神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

不動谷 その1

2011年10月04日 | 滝・渓谷

京都府京都市西京区大原野出灰町


手軽に滝や渓谷の写真を撮るとなると、どうしても琉璃渓になってしまう。
実際、ここでは何度も琉璃渓を掲載しているし、他に近場でこれといった場所も見当たらない。
もっと近い場所に六甲があるが、開発の手が入り込んで水の汚れたところが多く、登山者も多いので行く気になれない。
滝を紹介されているサイトを見て、篠山や亀岡、南丹辺りに適当な場所は無いものかと探してはみるが、撮りに行きたくなるような魅力ある滝は見当たらない。
こういったサイトにもあまり紹介されていないような滝があるとは思えないものの、とりあえず地形図で滝がありそうな場所を探してみる。
と、意外な場所で気になる地形が見つかった。
丹波どころかもっと街に近い、高槻市と京都市西京区のほぼ境、ハイキング等で有名なポンポン山から流れ出す谷だ。
谷自体は小さく、地形図には滝記号どころか水線すら描かれていないが、それなりに集水面積はあり、ほぼ間違いなく滝があると思える地形だ。
改めて調べてみると、山登りをする人のサイト、それから滝を紹介されているサイトでも、掲載されているところが見つかった。
とはいえ、基本的にはあまり知られていない場所のようであるし、ポンポン山自体はハイカーで賑わうところではあっても、この不動谷は一般的なルートでは無いようだ。
滝は五つほどあるようで、そんなに惹かれるものでも無かったが、こういう「こんなところに」、という存在は、少々つまらなそうでも行ってみたくなる。

芥川沿いの道から、出灰川沿いの狭い道に入る。
すぐに高槻市出灰の集落で、ここにはずっと以前に紹介した素盞鳴神社がある。
そこから暫くで、右手に出灰不動尊の看板が見えてくる。
いちおう駐車場はあるが、軽自動車以外は入りにくそうだし、私の車だと腹を擦りそうなので、400メートルくらい手前の道の広くなっているところに駐車した。

徒歩で不動尊入り口まで戻り、出灰川を渡る。
この辺りは出灰川が府境になっているので、橋を渡れば京都府だ。
不動谷沿いのよく整備された山道を登っていくとすぐに不動尊に着く。
勝手な思い込みで、比較的新しい信仰の場所という気がしていたのだが、案の定、見えてきた建物は何の風情も無いもので、そこに置かれている不動明王像なども全く風化のしていない綺麗なものだ。
まあ滝が目的だしいいけれど、と、前方に目をやると、そこに広がる気配にちょっと息を飲んだ。



鳥居と拝殿(?)らしき建物があって、その奥には祠と二本の大木が聳えていた。



右の大木は欅、左の注連縄の巻かれているものは杉である。



事前に調べたときに、ここの写真も見ていたのだが、そのときは気付けなかった空気が満ちていて、この風景に接することが出来ただけで来て良かったと思った。
思いのほか古くから、信仰の場としてこの地はあるようだ。












何だかここだけで満足してしまい、滝がどうでもよくなってきた。
最初は全部の滝を見るつもりだったが、適当なところで切り上げようなんて気持ちになる。



とりあえず、流れに沿った道を進むことにする。



僅かな距離で木橋があって、その先に滝が現れる。
西向きの谷間はまだ朝日が入らず、予想外に暗い。
オートフォーカスが使えず、マニュアルに切り替えるがファインダーも暗くてピント合わせに苦労する。
というかピンボケだ。



先日の台風の影響で、普段の倍くらいの水量だろうか。
水飛沫も凄いので、レンズが水滴ですぐ濡れてしまい、落ち着いて写真を撮ることも出来ない。



滝の手前、左側から登っていく道を進み、あまり気合いの入らないまま次の滝へ。



更に道があるような無いようなところを進んで三つ目の滝。
どれも水量が多すぎるので写真にしにくい。
それに、滝はあっても渓谷としての美しさは無いので気持ちも高ぶらない。
渓谷というものは(渓谷の定義にもよるが)、岩盤質の山でないと発達しないものであると思うが、ここは谷の両岸がぐずぐずと崩れやすい土の斜面だ。
従って滝壺や淵も発達しない。
深い淵の澱み、岩を滑る急流、そして滝、それらが揃わないと、渓谷とはいえないと思うし、水の美しさは発揮されないと思う。



少し足を濡らしてしまったりしながら、惰性でこの滝に辿り着く。
落差はこの谷最大だろうか。



大きく見れば二段、細かく見れば三段で、一段目と三段目の間から撮ったもの。






二段目から三段目へと流れ落ちていく様子。
もう少し岩の表情が出せれば良かったのだが。

さて、ここから先はどう進むのだろうか。
もともと道といえるほど明確なものは無かったが、かといってここは適当に進める地形ではない。
一段目は傾斜も緩く手がかりも多そうなので、ずぶ濡れ覚悟なら滝身を登っていけそうにも思えるが、もとよりそんな気合いは無いし、もうこの辺りで引き返そうかとも思う。
と、戻りかけたところで、右岸の斜面に垂れ下がっているトラロープが見えた。
見つけてしまったからには先に進むしかない。
気勢の上がらないまま、恐らくは最後であろう次の滝を目指す。


2万5千分1地形図
撮影日時 110923 7時40分~8時30分
駐車場 あり
地図