功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

迫れ!未公開格闘映画(4)『Man from Shaolin』

2017-10-21 22:16:34 | マーシャルアーツ映画:中(2)
Man from Shaolin
中文題:少林漢(正字は簡体字表記)
製作:2012年

●少林寺の僧侶であったペン・チャン・リー(Peng Zhang Li)は、事故で母親を亡くした姪(ジャスミン・ガランテ)の面倒を見るため、アメリカ最大の都市であるニューヨークに移住。小さな武術スクールを切り盛りしながら、慎ましやかに暮らしていた。
しかし、幼いジャスミンとの接し方に悩んだり、武術スクールで弟子の1人(ブライアン・エイムズ)が道場破りを連れてきて問題を起こしたりと、面倒なトラブルが頻発していく。
 ペンは少林寺の故事から打開策のヒント(?)を得ようとするが、状況はまったくもって好転しない。遂にはスクールが閉鎖に追い込まれ、ブライアンに絡んでいた連中に喧嘩を売られた挙句、銃撃を受けるという事件まで起きてしまった。
なんとか大事には至らなかったが、この出来事によりジャスミンはペンの元から引き離されてしまう。そのとき、“少林寺から来た男”が下した決断とは…!?

 本作はペン・チャン・リー(本作ではLi Zhang名義)という謎の中国人武術家が、主演・製作・武術指導・監督を務めた怪しげな武術映画です。話によると少林寺に在籍していた本物の武僧…らしいのですが、検索しても中華系サイトに彼の名は見当たりません。
米国のwikiによると、ペンさんは3歳の頃から少林寺で修行し、22歳になると寺から出立。渡米した先で『Shaolin Ulysses: Kungfu Monks in America』というドキュメンタリーに出演し、それが映画事業に関わるキッカケとなったそうです。
 2010年には初の監督主演作である『The Last Kung Fu Monk』を発表し、抗日アクションの『The Resistance』などを立て続けに製作。いずれも中国との合作であり、作品の持つ雰囲気もマーシャルアーツ映画とは一線を画しています。
そんな中で本作は“少林寺から来た男が直面する試練”を描いており、タイトルからして功夫アクションが炸裂する活劇を思わせます。しかし本作では功夫よりも、叔父と姪の関係を描いたドラマとしての面が強調されていました。

 確かに劇中には悪党も出てくるし、功夫アクションの割合も少なくありません。ただし本作では、少林僧という肩書きが通用しない大都会で、どうにか必死に生きようとする主人公の姿が主題となっているのです。
そのため作品の空気は重く、勧善懲悪とは程遠いストーリーが展開されていました。個人的には「そういう方向で攻める作品なのか…」と興味深げに見れましたが、活劇を期待して視聴する人にとっては、やや退屈に感じるかもしれません。
また、主演のペンさんはアクションこそ一級品ですが、そのルックスは完全に普通のおっさんなので、スター性が致命的なレベルで不足しています。愛嬌にも乏しく、せめてもう少し砕けた演技をしてくれれば、もっと感情移入できたのですが…。
 ただ、アクションシーンでは香港映画に近い機敏なバトルが見られるので、その点に関しては上々と言えるでしょう。劇中ではペンさんが少林寺にまつわる故事を思い出し、自らが登場する回想シーンで激しいファイトを見せています。
現実の戦いでは、中盤で道場破りとペンさんが戦い、後半には悪漢たちを蹴散らすシークエンスも。ストーリー的にラストバトルは無いかな…と思いきや、最後の最後に道場破りと再戦が果たされ、短いながらも見事な攻防を披露していました。
 格闘映画なのに少林僧が主役で、功夫ではなくドラマが中心になるという異色中の異色作。日本ではまったく無名の作品ですが、マーシャルアーツ映画にはこういった作品がまだまだ沢山あるのかもしれませんね。
さて次回は、あの懐かしの女ドラゴンが満を持しての登場! さらには某作で主演を飾って以降、しばらく音沙汰を聞かなかったあの格闘俳優と共演するのですが…詳細は次回にて!