犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

カウンセリングマニュアル

2008-09-25 22:51:27 | 言語・論理・構造
●悪い例

相談者 「夫は結婚記念日も忘れ、私の誕生日も忘れているのです。しかも私の誕生日には、自分の趣味のフィギュアを買って喜んでいました。私はもう我慢できません。離婚したいです」

弁護士 「それでは離婚事由になりませんね。あなたは暴力を振るわれていませんか。旦那さんは不倫をしていませんか。ギャンブルにはまって借金をしていませんか。お酒に酔って物を壊したりしていませんか。私は民法770条1項5号所定の婚姻を継続しがたい重大な事由を探しているのです。さあ、何でもおっしゃって下さい」

相談者 「・・・・・」


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●良い例

相談者 「夫は結婚記念日も忘れ、私の誕生日も忘れているのです。しかも私の誕生日には、自分の趣味のフィギュアを買って喜んでいました。私はもう我慢できません。離婚したいです」

弁護士 「それはさぞかし辛い思いをされましたね。お気持ちはよくわかります。それでは、良い未来を迎えられるように一緒に考えましょう。まず、民法には、離婚できるための条件が決められています。もう少しお話を聞かせて頂けませんか」

相談者 「はい、ありがとうございます」


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●解説

2人の弁護士の違いは、返答の冒頭に「それはさぞかし辛い思いをされましたね。お気持ちはよくわかります」という表現の共感があるか否かである。これだけで相談者の心を動かす力があるのかと思われるかも知れないが、絶対的な違いがある。共感を示すときには、それまでよりも声のトーンを一段低くし、一瞬だけ目を合わせて3回うなずき、次の瞬間に口元に視線をそらし、その次の瞬間に再び相談者の目を見ることが重要である。


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●実践編

相談者 「夫は結婚記念日も忘れ、私の誕生日も忘れているのです。しかも私の誕生日には、自分の趣味のフィギュアを買って喜んでいました。私はもう我慢できません。離婚したいです」

弁護士 「(声のトーンを一段低くし、一瞬だけ目を合わせて2回うなずきながら)それはさぞかし辛い思いをされましたね。(口元に視線をそらして1回うなずき、次の瞬間に再び相談者の目を見ながら)お気持ちはよくわかります」

相談者 「そんな簡単に気持ちがわかるなんて言わないで下さい。あなたに私の気持ちがわかるわけないじゃないですか」

弁護士 「・・・・・」