神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

天満宮・樹下神社

2015年12月08日 | 滋賀県

滋賀県大津市北比良・南比良


蓬莱駅から比良駅までの二駅の距離を、なるべく湖岸に近い道を選んで歩いてきた。
水切り遊びをしたり、シジミはいないかと砂浜を掘ったり、流れ込む小川に手を浸し、その冷たさを楽しんだりして、やっぱり琵琶湖っていいなぁ、と再認識。
あまり一人では出来ないことでもあるので、同行者のO君にも感謝だ。
出来れば、この先も湖岸に沿って、近江舞子か北小松まで歩いてみたかったが、午後の天気は雨で間違い無さそうだし、ここから山側へ少し行ったところに、以前から行きたかった神社があるのでそちらに立ち寄り、比良駅から帰ることにする。

左手に比良駅を見て、湖岸から山の方へと一直線に向かう道に入るところで、湖岸に面して鳥居が立っている。



天気が悪くて、写真では空と琵琶湖の境界さえ判らない状態になってしまった。
ここは、これから向かう神社の御旅所のあるところだ。
天気が良ければ、青い空と琵琶湖に鳥居が映えることだろう。
ここからは退屈な直線道をテクテク歩く。
神社の杜は早くから見えているものの、景色は遅々として進まない。
湖岸から800m弱の距離だが、この日、最も退屈な道のりだ。
正面には比良山系が聳えているが、その斜面の紅葉は全く冴えず、濁った色で曇天の下でくすんでいる。
私にとって、今までで一番美しい紅葉を見たのは比良山だった。
中学三年の秋のことで、それはそれは鮮やかで、息を呑むとはこういうことかと思うほど、圧倒的な美しさだった。
今日は多少は時期を外しているかも知れないが、そうであっても通常なら点々と鮮やかに色付いた木々が散見される筈である。
それが一本も見当たらない。
やはり今年の紅葉は色付きが悪いのだろう。
ただ、蓬莱駅から7キロほど歩いてきたが、さすがに若いO君は全く疲れた様子も無くて心強い。



国道161号線と出会うT字路の正面に神社はある。
タイトルで二つの神社名、住所は北比良と南比良の二箇所を書いた。
写真をよく見てもらえば判るのだが、正面の鳥居の左側にも常夜灯が見えていて、何やら参道のような気配が窺える。
正面の鳥居が北比良の天満宮のもので、左側に少し見えている参道は、南比良の樹下神社のものだ。
つまり、地区の境界の南北に、それぞれの地区の神社があって、前回の八所神社と似た状態ではあるのだが、こちらは八所神社と違って神社名は別々である。



両神社の間にある大木はかなりの存在感。
幹の殆どは空洞になってしまっているが、まだ緑の葉を沢山つけている。
目の前は国道で、湖西道路が出来る前は交通量がもっと多かったし、長い間、排気ガスに晒されてきたわけであるが、今は少しばかり過ごしやすくなっているだろうか。
とはいえ、国道が通じる前の風景を見てみたかったと強く思う。
 


天満宮の鳥居。
左奥には樹下神社の鳥居も見えている。
こういった細かな違いはあるが、この二社は瓜二つと言っていい。



参道の途中で隣に別の参道と鳥居がある。
とても不思議な感覚だ。



こちらは樹下神社の鳥居。



天満宮の拝殿。



両社の参道の間から。



こちらは樹下神社の拝殿。
瓜二つとは言っても、よく見れば拝殿も中門も、それぞれ微妙に作りが違う。
何だかいい意味で競い合っているかのようにも感じられて、それを見る私としては贅沢な眺めを享受させてもらっている気分だ。






面白いなぁ、と思う。



元々は一つの神社が、地域の争いで二つに分かれた、という話もあるようだけど、今は仲良く並んでいるようで、ここの神様達は、日々、楽しんでらっしゃるのでは、なんて考えたりする。
どんな会話を交わされるのか、想像すると豊かな気持ちになれる。






こういった神社は、他にも例があるのだろうか。
前回の八所神社も似たような事例だけど、ここは更に特異さが際立つ。



樹下神社本殿前から鳥居方向。



こちらは天満宮。
どちらも湯立竈らしきものがある。



天満宮本殿。
この位置から見た本殿の陰翳が、最も美しかった。



残念な天気のせいもあって、納得のいく写真は撮れなかったけれど、楽しい一日だったので、まあ良しとしよう。

 
撮影日時 12時~12時50分
地図