10月5日に日本を発って、バルセロナに行ってきました。
IUCN(世界自然保護会議)に参加するためです。
成田からパリのシャルルドゴール空港まで約12時間半。
そこからさらにバルセロナまで約2時間。
バルセロナのホテルに着いたのは、日本時間の午前4時でした。
翌日は、現地の日本人ガイドの方に引率されて、
駆け足であちこちまわりました。
まずはモンジュイックの丘。
向こうに見える海は地中海です。
はじめて見る地中海に、ちょっと感激しました。
地中海を見て、写真を撮って、バスに戻って次に向かったのは、
オリンピックスタジアム。
1992年のバルセロナオリンピックの舞台です。
左側に見える塔のようなものが聖火台。
アーチェリーの矢が放たれて、この聖火台に聖火がともったのです。
あの時は今は亡きフレディ・マーキュリーが元気いっぱい
♪バ~ルセロ~ナ~!♪
と歌っていたなあ、などと感慨にふけりました。
駆け足ツアーで次に向かったのはグエル公園。
ガウディがスポンサーであったグエル氏の依頼で、
イギリス田園風の住宅地を計画したのですが、
資金不足で計画は中断され、公園になりました。
グエル氏の家と、ガウディが晩年住んだ家、
それにチャペルがあります。
正面の大きな柱の上は広い庇のようになっていて、
周囲にぐるりとベンチがめぐらされています。
これは「馬まわし」
馬車がここをぐるりとまわって、進行方向を変えたそうです。
フルートの音色が美しく響いていました。
グエル公園のシンボルのとかげ。
このトカゲの口から出た水は・・・
この口を経て・・・
一番下にあるこの場所まで落ちてきます。
ガウディは、雨水を導いてためて、
この敷地内の植栽の水やりなどに使おうと考えていたそうです。
大きな柱の上の中央広場は、
人間の体にあった携帯の「波状ベンチ」で囲まれています。
黄色っぽいベルト状に見える部分が、
ちょうどよい感じで越しにあたり、
とても座り心地のよいベンチです。
中央広場からはバルセロナ市内と地中海が見渡せます。
のんびりベンチに座って景色を楽しみたかったのですが、
駆け足ツアーで時間がないため、
座って感触を確かめて、景色を眺めて移動しました。
ちょっと心残りです。
グエル公園内にあるガウディの住居を見学しました。
(建物の外観を撮影するのを忘れました・・・。)
門を入るとすぐ左側に、緑のアーチがありました。
バルセロナは、朝夕はかなり涼しいのですが、
日中は半袖でも汗ばむほどの暑さでしたが、
このアーチに近づくと空気がひんやり心地よいこと!
条件が許すなら、緑のカーテンだけでなく、
こうした緑のアーチ(トンネル)もよいなあ、と
あらためて思いました。
左側は、設計の図面を引く机。
機能的でしかも美しい机でした。
右側はガウディの寝室。
ベッドの大きさからしても、小柄な人だったようです。
ガウディ作の家具も、とても魅力的です。
曲線の美しさに心惹かれました。
階段は高さが日本のものより低いのですが、
角の面がやわらかく丸くシェイプされていて、
どの建物でもとても歩きやすいと感じました。
「なんて美しいんでしょう!」と思わずつぶやいた照明。
色ガラスからこぼれる光が幻想的です。
右側はドア。
グリーンのガラスの美しいこと。
窓には可動ルーバーのブラインドが取り付けられていて、
光と風をコントロールします。
しかもこのブラインド、
あけた時に建物に寄り添う形で開くように作られています。
同行した緑のカーテン応援団理事長が、
「やられた!」
と感心することしきりでした。
駆け足ツアーの最終地はサグラダ・ファミリア。
ここで現地ガイドさんとお別れして、
十分とは言えませんが、時間をかけて見学しました。
バルセロナに自分が行くなんて考えたこともなかったので、
知識もなく、唯一知っていたのがサグラダ・ファミリアでした。
ここだけは一度見てみたい建築でした。
「生誕のファザード」を見上げると、その装飾の細かさ、複雑さに、
驚きを禁じ得ませんでした。
6体の「楽器を奏でる天使」像と9体の「天使の合唱隊」は、
日本人の外尾悦郎さんが手がけたものです。
エレベーターで塔の途中まで上がることができました。
降りるのは階段。
手を伸ばして、塔の先端方向の写真を撮ってみました。
階段を下りる途中で、所々小さなバルコニーのような場所があります。
出て下を見下ろすと地上の人々が米粒のように小さく見えて、
「ひぇ~っ!!」と思わず足がすくむ思いでした。
階段からは、建設中の部分も見下ろすことができます。
塔の先端のフルーツのような装飾がかわいかった♪
階段を下りていると、手すりや壁面にいろいろな言語で、
落書きされているのが目立ちました。
その中に、日本語も!
「この、ばかたれ!」と残念でなりませんでした。
生誕のファザードの塔を降りると、聖堂に向かいます。
ここも現在工事中です。
天井部分の装飾に施された色がまた美しい!
途中にある階段も何とも言えず美しい曲線の螺旋階段です。
そして、ステンドグラス!
