フルートおじさんの八ヶ岳日記

美しい雑木林の四季、人々との交流、いびつなフルートの音

「桜と日本人」小川和佑著

2009-03-23 | 濫読

桜シーズンがきたので、書店で桜に関する本を読んでみた。「江戸後期の園芸文化の最盛期には約4百種類もの作品あったとも言われている。ーしかい、私たちは明治の文明開化以来、それらの多様な美しい桜の花のほとんどを忘れてすごしてきた。それでいながら、これほど春ごとに私たちの心を誘う桜とは、いったいなんであろうか」

「花の季節、私たちが桜と聞いて先ず思い浮かべるのは、ソメイヨシノというオオシマザクラとエドヒガンンの自然交配によって生まれた園芸品種である」

「花つき多さのため落花のさまは従来のヤマザクラなどの比ではなく、その霏々と散る感じが、歌舞伎の演出による散る桜によって増幅され、日本人特有の無常観をそそった。」「明治初頭のソメイヨシノの流行は日本の桜風景観を一変させ、凄惨なまでの落花の桜観に死の翳りをより深く忍び寄らせた。第二次大戦末期の『散華』の思想は、このソメイヨシノの落花によって発想された虚妄の思想といってもいいだろう。

「私たちはもうそろそろソメイヨシノの呪縛から解き放たれてもいいように思う。自然との優しい共生の中で、さまざまな桜を観、愛する、豊かな桜愛を育てていっても良いのではなかろうか。」

上野の桜