犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

三浦博史著 『勝率90%超の選挙プランナーが初めて明かす~心をつかむ力』

2012-12-07 00:03:16 | 読書感想文

p.192~

 「ドブ板選挙」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 英語で言うと「ドア・ツー・ドア」です。こうしたドブ板選挙のことを私たちは最近では「地上戦」と呼んでいます。地上戦では、ドア・ツー・ドアで候補者がそれぞれの有権者と会って、握手をし、話をします。そうすることで前回の選挙でその候補者に投票した有権者もさらに親近感を深めて、今回の選挙でもまた入れてくれるようになるのです。

 ただし、一度取った票を逃さないという意味では選挙と選挙の間も非常に大事で、その間、候補者は有権者あるいは支持者にできるだけ働きかけを行わなければなりません、でないと、支持者から「自分がせっかく1票を入れてやって当選したのに、その後1年以上もウンともスンとも言ってこないし、姿を見たこともない」というクレームが出てきます。

 その程度ならまだしも、「何だ、あいつは。選挙中は何度も電話を寄こしたのに! 選挙後は何も言ってこなくなった」というふうに怒らせてしまうと、もう票は二度と戻ってきません。次の選挙のときに「またよろしく」と頼んでも、その支持者からはソッポを向かれてしまいます。地上戦は、選挙期間以外の取り組みも含んでいるのです。


***************************************************

 有権者が選挙のたびに思い当たって脱力することは、「政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の世代を考える」という点だと思います。他方で、「自分がせっかく1票を入れてやって当選したのに」「選挙後は何も言ってこなくなった」という思いも、多くの有権者の記憶にあるだろうと思います。私にも「自分がせっかく1票を入れてやったのに」という不満は思い当たる節があり、自分が1人の人間ではなく1票という数にされたことに憤慨してしまい、次はその候補者に投票しませんでした。

 「議員は選挙と選挙の間くらいは次の選挙のことを忘れて、次の世代のことを考えてほしい」という有権者の率直な思いは、これだけ専業のプランナーが分析を重ね、マーケティングの手法が発達した現代では、もはや望むべくもないのだろうと思います。「次の世代を考えているところを有権者は見てくれているだろう」という素人考えでは、戦略マネジメントの前に惨敗を喫するからです。結局、「次の選挙のために『次の世代を考えています』というところを見せておく」という政治屋が勝利に近付くのだと思います。