この光に包まれて、何時間でもこの場所にいたかった・・・。
「生誕のファザード」の反対側、
「受難のファザード」もほとんど完成していました。
地下には博物館があり、
工作室をガラス越しに見学することもできました。
このおとぎの国のような建物は、
「サグラダ・ファミリア聖堂付属学校。
サグラダ・ファミリアの建設現場で働くお父さんたちを、
子どもたちが近くで一日中遊んで待っているのを不憫に思ったガウディが、
父親の仕事中、子どもたちが勉強できるようにと作ったそうです。
ガウディの温かい気持ちがそのままあらわれているような建物です。
建築に関してはまるっきりの素人ですが、
何もかもに圧倒されました。
もっと時間をかけて(少なくとも半日ぐらい)見たかったです。
ガウディは「雨のみち」もしっかり考えていました。
さすがです。
上の2枚の写真は、新しく作っている部分の「雨のみち」ですが、
生誕のファザードにも、雨のみち」の入り口が見えました。
バルセロナの守護聖女エウラリアの遺骨が眠る大聖堂。
礼拝堂やステンドグラス、回廊の美しさに驚きました。
ファザードは修復中で「これ、教会?」と思うような、
赤いシートで覆われていました。
私は特に信仰を持っていませんが、
この空間にたたずむと、不思議と敬虔な気持ちになりました。
帰る前の日の夕方に、カテドラル前の広場を通りかかると、
のみの市が出てにぎわっていました。
カテドラル前の階段にはたくさんの人が腰をかけ、
ギターを抱えた男性の魅惑的な歌声に聴き入っていました。
この方が2日目の駆け足ツアーの現地ガイド、石井さん。
ハスキーな声で辛口の奥の深いガイドをしてくださいました。
ここはサン・パウ病院。
銀行家パウ・ジルの寄付をもとに建てられた病院で、
やはり、世界遺産に登録されています。
美しい建物に囲まれたよい環境なら、
病気の方がより元気になるだろう、
という考えで、建てられたそうです。
モンタネールの代表作の一つで、
病院とは思えない豪華な装飾を施された40を超える病棟が建っています。
各病棟は地下で繋がっていて、
雨の日も患者さんが濡れずに病棟を行き来できるそうです。
中庭から受付のある建物を振り返ると、
入り口のアーチの向こうに、額縁に入ったように
サグラダ・ファミリアが見えて、思わずため息が出ました。
美しく個性的な建物ばかりで、
病院というよりはテーマパークのような印象です。
日本の病院は無機質なイメージがありますが、
そこで過ごさざるを得ない患者さんの精神面も考えたデザインに、
深い感銘を受けました。
小児科病棟と思われる建物の前には、
色鮮やかでかわいい遊具がある小さな公園もあり、
子どもたちが遊んでいました。
とにかく次から次へと見ては移動するツアーでしたが、
おかげでわずかな時間でもたくさんのガウディの作品に
出会うことができました。
ここはカサ・カルベット。
現在も個人が住んでいて、1階は高級レストランになっています。
かなりの高級物件だそうです。
建物を見上げていたら、窓の一つに女性の姿が見えて、
「う~ん、あの人がお金持ちか・・・!」
となにやら感心してしまいました。
ここはグエル別邸の龍の門。
のちにガウディのパトロンとなったグエル氏が、
初めてガウディに注文したのがこの建物の門衛館や厩舎、
馬場、塀、門だったそうです。
右上の高いところにあるオレンジを龍が守っている、
という斬新なデザインです。
そしてここはカサ・ビセンス。
依頼主の美センス氏がタイル製造業者だったため、建物には化粧タイルが多用されています。
れんがと化粧タイルの組み合わせがすばらしい建物です。
邸内にシュロの葉がしげっていたので、
ガウディは門の鉄柵にシュロの葉のモチーフを採用しました。
持ち主は売りに出しているのですが、あまりの値段の高さと、
世界遺産になっているため、自由に手を加えられないことから、
買い手が見つからないとのことです。
午前中の駆け足ツアーのあと、IUCNの会場に行って打ち合わせを終え、
夕方駆け込んだピカソ美術館の中庭からの眺め。
ゴシック地区の路地に面した建物は、なかなかすてきでした。
作品が少年時代のデッサンから年代を折って展示されているので、
その作風の変貌を見ることができました。
閉館の8時ぎりぎりまで粘ってピカソに触れ、通りに出ると、
路地は昼間とはまるで違う雰囲気でした。
人通りが減り、店が次々にシャッターを下ろすと、
旅人には少々不安な感じで、急いで大通りを探しました。
駆け足ツアーのバスの車窓から見ていて、ぜひとも訪れたかったカサ・ミラ。
3日目の午前中、少しだけ時間があったので駆けつけました。
波打つ壁面と流動するような天井を持った集合住宅で、
やはり世界遺産です。
エレベーターで最上階に上がると、そこは博物館になっていました。
れんが造りのアーチが屋根の重みを支える、不思議な空間に、
ガウディの仕事が紹介されています。
屋上に出て、まず目についたのはこの不思議な屋根。
実際はもっと美しい緑色です。
ワインのボトルを割ってそのままはめ込んであり、
ボトルの口の部分やわれてぎざぎざととがった部分もそのままです。
何とも不思議なたくさんのオブジェは、通気口や煙突の役割を果たしています。
煙突の間からは、サグラダ・ファミリアが見えました。
階段を下りると、住宅部分の一部が20世紀初頭のスタイルで公開されています。
ここは居間です。
ここはダイニングルーム。
大きな窓から明るい日ざしが差し込んでいます。
ダイニングの窓からの眺め。
ここに住んでいた人は、どんな思いでこの通りを見ていたのでしょう。
ベビーベッドのある寝室とキッチン。
メイド部屋と、ミシンやアイロンがけをする部屋。
メイド部屋には窓がありません。
一つ一つの部屋は明るくシックで、
メイドさんを使う裕福な家庭の生活をかいま見ました。
ある銀行がこの建物を買い取ったため、
就寝契約を結んでいなかった住人は立ち退かざるを得ず、
現在はわずかに3世帯が生活しているそうです。