功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

迫れ!未公開格闘映画(終)『絶対王者ボイカ(Boyka: Undisputed IV)』

2017-10-31 18:17:01 | マーシャルアーツ映画:上
「絶対王者ボイカ」
原題:Boyka: Undisputed IV/Boyka: Undisputed
製作:2016年

▼香港映画界で下積み時代を過ごし、『人質奪還』で彗星の如く現れたスコット・アドキンス。今や次代の格闘スターとして確たる地位を築いた彼ですが、その地位を確立するのに一役買ったのがアイザック・フロレンティーン監督でした。
見応えのあるアクション演出に定評のあるアイザック監督は、初期の作品でチャド・マックィーンやドルフ・ラングレンといった既存のスターを起用。香港帰りのスコットを発掘し、以後も何度となくタッグを組んで傑作・佳作を撮っています。
 『人質奪還』でスコットに肩慣らしをさせたアイザック監督は、『デッドロックII』で監獄の格闘王・ボイカというキャラクターを創造しました。この役はスコットにとって当たり役となり、続編の『Undisputed III: Redemption』で主役に昇格したのです。
本作はその続編となるシリーズ最新作で、早期の日本公開が待たれる……と言いたいところですが、実はこの作品はNetflixで日本語版が配信済みだったりします(爆
そのため今回の特集で取り上げるのは不適当なんですが、ソフト化もTV放送も未定だしギリギリ未公開作扱いで良いかな?と、超強引な解釈でトリに持ってきてしまいました(でも本作と『III』の日本版は猛烈に欲しい!)。

■前作で自由の身となったボイカ(スコット)は、真っ当なファイターとして活躍していた。今日も必死に食い下がるエミリアン・デ・ファルコを下し、大きな格闘イベントへの参加資格を得ることができた。
だが戦いの末にファルコは死亡し、スコットは激しい罪悪感に苛まれる。ファルコの遺品の中には妻との写真があり、いたたまれなくなったスコットは彼女に謝罪すべく、一路ロシアへと向かった。
 ところが到着してみると、ファルコの妻は孤児院経営のためにマフィアから借金をしており、連中の経営するクラブで働かされていた。マフィアのボス(アロン・アブトゥブール)からは色目を使われ、孤児院には門番までもが張り付いている。
スコットは彼女に陳謝し、先の試合のファイトマネーを渡そうとするが、「それは血塗られた金よ」と拒絶されてしまう。そこでスコットは意を決し、借金の帳消しを賭けてマフィアの主宰する格闘試合に挑んだ。
 アロンから持ちかけられた三本勝負に身を投じるスコットと、次第に心境を変化させていくファルコの妻。やがてスコットはマフィアお抱えのトップ選手(ブラヒム・アチャバクフ)をも倒し、やっとの思いで三本勝負を制した。
これで借金は消え、スコットも今から帰国すれば例の格闘イベントにギリギリで間に合う。だが非道なアロンは更なる勝負を強要し、かつてスコットが収監されていた刑務所で新王者となった怪物(マーティン・フォード)を呼び寄せていた。
目の前で希望を握り潰されたスコットは、圧倒的に不利な状況で最後の戦いに臨む…!

▲本作はアイザック監督が製作に回り、トドール・チャプカノフという人が監督に就任。その点では若干の不安を感じていましたが、ド派手な格闘シーンとド直球のストーリーは今回も変わっておらず、シリーズの名に恥じない傑作アクションに仕上がっていました。
今回のテーマは「贖罪」となっており、今まで闘争本能の赴くまま戦っていたボイカが人のために立ち上がるという、実に印象深い内容となっています。
 本作のボイカは人間的に成長し、『II』で見せた凶暴性は影を潜めています。中盤では孤児院の子供たちに見守られながらトレーニングをするという微笑ましいシーンもありますが、大胆な行動力とラフな戦闘スタイルは健在。今回も縦横無尽に暴れていました。
ドラマに関してはアクションの邪魔をせず、それでいてキッチリと簡潔に描くアイザック監督の作風が継承されており、違う監督になっても違和感はほとんど感じられません。

 そして本命のアクションシーンですが、こちらは近年にわかに注目されているティム・マン(同じアイザック監督の『ニンジャ・アベンジャーズ』も担当)が指導しており、最初から最後まで凄まじい格闘戦のオンパレードとなっていました。
序盤のスコットVSファルコからして気合の入り方が違っており、三本勝負ではスコットのバネを生かした無重力バトルがこれでもか!と炸裂。どの勝負も対戦相手にバリエーションがあって、見応えのあるファイトが展開されています。
 一戦目は普通のタイマンで、鮮やかな蹴りを放つスコットの技量に目を奪われます。続く二戦目では1VS2の変則マッチ(相手の1人がティム・マン)となり、休む間もなく交互に襲いかかる相手との目まぐるしい接戦が見ものです。
そして三戦目では『ザ・サンクチュアリ』で用心棒トリオの一角を担い、『マキシマム・ブラッド』『キルオール』などにも顔を出していたブラヒムが立ちはだかり、スコットに負けない身軽さと足技で互角に渡り合っていました。
 個人的にはこの三戦目が一番好みなんですが、最後に控えていた筋肉ダルマのマーティンとのバトルも実に壮絶。鎧のような筋肉に打撃が効かない中、彼は筋肉で覆われていない頭部を中心に攻撃し、徐々に体勢を崩そうと試みますが…。
正直なところ、本作のラストバトルは相手のビジュアルこそ凶悪ですが、技術や立ち回りの機敏さで言えば『II』のVSマイケル・ジェイ・ホワイト、『III』のVSマルコ・サロールに比べると一歩及ばずといった感じです。
しかしアクションは全体的に高いレベルを保っており、胸のすくラストも含めて“『デッドロック』シリーズにハズレ無し!”と言える出来だったと思います(でもドタキャンされたスコットのオーナーはちょっと可哀想かも・苦笑)。
 と、そんなわけで今月は国内未公開のマーシャルアーツ映画に迫ってきましたが、まだ見ぬ注目作は他にも存在するはず。思えば未公開の功夫片は沢山見てきましたが、格闘映画の未公開作については開拓の余地が大いにあると言えるでしょう。
もしかしたら今回のような特集をまた開催するかもしれないので、その時はまた未知なる格闘アクションに酔いしれ、大いに楽しんでいきたいと思っています。それでは、本日はこれにて……――(特集、終わり)