功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『歹路不可行』

2009-01-10 21:18:07 | カンフー映画:駄作
歹路不可行
英題:Fighting Duel Of Death/Don't Take the Wrong Way
制作:1981年

●本作は色々と資料の少ない作品で、知ってる役者が陳鴻烈ぐらいしか出てないミニマムな映画である。監督の王重光は傑作『七歩迷踪』を作り上げた人だが、顔ぶれを見る限り本作は十中八九台湾映画であることが察せられる。個人的にはプロデューサーとして名を連ねているトーマス・タンの存在が気になるのだが…(本作はIFDや通用の製作ではないし、いつもトーマス・タンの相方を務めているジョセフ・ライの名は、本作に無い)。
李小飛はヨタ者との揉め事で傷害致死を犯してしまい、現在は刑務所に収監されていた。彼の掌にある"忍"の刺青はムショ入りする前に妻から彫られたもので、「二度と同じような事を起こさないで」という彼女の思いが込められたものだった…っていうか、夫に刺青彫るなよ!(爆
てなわけで出所した李小飛、未だにヨタ者たち(リーダー格に李敏郎)との遺恨は残ったままだが、無事に愛する妻と息子の元に帰ってくることが出来た。幼馴染の崔守平とも久しぶりに再会したのも束の間、崔守平から「私の妻・陳麗雲がギャンブルにのめりこんでいて…」と相談を持ちかけられた。夫婦仲が冷え切っていたことも起因して反発を繰り返す陳麗雲。李小飛は陳麗雲の説得を試みるのだが、賭場の元締めである陳鴻烈は陳麗雲をモノにしてしまおうと企んでいた。
陳麗雲が捕まり自身も襲撃を受けた李小飛は、怒りの頂点に達して陳鴻烈のもとに乗り込む。しかし陳鴻烈のボスが李小飛と刑務所で知り合った馬沙だったおかげで、どうにかこの一件は手打ちで済むことになる。ところが崔守平が事故死し息子も亡くなり、全てを失った陳麗雲は絵に描いたような転落人生を歩んでいく事になるのだが…。
驚いた事に、ストーリーはここから陳麗雲の復讐物語へと方向転換していくのだ。
普通なら馬沙が裏で悪事を働いていたとかいう展開になりそうなものだが、最後まで馬沙はいい奴のまま。物語中唯一純粋な悪人だった陳鴻烈が死んでからは作品そのものがグダグダになり、復讐物語のせいで完全に失速してしまっている。これで李小飛・馬沙・陳麗雲のうち、誰か1人でも感情移入のできるようなキャラクターであれば救われたかもしれないが、そちらに関しても散々な結果となった。
功夫アクション的にはそれほど見どころも無く、ラストでの李小飛VS馬沙の対決もかなり短い。『七歩迷踪』ではあれだけ濃厚な功夫アクションを見せていたのに、現代劇ということで王重光も肩に力が入りすぎてしまったのだろうか?ちなみに本作には、『七歩迷踪』でラスボスを務めた常山も出演している。馬沙の手下として後ろにチラチラと登場するのだが、見せ場といえるような場面は何一つありませんでした(同じ監督の作品なのに…)。