犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

全国町村議会議長会編 『問答式・選挙運動早わかり』

2012-12-06 22:04:17 | 読書感想文

p.28~
問: 事前運動と立候補の準備はどう違うか。
答: その限界はなかなか微妙で、事実についての判定による場合が多いが、要するに投票依頼の意思がなく、純粋に準備行為として行われるものならばよいということになる。後援会の結成にしても、その目的が当人を当選させることにあることが明らかな場合、その組織の結成方法や活動内容のいかんによっては選挙運動と認められる。


p.32~
問: ふつうの政治運動は事前運動にならないか。
答: いわゆる党勢拡大を目的とする政党活動のような一般の政治活動は、選挙運動に似ているが選挙運動ではない。ただ、これらの政治活動でも、単にそれに名を借りるだけで、実は投票を得るのが目的である場合は、選挙運動となり、事前運動の禁止規定にふれてくる。


p.95~
問: 明るく正しい選挙をとなえて立候補している者があるとき、「明るく正しい選挙推進のため」の署名運動を行う場合は署名運動の禁止規定に反しないか。
答: その特定候補者のためにしているものであるかどうか、その他の事実関係で判断するほかはない。


p.113~
問: 演説会場では、その演説会の開催中に、どんな文書・図画でも使用できるか。
答: 使用するポスター、立札、看板の類の大きさは縦273センチ、横73センチを超えることはできない。ちょうちんの大きさは高さ85センチ、直径45センチ以内である。ちょうちんは会場内外を通じて1個しか掲示できないが、ポスター、立札、看板の類は会場外で通じて2個以内であるが、会場内では数に制限がない。


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 選挙が行われると、必ず公職選挙法違反による検挙があり、裁判所も法律事務所も急な対応に追われます。法律を作る人間を選ぶための選挙に精通しているということは、法律の抜け穴を測る技術にも長けているということであり、穴の存在自体は問題にならなくなるのが普通です。現場でこの点に疑問を呈しても、「そんな抽象論を言って暇があったら、ポスターや看板の大きさをしっかり測れ」と怒られるということです。

 個々の選挙違反行為に細かく入り込んでいると、選挙における争点がどれも無意味に思われ、地に足が着かない寝言のように感じられることがあります。景気・経済対策も、医療・年金などの社会保障の問題も、原発・エネルギー政策も、TPPの問題も、どこか遠い国の無関係な話のように思われてきます。その反面、「他のことはどうでもいいからとにかく当選したい」という人間の本性が切実感を持って迫ってきます。