正月休みに、なぜかバーボンを買ってきた。
フォアローゼスのブラックラベルである。世界で一番ウマいバーボンだと信じていて、血気盛んな頃(20年くらい前のことだ)は週に5日ほど呑んでいた。
その頃は、バーボンを呑む自分を
「オレ、カッコいいかも」
なぞと思っていたフシがある。
そういうことを思い出すと、顔から火が出るような思いをするのだけど、しかしこのバーボンのウマさは本物だ。
どこまでも濃く、甘いのである。
そういう想い出深い酒を、新年早々、久しぶりに呑んでみる。
燻蒸香が鼻から抜けていき、舌の上にはハチミツのような甘味がわずかに残る。1分もすると酔いが回り、物事の角がとれて、あたりが柔らかくなってくる。
そうして数々の想い出がよみがえってくる。魔法の時間の始まりである。
今年はますます、いろんな分野で文作をしていくことになると思う。しかし表面に出てくる(発表する)文章の背景には、自分の膨大な記憶が埋め込まれている。
表面に現れたものはあくまでもタグなのだ。それらがシナプスのように、20年も30年もかけてリンクしていくのだ。
結局、説得力を持つ文章というのは、自分の体験からしか書けないのだと思う。そのためには自分の内なる声を聴くことになるのだが、それにはこのダウナー系バーボン、フォアロゼのブラックが最適なのだ。