功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『忍者』

2009-01-17 21:32:11 | 女ドラゴン映画
「忍者」
原題:終極忍者/戰神再現
英題:Lethal Ninja/The Wild Ninja
制作:2004年

▼かつて、香港映画にニンジャ映画というジャンルが存在した。
アメリカでのニンジャブームに便乗する形で産声を上げた香港ニンジャは、恐るべきポテンシャルを持つ羅鋭(アレクサンダー・ルー)が闘い、フィルマークが製作したゴミ映画の数々で(良くも悪くも)一躍有名になった。しかし時が移り変わると共に香港ニンジャは衰退し、今ではニンジャ映画という存在そのものを知らない香港映画ファンも増えてきてしまっている。そんな現代において、久々に香港ニンジャを見ることが出来るのが本作である。

■日本との合作で作られただけあって、作品そのものはしっかりしている。
世界征服を目論む悪の組織の首領・李子雄(レイ・チーホン)は、科学者の手から万能ワクチンが入った箱を強奪する。しかしその箱を開けるには黄子華という売れないミュージシャンが鍵となっていたのだ。当の黄子華は何の事だかサッパリだが、彼を巡って伊賀忍者の黄聖依・くノ一の白田久子・李子雄の部下であるK1ファイターの魔裟斗の三者が三つ巴の戦いを繰り広げる。最終的に黄聖依の父・高雄(エディ・コー)が現れ、黄子華・黄聖依・白田は忍者の隠れ里へと逃げ延びた。
ここから忍者の隠れ里で黄子華たちの交流が描かれるが、ここで物語のテンションがダウンしてしまうのが残念だ。それから色々あって高雄がワクチンの奪取に成功するものの、敵の逆襲に遭って里は大きな打撃を受けてしまう。襲撃の中で高雄は死に、黄子華が自ら投降することで混乱に決着が付いたが、もちろんこのままでは終われない。黄子華を助け、高雄らの仇を討つために、黄聖依と白田は敵地へと向かうが、そこで意外な結末が待ち構えていた…。

▲本作は恐らく香港映画でも珍しい、真面目な正統派ニンジャ映画である。
香港ニンジャ映画といえば先にも挙げた羅鋭やフィルマーク作品を連想するが、これらはどこか杜撰な雰囲気の漂う作品ばかりで、香港ニンジャ映画=バカ映画という図式が今でも認知されている。
そんな中で正統派の香港ニンジャ映画となると、日本との合作で作られた『龍の忍者』『忍者&ドラゴン』、ショウブラの『少林寺VS忍者』『五遁忍術』くらいのものであろう(人によってはどれもバカ映画に見えるかもしれませんが…)。まだ私は未見だが、倉田保昭の『忍者外伝』などもギリギリ正統派のニンジャ映画といえるはずだ。
こうして見てみると、真面目な香港ニンジャ映画というのは非常にマイノリティであることが解る。本作はストーリーや演出にモタつくところがあり、ラストに関しても黄聖依と再会しないで、黄子華のモノローグで終わっていればスッキリできたと思っている。が、本作は一般的な香港ニンジャ映画のイメージである「バカ映画」ではないのである(必ずしも、という訳ではないのだが…ってどっちやねん・笑)。
しかし、正統派となった代わりに本作は大きな代償を払っている。本作が無くしてしまったもの…それは香港ニンジャ映画に存在した"いかがわしさ"だ!正統派の香港ニンジャとして挙げた『龍の忍者』『五遁忍術』、そして羅鋭のニンジャ映画には、えも言われぬいかがわしさが存在し、それが香港ニンジャ映画をより一層神秘的なものへと引き立たせていた。だが本作はその毒気がすっかり抜けてしまっており、なんとも味気無いものになっているのだ。完成度が高いのも良し悪し、である。

本作の武術指導を一手に引き受けたのは成家班出身の李忠志。おかげで劇中の功夫アクションは見応えがあり、特に中盤での高雄VS魔裟斗という異色の対決は興味深い。そういえば高雄は『孔雀王』で日本と香港の合作映画に出演し、『ポストマン・ファイツ・バック』ではニンジャに扮した経験を持つ。本作に高雄が出演したのも必然だったという事なのだろうか。
ちなみに成家班繋がりなのか、黄子華の借金を取り立てるチンピラに慮恵光(ロー・ワイコン)がカメオ出演している…のだが、残念ながらアクションは1つも披露していない。
実は慮恵光、日本が関わるといつもロクな事にならないというジンクスが存在する。『覇拳』では青竜刀を持たされて持ち味である足技が使えず、『マッスルヒート』では哀川翔の前座にされたりと、どちらのケースも慮恵光が宝の持ち腐れ状態に陥っている(『イントゥ・ザ・サン』はまだマシな方か)。もしも慮恵光がまた日本が関わる映画に出るなら、今度はもっと良い役で出て欲しいと切に願っています(涙