功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

特集・50Movies(04)『人虎戀/虎姑婆』

2008-12-09 22:21:32 | カンフー映画:珍作
人虎戀/虎姑婆
英題:Tiger Love/Tiger's Love/The Tiger Love/Tiger's Kong Fu
制作:1977年

▼(※…画像は本作を収録したDVDパックのものです)
『50Movie Pack Martial Arts』在庫セールも今回で第4弾。さすがにクズ映画レビュー3連続は避けたいところなので(苦笑)、今回は久々に功夫片の紹介である。監督である金翁の監督作は、同じ『Martial Arts 50 Movie Pack』に収録されていた『猴[馬付]馬』『闖王李自成』に続いて三本目となるのだが、今回も金翁らしく一筋縄ではいかない内容になっている。
…ところで金翁、もしかして動物マニアか?(後述)

■冒頭、羅烈と胡錦が王侠の一団に追われている場面から本作は幕を開ける。実はこの2人はロミオとジュリエットな関係で、双方の家が対立関係にあったのだ(それにしても嫌なロミオとジュリエットだ・笑)。胡錦家の王侠によって羅烈を殺された胡錦は投身自殺をしてしまうが、実は羅烈は生きていた。そして身を投げた胡錦の元には一頭の虎が…?
虎によって助けられた胡錦は、それから虎と一緒に生活を始めた。もとから身篭っていた子供も生まれ…あれ?これって『猴[馬付]馬』とまんま同じじゃないか?ともあれ、生まれた子供はあっという間に虎拳使いの董[王韋](トン・ワイ)へと成長。一人前になった董[王韋]に、胡錦はこれまでのいきさつを明かした。
話を聞いて父のことが気になった董[王韋]は街へと繰り出し、そこで偶然にも羅烈と出会う。長い時を経て再会を果たした胡錦に羅烈は優しく声をかけるが、胡錦はどうにも複雑そうだ。一方、王侠と虎狩りに来ていた娘の夏之夢は董[王韋]と遭遇するが、どうやら董[王韋]は夏之夢を気に入った様子。強引なアプローチで夏之夢の心を射止めるが、夏之夢に横恋慕していた王侠の手の者と争いになり、人を殺してしまった事で話は大事になってしまう。
羅烈は董[王韋]を勘当して追い出したが、怒りの王侠はこれを機に羅烈たちを潰そうと画策。羅烈は果敢に立ち向かったが、結局は多勢に無勢で全滅を喫してしまった。董[王韋]は復讐に立ち上がるも、その戦力差から一時撤退。死に際の側近から話を聞いた胡錦は王侠のところへ仇討ちに向かうが、王侠にやられて?(描写が無いので不明)彼女までもが死んでしまう。
一族の仇を討つことを誓った董[王韋]…だが、その側で胡錦が息を引き取る瞬間を見ていた虎もまた復讐心に燃えていた。怨念に駆られた虎は王侠の一族を根絶やしにしてしまおうと発起し、化け物に変身して(!!?)復讐を開始した。虎が相手ではさすがの王侠でさえもあっという間に瞬殺。しかも虎は王侠を倒しただけでは飽き足らず、夏之夢たちまでも殺そうと暴れまわった。董[王韋]が止めようとするが、果たして2人の運命は…?

▲本作は金洋影業の製作だが、この金洋影業は『猴[馬付]馬』や『闖王李自成』など金翁の監督作ばかり手がけている。
どうやら金洋影業は金翁の会社だった可能性が高いが、そもそもこの金翁という人の作品には動物にゆかりのある物が幾つもある。『猴[馬付]馬』ではチンパンジーとお姫様が結婚する素っ頓狂な作品だし、他にも『狼女』『蛇魔女』といった動物系と思しき作品も存在する。そして今回はそんな彼の動物路線の最終形態ともいえる作品なのだが…以前、何宗道の『蛇女慾潮』を「トチ狂った作品」と形容したが、本作も同様にかなりトチ狂った作品だったのだ!(爆
『蛇女慾潮』は物語自体は結構まともだったが、設定が珍妙過ぎて怪作と化した作品だった。だが本作の場合は、物語そのものの時点から既に狂っているのだから堪らない。最初こそ『猴[馬付]馬』と同じパターンの物語かと思いきや、話の方向はどんどん明後日明々後日の方向へと突っ走り、最後にはホラー&モンスターパニックと化していく。いくら香港映画がなんでもありとはいえ、いくらなんでもこれはムチャクチャ。作品の出来を論じる以前に、製作者が正気だったのかと論じたい作品である(笑
それにしても、どうして『Martial Arts 50 Movie Pack』はこんな凄まじい作品を収録したのだろうか?『鬼面忍者』の件もあるが、向こうの人たちの選定基準がとても気になります。