hiroの花便り

我が家に咲く花や日々の暮らしを綴っていきたいと思います

カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」

2021-03-10 | 本・雑誌など


優秀な介護人キャシーは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。
生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。
キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。
図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、
保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。
彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。

(「BOOK」データベースより)

2017年のノーベル文学賞受賞によって、カズオ・イシグロを知り
初めて読んだのが、「遠い山なみの光」
その時、英国最大の文学賞であるブッカー賞を受賞した
「日の名残り」も一緒に買ったのですが、
読んだのは昨年8月でした。
執事として働いてきた老人が、過去の仕事を振り返るお話ですが、
よその国の少し昔の物語としか感じられず、
ブログには特に感想までは残しませんでした。

「わたしを離さないで」を読むきっかけは、2016年1月~3月に放送された
TBSの同名ドラマをネット配信で見て衝撃を受けたからで、
ドラマではヘールシャムが陽光学園に、
キャシー(恭子)役を綾瀬はるか、トミー(友彦)役を三浦春馬、
ルース(美和)役を水川あさみが熱演していました。

ドラマは冒頭から衝撃的なシーンで始まる。
手術室に横たわる友彦の臓器摘出。それを見つめる恭子。
手術が終わり、恭子が看護師から渡された注射をその体に打つと
今まで息で曇っていた酸素マスクの中が透明になる。
そのまま友彦を焼却炉に入れスイッチを押す。
見ているのが辛くなるようなシーンですが、
原作では31歳のキャシーが、ヘールシャムでの思い出を
一人称で淡々と語るところから始まります。
解説に細部まで抑制が利いて、入念に構成されていて
かつ我々を仰天させてくれる、きわめて稀有な小説である、
と書かれていましたが、まさにその通りだと思いました。

ドラマは映像があるし、より刺激的に表現されているので、
ここまで原作と離れてしまうのかと思ったところもありましたが、
原作者の思いはちゃんと伝わってきました。

クローンと人間の差ってどこにもない。
恋もするし、好きな人と一緒に暮らし、家族を作りたくもなる。
臓器が欲しいなら、臓器だけ作ればいい。
心なんていらないって言っていた恭子の言葉が虚しく響きました。

2005年発表のカズオ・イシグロによる長編小説。
臓器提供のために生み出された子供たちが、短い生涯をどのように生きたか、
人間とは何かを問われた一冊でした。



2010年にイギリスで映画化されたそうです。
レンタルビデオ屋さんにあったら、借りてみようかしら。







河津桜が終わったころから、我が家の紅梅にも、
また野鳥がよくやってくるようになりました。
室内からガラス戸越しにメジロやヒヨドリを写しましたが全ボケです
(2021.03.05撮影)



オンシジウム・トゥインクル ‟フレグランスファンタジー”(手前)
とキンギアナム(奥)
花が大分終わったので、小さな花瓶に挿しました。
まだよい香りがします。
(2021.03.01撮影)

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (tona)
2021-03-10 12:35:09
こんにちは♪

晴れましたがまだ寒いですね。
カズオ・イシグロを読み込まれましたね。凄い!
私は映画で『日の名残り』を2度も見ました。
イギリスのああした屋敷内の様子や景色はアガサ・クリスティのポアロなどのドラマで随分見てきました。
旅行では内部までわかりませんから。結構お屋敷が立派でも内部は不便な生活なのですね。
小説も実にミステリっクな国民性ゆえに日本と全然違います。
ノーべル賞作家は様々な問題作を提供してくれますね。
動くメジロをよく撮っておられます!
返信する
Unknown (hiro)
2021-03-10 14:51:32
tonaさん、こんにちは~♪
朝方は風が冷たく寒かったのですが、お昼ごろには暖かくなったので
庭に出て、庭仕事や花の写真を撮っていました。
映画を3度も見たのですか。
私は本作のドラマ(10回連続)を3回、小説は今2回目を読んでいます。
同じドラマや小説を、それほど期間を置かずに、見たり読んだり
するなんて初めてです。
アガサ・クリスティの小説は何冊か読みましたが、
ドラマは見たことがありません。
イギリス人はミステリックな国民性なのですか。
そういえば高校生の頃読んだ「嵐が丘」もミステリックだったような気がします。
返信する
カズオ・イシグロ (Saas-Feeの風)
2021-03-10 14:54:17
実はSaas-Feeの風の従弟のいとこなのですよ。
血はつながっていないので、他人ですね。
会ったことはありませんし、著書も読んでないですしね。

