Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

ブルーカーボン実証事業 in 横浜 八景島シーパラダイス

2012-07-31 | 水圏環境教育

横浜市金沢八景に海の公園(アマモ場再生の取組が行われ,夏は海水浴場です)

ブルーカーボン実証事業の第3回ブルーカーボン検討委員会が八景島シーパラダイスでありました。おそらく,世界で初めての自治体を主体とするブルーカーボン実証事業だと思います。

ブルーカーボン実証事業とは海洋に吸収されるCO2は自然界で固体化される55%が海洋であり,しかもそのほとんどが沿岸域であることに着目し,沿岸域における海洋のCO2吸収量を増やそうとする取り組みです。国連環境計画(UNEP)が提唱しているものですが,森林によるカーボンオフセットほど知られていません。海との密接な関わりを何万年も営んできた日本人は,もっとカーボンオフセットに着目し,具体的な取り組みをすすめ,世界にアピールする必要があります。

横浜市では,このようなコンセプトのもと八景島シーパラダイスとの共同で八景島のセントラルビーチにおける実証実験を開始しました。この冬にはワカメの栽培試験を実施し3月には収穫祭を行いました。

今回の会議で話題になったのは,海洋生物の扱いです。CO2を吸収する生物としてはマングローブ,アマモなどが挙げられますが,基本的に海底に固定されてはじめてCO2が吸収された,と見なされるようです。しかし,ワカメやコンブなどを食用とする事はCO2吸収として国際的には認められていません。

今回の実証実験ではワカメが約300kg収穫されました。CO2に換算すると約18kgのようです。しかし,これを食べるとCO2を吸収した事にならないという事です。(ただし,フードマイレージの考え方であれば可能であるという事ですが・・・)

このことについて,委員から,食用とする事についてCO2吸収量として積極的に関われないか,という意見が出されました。専門家からするとなかなか無理な話との事ですが,先進国として海藻を食べる文化を持つ国は珍しく,むしろ日本がリーダーシップを発揮すべきではないかと私は思いました。人間を生態系の一部としてとられる「円融自在」の考え方も参考になるのではないかと思います。

また,この会議では,カーボンオフセットなどのインセンティブだけが先行するのではなく,環境啓発のための教育活動も並行して推進すべきであると,委員の共通認識として持つ事が出来た事は大きな収穫です。八景島シーパラダイスでは,このような認識を持ち水圏環境教育に関する新しい取り組みがはじまるようです。

鋸南町保田漁協を訪問

2012-07-30 | 水圏環境教育

1年生フレッシュマンセミナーの一環として
全国的にも番屋の経営で有名な保田漁協を訪問した。
現在の番屋の利益率は30%であるという。

なぜ,番屋を始めたか。組合長から直接お話を伺った。
まず,アワビ,伊勢エビを4年禁漁すれば資源が回復するのではと,管理型の漁業を提案。
そして,マリーナを提案。漁港にはマリーナは設置できないことになっているが,何とか作った。現在は年間収入が2000万円を超える。
また,海を使う事業はだめと総代会では否決であったが,6m四方のヒラメの養殖場の施設を設置。最初は順調であったが,韓国からかなりのヒラメが1kg1800円でくるようになり,採算ベースが1kg2000円前半。がんばったが,2億の赤字。毎年2千万の赤字となった。協賛事業も減っていって,ヒラメを養殖すると仲買の業者に手数料を取られる,では,食堂をやって末端の人々に提供したらということで,800万円で食堂を作り,4年目で1億の売り上げであった。
利益率が当時出せなかったが,20%は超えていた。
当時行列が夕方の4時まで続くと2000人で会った。次々番屋を作るようになった。
この資金が組合のためになった。

おいしい,キンメダイをいただきました。東京湾口は水産資源が豊富です。キンアジも脂がのっておいしかったですね。

8万坪の山を買った。富士山がきれいである。散策道を作った。これからはここを宿泊型の滞在場所にしたいと考えている。

参事さんによると漁協は本来的に漁民の生活向上のためにあるものである。従って,漁協職員はその目的を果たすために努力をしなければいけないという言葉が印象的であった。

確かに,地方水産業の発展のためそして漁民の生活向上のため村田保や松原新之助をはじめとした明治時代の先達によって提案されたものである。水産経済の専門家によるとこうしたシステムは世界でもまれであるという。

特製のお寿司は学生たちも完食していました。

今回の視察でわかることは,漁協自身の考え方がとても重要であること。漁港をアリーナとして解放し,一般の船舶を受け入れていること。直接消費者とつながること。こうした取り組みは新しいことでありリスクも大きいと思われる。経営のつぼをしっかりととらえ取り組みへのアドバイスを与えること大切であり,大学の重要な役割の一つであると,水産経済の専門家は話していた。

一般財団法人日本政策学校代表理事金野索一さん講演会無事終了しました

2012-07-20 | 水圏環境教育
7月18日,楽水会館2階にて一般財団法人日本政策学校代表理事金野索一さん講演会が行われました。
参加者は水産について考える会の会員の方々ならびに現役学生である。

1国会議員の職業偏重の実態
国会議員の6割以上は議員秘書,県会議員,国家公務員そして2世議員であり世間との接点が限られている。もっと多様性のある人材を国会に送り込む必要がある。

2法案の8割が行政府が立案したものであり,国会議員の多くは省庁が作成した法案に賛成か反対かを投じるだけ。議員立法が2割にとどまっている。

3現在の行政の制度は,あくまでも生産や専門家を擁護するためにあるものである。制明治時代に大久保利通が作ったものである。その仕組みを今でも周到している。
例)農林水産省は消費者ではなく生産者の側にたった法案を作る
厚生労働省は医療制度はあくまでも医者の側にたった法案を作っている
かろうじて消費者庁は消費者の側にたっているが,力は弱い

4吸収法から増加法への転換の必要性と司法の役割の向上
現在の法律は吸収法といってこれまでの法律に照らし合わせて作られるものであり,簡単に新しいことができない仕組みになっている。
増加法に転換して,国会議員が新しい法律を作れるようにすべきである。
そして,その増加法を憲法に照らして正しいかどうかを司法が管理すべきである。
日本の司法が法律に関して動いたケースは戦後8件だけであり,それも一票の格差の問題だけである。

5公共セクター,企業セクター,民間セクターのネットワークの必要性
今回の震災でも,これら3つのうち後者2つはよく機能したといえる。しかし,公共セクターの動きはこれら2つに比較して弱かった。これからは,公共セクターの役割をいかに高めていくかが大きな課題

6国会議員が活躍するためにはシンクタンクが必要であるが残念ながら日本には民間のシンクタンクは発達していない。

学生からの「大学もシンクタンクの機能を果たしていくべきではないか」という質問に対して,講師の今野さんからそれはいいアイデアであるというコメントをいただいた。

現在,国立大学法人として初めて岩手大学が沿岸部にエクステンションセンターを設置した。全国の市町村に大学のエクステンションセンターを設置し,エクステンションセンターをシンクタンクの機能を持たせ地域の意見と政策に反映できる様な仕組みを構築することは,災害の多い日本にとって必要ではないだろうか。もちろん災害だけでなく,まちづくり地域づくり,地域振興にも大きな力を発揮する。それらを大学の全国のネットワークを構築することでより発展性と均衡のとれた国土をつくることができるのではないだろうか。