中国が北朝鮮にミサイル運搬車両輸出

６月１５日　編集手帳　読売新聞

　｛漢字の部首には面白い名前がいくつかある。たとえば秘匿の「匿」は“隠し構え”、恐怖の「恐」は“下心”に属する。どちらも竹山広さんの歌に教えられた。〈下心、隠し構へという部首のあるを君らは知るか知るまい〉◆いくら漢字の本家筋とはいえ、部首名を行動で示すこともなかろう。露見した秘「匿」の中身は十分に「恐」ろしい。いかなる下心があってのことか、見過ごしにできぬ隠し構えである◆弾道ミサイルの運搬や発射に転用可能な特殊車両を、中国が北朝鮮に輸出していた。国連安全保障理事会の制裁決議に違反した疑いはぬぐえない◆中国は「木材運搬用」の車両と釈明している。泥棒が壁を乗り越えるハシゴを欲しているときにハシゴを贈り、「あれは運動会の障害物競走でくぐり抜けるハシゴでして…」は通らない◆国際協調の包囲網に抜け穴ができれば、北朝鮮への制裁決議は 紙屑 ( かみくず ) も同然になる。この「屑」という字の部首には“しかばね”という 禍々 ( まがまが ) しい名前がついている。隠し構えと下心がやがては近隣諸国に住まう人々の生死にかかわることを、中国政府は知るか――知るまい。｝

　日本では早くから中国が北朝鮮に弾道ミサイルの運搬する特殊車両を輸出した、事実をつかみ、米国に連絡した。しかし日米ともこの事実を、国連安全保障理事会の制裁決議に違反だと、届け出なかった。なぜ目をつぶったのかわからない。どんな理由があれ中国の武器輸出は、日本や韓国にとって許し難い事である。