喜多院法興寺

住職のひとりごと

皆既日食の「ダイヤモンドリング」

2009-07-23 05:55:52 | Weblog
7月23日付 編集手帳(読売新聞)
 {婚約指輪を交換する習わしはヨーロッパの中世貴族にはじまる。浮気心を起こさぬ証しに、互いの心臓を縛り合った。心臓の実物は縛れないので、“出先機関”の指を縛ったという。
◆西洋史学者、木村尚三郎さんの「色めがね西洋草紙」(ダイヤモンド社)からの受け売りだが、その方面で社交的な人のなかには、心臓の縛り合いと聞いてギョッとした方もおられよう。
◆皆既日食の「ダイヤモンドリング」をテレビで見た。思えば、人に生きる力を与える陽光は酸素と栄養分を運ぶ動脈に、疲労と悲しみを癒やす月光は老廃物と二酸化炭素を流し去る静脈に似ている。太陽と月は天の高みをつかの間の指輪で飾り、人間にどんな約束を告げたのだろう。
◆前回46年前に観測されたとき、宇宙飛行士の毛利衛さんは北海道・余市の高校1年生だった。当日は体育祭で、学校を休むことを先生は許してくれない。さぼって網走に行き、日食を見た。のちに眠りの夢に、何度も真珠色のコロナが現れたという。
◆ぼくは天文学者になる、わたしは宇宙飛行士になる…。きのう、約束の指輪を夏空と交わした少年少女もいただろう。}

 婚約指輪を交換の意味は、心臓を縛る事だと初めて知った。人に生きる力を与える陽光は一瞬閉ざされ、日中でありながら不安と不幸が訪れたかの様に暗闇が覆おう。その後、神秘的な「ダイヤモンドリング」、さらに普段見ることが出来ないコロナが現れ、人々に感動と生きる勇気を与えてくれた。25年後の皆既日食は、もう私は生きてはいまい。