三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「Everything Everything」

2017年08月27日 | 映画・舞台・コンサート

 映画「Everything Everything」を観た。
 https://warnerbros.co.jp/movies/detail.php?title_id=53716

 人間は環境との有機的なつながりで生存している。呼吸し飲んで食べて排泄する。一見恒常的に見える個体だが、細胞は絶えず死滅し、そして再生している。環境には人間にとって有益なものから無益なもの、有害なものまで幅広い存在している。人間が細胞レベルで常に変化しつづけているように、環境も常に変化しつづけている。時として変化を担うのがウイルスやバクテリアのことがある。呼吸し飲んで食べることは、即ちウイルスやバクテリアを体内に取り込むことでもある。
 人間の体内には、細胞の数をはるかに超える数のバクテリアが存在している。乳酸菌などのいわゆる善玉菌から大腸菌などのいわゆる悪玉菌、それにどっちつかずの日和見菌というものまであるらしい。
 免疫は細菌を体内に取り込む過程で徐々に獲得していくものであることは、我々がすでに知るところである。

 そういった観点で言えば、この作品にはおかしなところがたくさんある。しかし作品のテーマは免疫学でもアレルギーでもない。免疫不全という設定の箱入り娘の初恋の物語である。
 初めての恋にときめく娘、どこまでも娘を心配する母親、優しい看護婦、理不尽な父親からの自立を模索する良識ある若者。悪人が登場しないほのぼの映画である。白人と黒人の恋愛映画でもある。こういう作品が求められるところに、逆にアメリカの鬱屈した世相が見てとれる。


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