メジロはピントが外れて残念でしたね。
カメラのピント設定にスポットがあると思います。
それに設定すると狙ったメジロにピントが合いますよ。
返信する
カズオ・イシグロ (Saas-Feeの風)
2021-03-10 21:28:36
hiroさん、こんばんは。
書き込み途中で内容を確認しないまま投稿してしまいました。

長編小説がテレビドラマ化されていることも知りませんでした。
かなり辛そうなストーリーのようで、小説も最後まで読み切れるかなと思いました。
眼が悪くなりましたしね。

ピントの件ですがピントターゲットが三種類くらい設定できるようになっていませんか。
普段はどこにピントを合わせるかを自動的に設定するようになっていると思います。
それだと思わぬところにピントが合い、狙う被写体がぼやけることになります。
或るものにピントを合わせるにはピントターゲットをスポットで決めることが必要です。
カメラによっては碁盤目をモニターに出して
その碁盤目のどこにピントターゲットを置くかを
設定できるようになっています。
それを使うとファインダー(モニター)の中心にメジロを持ってくるのであれば
ターゲットを碁盤目の中心に設定します。
そうするとその中心にピントが合うようにカメラが動きます。
碁盤目の端のほうに特に写したいものを置く場合には
そこにターゲットを設定すると、ほかのところにピントが合うことなく
狙ったその端にピントが合います。
マニュアルを確認してピントを合わせる機能を
お調べになってくださいね。

長々と失礼しました。
返信する
Unknown (hiro)
2021-03-11 05:39:55
Saas-Feeの風さん、おはようございます♪
カズオ・イシグロさんと従弟のいとこなのですね。
血の繋がりはなくても誇らしいことですね。
5歳の時、お父様のお仕事で渡英し、
成人してから英国国籍を取得されたそうですね。

メジロは蜜をついばんでいる際もピョンピョンと
場所を移すし、近づくとすぐに飛び立つので
室内から撮りましたが、ピントを合わせる時間がありませんでした。
ありがとうございました。
返信する
Unknown (hiro)
2021-03-11 06:08:59
Saas-Feeの風さんへ、
昨夜、パソコンを消すのを忘れてしまって、
新たにコメントが入っていることに、気が付きませんでした。
本では3人の関係がさらっと書かれているのですが、
ドラマでは美和がすごくイヤな女に描かれていたり(事実そうなのですが)
友彦の優柔不断ぶりにもイライラさせられる部分もありましたが、
とても重いテーマを持ちながらも、切ないラブストーリーの
ようでもあり、ドラマは3度も見てしまいました。

仰るようにピントはオートで設定しているので
その都度対象物にピントを合わせなければなりません。
マニュアルを確認したところ、ピントを設定する方法が
何通りもあることが分かりました。
機械音痴なので、すべてオートで撮っていましたが、
少しずつ勉強していきたいと思います。
ありがとうございました。
返信する
Unknown (zooey)
2021-03-13 21:47:57
「わたしを離さないで」も「日の名残り」も
本を読み、映画を観ています。
「わたしを…」の映画の感想はこちらに書いていますので、よかったらご覧ください。
どうにも不条理な、後味の悪い作品でした。
https://blog.goo.ne.jp/franny0330/e/8ba35b68065962bb47f763cdc3264d53
返信する
Unknown (hiro)
2021-03-14 10:15:58
旅をしながら過ぎ去った日々を振り返るお話、おはようございます♪
日の名残りは昨年の8月に読んだばかりなのですが、
イギリスの執事が、旅をしながら過ぎ去った日々を振り返るお話だったと
思いますが、あまり印象に残っていません。
もう一度読んでみたら感じ方も変わるかもしれません。
zooeyさんのブログ、是非拝見したいと思います。
返信する

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