った。近くにきれいな川があるが一度も訪れたことがない学生がなんと多いことか。受講生の8割は初めてのようである。はじめて網を握り夢中になって魚を捕まえた。きれいなピンク色をしたひれを持つヤマメである。体調は5cm前後,元の守る会の方によると天然魚のようである。おそらく近くに産卵場があるのであろう。
このような学びに適した水圏環境が整っている大学は決して多くない。清冽な水圏環境を生かした教育活動に,これからもいっしょに取り組んでいたいものである。

また,内陸の大学では「日本は島国である,海はすべてをつないでいる」といってもあまりピンとこないようだ。むしろ,「海川森人すべてをつなぐのが水圏環境だ」とするとしっくりいく。

一通り魚類環境生態学について学びながら、解剖実習も行った。これは,カタクチイワシの煮干し。魚眼,耳石,さいは,心臓,脳などの観察が可能だ。(観察方法は里海探偵団が行く!に紹介されている)

初めての内部形態観察に真剣に取り組んでいた。食育の一環として食べながら観察した。

閉伊川っ子,中津川でたわむれる

2012-09-16 | 水圏環境教育
全国川の体験活動協議会in みちのくでのプレイベント。中津川の9月の水温20度。30度を超す気温の中,市内中心部を流れる中津川にはカジカ,アユの群れが見えました。地元の中津川を守る会によると毎年,サケ,サクラマスも産卵のため遡上するとのこと。そして,漁業権が設定されていないため盛岡市が管理しサケ,アユ以外は規制がないとのことであった。写真は,全国大会に訪れた宮古市の子どもたち。魚影の濃さに驚いていた。

次期海洋基本計画に盛り込むべき施策の重要事項に関する提言

2012-09-11 | ツイッター


海洋に関係する皆さんはご存じのことと思うが,海に関連する法律として2007年に議員立法で成立した海洋基本法がある。この基本法を推進するための具体的な指針を示すものが海洋基本計画である。この海洋基本計画の策定から5年目を迎え,今年見直しが行われ来年度より新しい計画がスタートする。

海洋基本法戦略研究会による次期海洋基本計画に盛り込むべき施策の重要事項に関する提言が野田首相に提出された。
法律の整備からはじまり,海洋開発,人材育成,,漁村振興,国際協調,海洋教育と幅広い内容が盛り込まれている。

日本は,島国であるにもかかわらず,海洋に関する教育がほとんど行われていない。それはなぜか,海洋関係者の多くは疑問を抱く。しかしながら,思うほどに進まない。なぜか。それは,戦後海に目を向けてこなかった教育制度に問題があるのではないか。

では,明治時代はどうであろうか。以前も触れたが,全国の高等小学校や水産補習学校の650箇所以上で水産科の授業が行われていたようである。当時の小学校の国定教科書「水産」を見ると日本は海国であり,豊かな水産資源に恵まれた国であり我々国民は海を理解することが必要である.といった内容が書かれている。

本学で明治22年水産動物学の講義を行った内村鑑三は明治時代に「デンマルク国の話」の中で,九州程度の大きさしかない島国デンマークの富国政策について次のように語っている。

「(中略)富は大陸にもあります、島嶼とうしょにもあります。沃野にもあります、沙漠にもあります。大陸の主かならずしも富者ではありません。小島の所有者かならずしも貧者ではありません。善くこれを開発すれば小島も能く大陸に勝まさるの産を産するのであります。ゆえに国の小なるはけっして歎なげくに足りません。これに対して国の大なるはけっして誇るに足りません。富は有利化されたるエネルギー(力)であります。しかしてエネルギーは太陽の光線にもあります。海の波濤にもあります。吹く風にもあります。噴火する火山にもあります。もしこれを利用するを得ますればこれらはみなことごとく富源であります。かならずしも英国のごとく世界の陸面六分の一の持ち主となるの必要はありません。デンマークで足ります。然しかり、それよりも小なる国で足ります。外に拡がらんとするよりは内を開発すべきであります。(中略)」と,もっと内にある資源に目を向けよと述べている。そして,そのためには教育がとても大切であると述べている。

今回の提言にも,海洋風力発電等開発研究のみならず,海洋の教育を推進するための社会教育と学校教育との連携,学習指導要領における海洋分野の明確な位置づけ等が盛り込まれている。

今まさに,島国日本としての原点に立ち返り,何をすべきなのかを真剣に考える時期ではないだろうか。今回の提言が具体化につながるよう期待し,また努力したいものである。

ミハイル・チクセントミハイ 人間の幸福は「フロー体験をしているとき」

2012-09-08 | 水圏環境教育



心理学者ミハイル・チクセントミハイ「 人間が幸福を感じる時はフロー体験をしているとき」
「フロー」とは内面が活性化され,創造力が高まり生き生きとしているときの状態である。
フローを生み出す条件として7つを挙げている。

1やっていることに完全に没頭することー焦点を絞り集中している状態
2エクスタシーの感覚があることー毎日の現実の外側に存在している状態
3偉大で内面的で明確なものがあることー必要なものは何か,そしてどのように私たちがすばらしいことをやっているかを理解している状態
4その活動が自分でも可能であると理解することー私たちの技術がその仕事をする際に十分である状態
5平常心を持っていることー自分自身に心配がなく,年齢の垣根を越えて成長を感じる状態
6永遠性を持つっていることー完全に現実の世界に没頭している。時間があっという間に過ぎていく。
7自分が大きなものの一部であると感じること