かなり前のことになるが、ワイドショーの司会者が、「自分は癌を患っているが、負けずに癌と闘う・・・」とテレビで宣言した事があった。
あの辺りが嚆矢ではなかったか、最近やたらと「芸能人」たちが「自分は癌だ。」と、はやりの言い方をすれば、「カミングアウト」している。
何度も何度もテレビカメラの前で、病と闘う自分を見せたりするのだが、見るたびにやせ細っていくのを見ると、私ならずとも世間の人は、「もうダメだね。持たないね。」と思うだろう。
こういう風潮のときにたまたま見た朝のニュースで、「ああ、こういう人の心情なら共感できるなあ。」と思わされた偶発的な出来事を報ずるニュースがあった。
それは、先日降った大雪の日の出来事だった。あるテレビ局の撮影スタッフが通りかかった田舎町で、どこかから助けを求めるような声を耳にしたのだった。
ぐるりを見渡しても降り積もった雪だけで真っ白だったが、声のする方向に微かに人の頭のようなものが見えた。声をかけると返事があった。
腰まで降り積もった雪をかき分けてその方向に進むと、老女が雪にすっぽりと埋まっていてかろうじて肩から上が雪の上に出ている程度だった。
撮影スタッフは老女の周りの雪を掘って助け出した。一体何があったのかと聞くと、大雪だったので朝心配して庭先に出て屋根の雪を見上げた途端、ザーッと雪が落ちてきて一瞬で埋まってしまったのだ、と言う。
「運良く頭は埋まらなかったので、声をふりしぼって助けを求めていたら、あなた方が通りかかったんです。助かってよかったです。でも、あのまま誰も来なかったら、それはそれで、私の運命もここまでかなと思っていました。」
見たところ、80歳前後の老女だったが、かくしゃくとした話し方で、サラッと言ってのけたには、私は見ていて思わず「ホオォォ・・」と感心したのだった。
人間の生死の境目など、方程式で決るものでもないし、何がどうなるのか、どこでどうなるのか分かったものではない。高額な薬を飲んでも、最先端の医療手術を受けても助かることもあれば、ダメなこともある。
そのくらいに考えていれば、いざ大病に冒されたとしてもうろたえることもないのではと思うのだが。
芸能人の中には、自分が病気になってどうやって克服したのか、出るとこ、出るとこで吹聴して廻る人がいた。自分はこうやって病気を克服し、健康を維持しているのだと自慢するわけだ。
最近、見かけなくなったなと思ったら、どうも体調が芳しくなく、体重も30キロ近く減ったそうだ。
格闘技で鍛えた体でも、女性独特の乳癌には冒されることはあるだろう。特にそれ自体は何も不思議ではないのだが、そうなったこと、そして手術を決断したことを逐一公にして、またそれを大きく報道する芸能マスコミ。
全国の女性達、乳癌なんて怖くないんだよ、心配しなくてもいいんだよと、勇気と安心と希望を与えるのが自分に与えられた使命だとでも感じているのだろうか?
今朝も、昨年ニューヨークで華々しくミュージカルデビューをした、日本のCM俳優がマスコミ各社に伝えてきたという、「胃がんの手術を受けて療養中」という直筆のファックスのことを大々的に繰り返し伝えていた。
「妻が受診するように勧めてくれた人間ドックで、早期の胃癌を見つけていただいた・・」そうで、「現在、療養させて頂いて・・」いるそうだ。
「病院を紹介してくれた娘には感謝している」そうで、何より「この出来事が、検診を中々受けられない方達への『受診のきっかけ』となれば」と願っているとツイッターとやらで、呟いているそうだ。
マスコミ各社への『報告』では、「このために、来月からNYで公演予定のミュージカルが少し遅れることをご理解頂けたら幸い・・」だと伝えていたが、NYでこの人の出るミュージカルを楽しみにしている視聴者なんて一体いるんだろうか?
そもそも、去年の4月に公演が始ったとき、ニューヨークタイムズが、ニューヨークポストが、ウォールストリートジャーナルが、デーリーニュースが、そろって彼の演技を酷評していたことは、日本では遠慮してほとんど報道されていない。
“His diction is not always coherent,” The New York Times said, while The New York Post called Watanabe’s English “rough.” “His solo turn, ‘A Puzzlement,’ is just that — a garbled mess,” it added.
