犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

川上徹也著 『あの演説はなぜ人を動かしたのか』

2012-12-10 00:03:47 | 読書感想文

p.6~

 すぐれた演説・スピーチには、人々の心を大きく動かす力があるのです。バラク・オバマに限らず、数多くの政治家や活動家が、演説の力で人々の心を動かし、その後の歴史を大きく変えてきました。こうした彼らの演説を分析すると、必ずと言っていいほど使われている手法があります。それは「ストーリー」を語ると言うことです。人間はストーリーが大好きな動物です。

 ストーリーは世の中にあふれ返っているのです。しかも、その構造はどれも驚くほど似ています。なぜなら、人はある特定のストーリーのパターンに出合うと、思わず心が動いてしまう性質を持っているからです。以下の3つの要素が含まれていることが「ストーリーの黄金律」です。
 (1)何かが欠落した、もしくは欠落された主人公
 (2)主人公がなんとしてもやり遂げようとする遠く険しい目標・ゴール
 (3)乗り越えなければならない数多くの葛藤・障害・敵対するもの


p.51~

 『人を動かす』『道は開ける』などの世界的なベストセラーを持つ、デール・カーネギーは、その著書の中で、人を動かすには以下の3つの欲求に訴えかけるのがいいと語っています。
 (1)金銭欲
 (2)自己保存(健康でいたい)欲
 (3)プライド


p.86~

 ビジネスにおいて、会社や商品や個人に3つの異なるレベルのストーリーがあり、それが矛盾なく1本に合わさっていると、ファンが集まり、周りから応援してもらいやすくなるというものです。それは演説にも応用がききます。3つの異なるレベルのストーリーとは、以下の3つです。
 (1)志のストーリー
 (2)ブランド化のストーリー
 (3)エピソードのストーリー


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 情報化社会において国民に発信される言葉は、どれも非常に練られていて、プロの参謀役であるコンサルタントによる用意周到な分析を経ていると感じます。言葉の専門家にも色々ありますが、自問自答して心の奥底を掘り下げる専門家の言葉には値段がつきにくいと思います。これに対し、間髪を入れずに機関銃のように繰り出される言葉を前提に、マスコミ対策どころかこれを利用してしまう技術を授ける専門家の言葉には値段がつきやすいと思います。

 「言葉が人の心を動かす」と言われますが、人の心が動くところは目で見えませんので、これは事実を述べた嘘だと思います。すなわち、「言葉が」という言葉が嘘なのではなくて、「心を動かす」という言葉が嘘なのだと思います。「人を動かす」というのも、その対象となる人を意のままに操るということであり、心底からの腹黒さを感じます。優れたコンサルティングは詐欺に等しいと思いますが、上手い言葉に騙されていると、それと解っていても逆らえない部分があり、言語の騙りは避けがたいと思います。