最近、新聞の岩波書店広告に「モモ」が載っていた。
当初、なかなか自分の「時間」が思うようにならない
コロナの時代なので改めて「モモ」を読む人が出て
きたのかと思った。
ところがNHKで「100分de名著=NHK」という番組が
放送されそこで「モモ」が取り上げられたのだったと
知った。
「モモ」は日本では1976年に岩波から第一刷が発行され
たミヒャエル・エンデ作大島かおり訳の「岩波少年文庫」
の一冊である。小学5,6年以上を読者と想定している。
訳者のあとがきに
「時間がない」「ひまがない」ーこういうことばを
わたしたちは毎日聞き、自分でも口にします。
・・中略・・
けれど、それほど足りなくなってしまった「時間」
とはいったいなになのでしょうか?
機械的にはかることのできる時間が問題なのでは
ありますまい。そうではなくて人間の心のうちの
時間、人間が人間らしく生きることを可能にする
時間、そういう時間がわたしたちからだんだんと
失われてきたようなのです。
このとらえどころのない謎のような時間というもの
がこのふしぎなモモの物語の中心テーマなのです。
とある。
今年の1月から2月にかけてNHKドラマで
「心の傷を癒すということ」を観た。
阪神・淡路大震災から25年を機にNHK大阪が
造ったドラマである。
自ら被災しながらも被災者の心のケアに
つとめた精神科医をモデルに妻との「夫婦の
絆」、寄り添い続けた被災者との「心の絆」を
描いた作品であった。
道半ばの夫をがんで失ったあと、妻は1人バスに
乗り、バックから一冊の本を取りだした。
「モモ」であった。
「モモ」についての説明はない。
誰も気づかなかったかもしれない情景であった。
でも演出家の気持ちは忖度できた。
心に残った演出であった。