『電脳カフェねじまき鳥』見上げてごらん~にトラックバックです。九ちゃんのあの曲、本当にいいですね。切々と・・・という表現がぴったりくるほど心に染みます。
nezimakiさんのおっしゃる通り、春は様々なモノが柔らかくなる時期です。特に初春。ちょっと郊外に行って山の稜線を眺めると、こないだまで枯れた木立が見えていた部分がぼんやりとしています。まだ葉が出る前、芽吹いている状態ですね。母親はこの季節が一番好きだとよく言ってました。
モノの輪郭が柔らかいというのは、大変に穏やかな気分になれるものです。
まだ酒の味が分からなかった頃のこと。これでは格好悪いとある日からウィスキーを飲む訓練を始めました。「なにを馬鹿な」と右党の方はおっしゃるでしょう。まさしくその通り。酒は訓練によって飲めるようになるのです(消化酵素がない方は別ですよ)。国電がJRに変わったばかりの新宿駅構内では、余剰人員の整理ということで職員がバーテンダーとなり、スタンドバーを始めました。毎日の学校の帰りに、そこでサントリーオールドをストレートで一杯、肴はなしという規制を自ら作って通い始めたのです。
最初の頃はまあ不味かったこと。肴がないから味がダイレクト。誤魔化しが効かない。ムセる。苦い。それでも頑張って通いました。通勤帰りのサラリーマンたちも次第に集まるようになり、店内はなかなかの盛況です。
何日か経ったある日、グビリグビリと飲んでいると、ある変化が起きました。物音のボリュームが下がり、照明が少し暗くなり、あらゆるモノの角が柔らかくなったのです。「ああ、これなのか」と思いました。「これがウィスキーというものなんだ」
つまりは酔った瞬間ということですが、ウィスキーの酔いは他の酒とはちょっと違うのです。それまでは新宿駅の雑踏に少しイライラし、だらしなく酔ったサラリーマンを疎ましく思い、「お前らもっと静かにせい!」なんて感じもあったのですが、そんな下らないイライラが消え失せてしまう。そこからウィスキーが大好きになりましたね。あらゆるモノの角を丸くしてくれる、これこそウィスキーの最大の魅力です。
あららら、酒飲みの話しになってしまった。失敬しました。