(彼の話し方は理解し難かった。NY Times )(彼の英語は荒っぽくて、独唱のところは酷いもので、もう意味不明で滅茶苦茶だった。 NY Post)
『彼の独唱は耳障りだった』、『セリフが意味不明で、めちゃくちゃだ』、『演技がオーバーで、ちょっと迷惑モノだった』などなど・・惨憺たる批評は、今でもネットで検索すると記事が閲覧できる。
それでも、営業面で色をつける必要があったのか、ナントカ賞にノミネートはされていたようで、彼にとってもただのCMタレントではなくなる、輝かしい栄光となっている。
今回のカミングアウトもその営業の一環であったに違いない。
達観した者に言葉は要らない。
それは、プライバシーを切り売りして自己顕示欲を満たそうとする人たちとは、まるで身分が違う雪の中の老女が教えてくれた。
あの辺りが嚆矢ではなかったか、最近やたらと「芸能人」たちが「自分は癌だ。」と、はやりの言い方をすれば、「カミングアウト」している。
何度も何度もテレビカメラの前で、病と闘う自分を見せたりするのだが、見るたびにやせ細っていくのを見ると、私ならずとも世間の人は、「もうダメだね。持たないね。」と思うだろう。
こういう風潮のときにたまたま見た朝のニュースで、「ああ、こういう人の心情なら共感できるなあ。」と思わされた偶発的な出来事を報ずるニュースがあった。
それは、先日降った大雪の日の出来事だった。あるテレビ局の撮影スタッフが通りかかった田舎町で、どこかから助けを求めるような声を耳にしたのだった。
ぐるりを見渡しても降り積もった雪だけで真っ白だったが、声のする方向に微かに人の頭のようなものが見えた。声をかけると返事があった。
腰まで降り積もった雪をかき分けてその方向に進むと、老女が雪にすっぽりと埋まっていてかろうじて肩から上が雪の上に出ている程度だった。
撮影スタッフは老女の周りの雪を掘って助け出した。一体何があったのかと聞くと、大雪だったので朝心配して庭先に出て屋根の雪を見上げた途端、ザーッと雪が落ちてきて一瞬で埋まってしまったのだ、と言う。
「運良く頭は埋まらなかったので、声をふりしぼって助けを求めていたら、あなた方が通りかかったんです。助かってよかったです。でも、あのまま誰も来なかったら、それはそれで、私の運命もここまでかなと思っていました。」
見たところ、80歳前後の老女だったが、かくしゃくとした話し方で、サラッと言ってのけたには、私は見ていて思わず「ホオォォ・・」と感心したのだった。
人間の生死の境目など、方程式で決るものでもないし、何がどうなるのか、どこでどうなるのか分かったものではない。高額な薬を飲んでも、最先端の医療手術を受けても助かることもあれば、ダメなこともある。
そのくらいに考えていれば、いざ大病に冒されたとしてもうろたえることもないのではと思うのだが。
芸能人の中には、自分が病気になってどうやって克服したのか、出るとこ、出るとこで吹聴して廻る人がいた。自分はこうやって病気を克服し、健康を維持しているのだと自慢するわけだ。
最近、見かけなくなったなと思ったら、どうも体調が芳しくなく、体重も30キロ近く減ったそうだ。
格闘技で鍛えた体でも、女性独特の乳癌には冒されることはあるだろう。特にそれ自体は何も不思議ではないのだが、そうなったこと、そして手術を決断したことを逐一公にして、またそれを大きく報道する芸能マスコミ。
全国の女性達、乳癌なんて怖くないんだよ、心配しなくてもいいんだよと、勇気と安心と希望を与えるのが自分に与えられた使命だとでも感じているのだろうか?
今朝も、昨年ニューヨークで華々しくミュージカルデビューをした、日本のCM俳優がマスコミ各社に伝えてきたという、「胃がんの手術を受けて療養中」という直筆のファックスのことを大々的に繰り返し伝えていた。
「妻が受診するように勧めてくれた人間ドックで、早期の胃癌を見つけていただいた・・」そうで、「現在、療養させて頂いて・・」いるそうだ。
「病院を紹介してくれた娘には感謝している」そうで、何より「この出来事が、検診を中々受けられない方達への『受診のきっかけ』となれば」と願っているとツイッターとやらで、呟いているそうだ。
マスコミ各社への『報告』では、「このために、来月からNYで公演予定のミュージカルが少し遅れることをご理解頂けたら幸い・・」だと伝えていたが、NYでこの人の出るミュージカルを楽しみにしている視聴者なんて一体いるんだろうか?
そもそも、去年の4月に公演が始ったとき、ニューヨークタイムズが、ニューヨークポストが、ウォールストリートジャーナルが、デーリーニュースが、そろって彼の演技を酷評していたことは、日本では遠慮してほとんど報道されていない。
“His diction is not always coherent,” The New York Times said, while The New York Post called Watanabe’s English “rough.” “His solo turn, ‘A Puzzlement,’ is just that — a garbled mess,” it added.
(彼の話し方は理解し難かった。NY Times )(彼の英語は荒っぽくて、独唱のところは酷いもので、もう意味不明で滅茶苦茶だった。 NY Post)
『彼の独唱は耳障りだった』、『セリフが意味不明で、めちゃくちゃだ』、『演技がオーバーで、ちょっと迷惑モノだった』などなど・・惨憺たる批評は、今でもネットで検索すると記事が閲覧できる。
それでも、営業面で色をつける必要があったのか、ナントカ賞にノミネートはされていたようで、彼にとってもただのCMタレントではなくなる、輝かしい栄光となっている。
今回のカミングアウトもその営業の一環であったに違いない。
達観した者に言葉は要らない。
それは、プライバシーを切り売りして自己顕示欲を満たそうとする人たちとは、まるで身分が違う雪の中の老女が教えてくれた。