あまり詳しくは書けぬことでござるが。
ご近所さんに、大変に騒々しい青年が住んでいる。
激昂しやすいお人で、ケータイ電話で相手を叱りつけ罵倒することしばしば。周囲の目を気にするということがないらしく、いつも玄関を出て外でケータイを使うのですね。なんとなれば、ここらの住人はみんなその怒鳴り声を大人しく拝聴している次第であります。
その内容はというと、これが殆ど色恋沙汰の騒ぎなのでござる。
「分かったよ、俺がギセイになればいいんだろう!」
「お前が謝れよお前が謝れよ」(楽譜風に表すとcresc.fffね)
実際に恋人が訪ねてきているときの喧嘩は、それはもうすごい騒ぎとなる。がしゃんバリリと何かが投げられ、ドアから女性が飛び出し、ネコはかんぶくろに押し込まれる。好奇心の強いお方なら、ずっと聞き耳を立てたくなるかもしれないよ。
ところで、深川の江戸資料館で知ったことなのですが。
江戸の庶民というのは、殆どが長屋に住んでいたらしいのだが、これは隣家との境の壁が非常に薄い。土壁一枚なのである。だからほんのちょっとの隙間があれば、中の様子はすべて丸見えだったのですな。当然のぞき見盗み聞きが発生して、
「あそこの夫婦はじき夜逃げしそうだ」
「あそこの夫婦の○○は××」
などと、うわさ憶測をするのが庶民の楽しみだったそうな。
他人の不幸は蜜の味。喧嘩を聞きつければ「もっとやれもっとやれ、うひひひ」となるのだろうなあ。
しかし僕は、きわめてセンシティーヴに出来ている男でありますヽ(´▽`)/ 喧嘩やら諍いは大嫌いでござる。くだんのご近所さんの怒鳴り声も、テレビの音を大きくしたりして、ひたすら忍の一字で耐え忍んでいる。時には痴話喧嘩の現場を目の当たりにすることもあるのだが、恋人らしい女性が本気泣きしているところなどを見ると、どうにもいや~な気分を味わうことになる。
テレビを見ても新聞を読んでも、不幸な悲惨な記事ばかりが取り上げられている。そのほうが世論のウケがいいからですね。たまに仕事を休んだときなど、午後のワイドショーでもご覧なさい。主婦向けに制作されたあのような番組こそ、“他人の不幸は蜜の味”を高らかに謳ったものですぞ。報道機関の堕落もここに極まれり、だ。
あああ、激昂してしまった。冷た~いアイスでも食べようかなっ。ふんふんふ~ん♪