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功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『DENGEKI 電撃』

2013-01-26 22:47:21 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「DENGEKI 電撃」
原題:Exit Wounds
製作:2001年

▼多くのハリウッド作品で撮影監督を手掛け、アクション映画向きのカメラワークに定評のあるアンジェイ・バートコウィアクという方がいます。彼は監督業にも進出し、2000年代の始めごろにヒップホップ歌手のDMXと組んで3本の映画を製作しました。
それが『ロミオ・マスト・ダイ』と『ブラック・ダイヤモンド』、そしてこの『DENGEKI 電撃』です。最初と最後は李連杰(ジェット・リー)が、本作ではスティーブン・セガールがそれぞれメインを担当。どの作品もヒットを記録していて、アクション映画としては成功した部類に入ります。
しかし彼の監督作はどれも大味で、よくアクション演出などに詰めの甘さがが見られました。『ブラック~』では李連杰VSマーク・ダカスコスの決戦をブツ切りカットで台無しにし、『レジェンド・オブ・チュンリー』では人気キャラの設定を改悪。本作でもその兆候は見られ、最後の最後で大きなミスを犯しています。

■セガールはロス市警に務める型破りな刑事。実力はあるのだが、襲撃された副大統領を助けるために河へ叩き込むなど、あまりに無茶をしすぎたため左遷されてしまう(笑)。犯罪多発地帯の第15分署に飛ばされた彼は、謎の麻薬密売人・DMXを捕まえるべく、たった1人で捜査を開始する。
そんな中、記録保管センターから押収されていた麻薬が強奪される事件が発生。セガールはこの事件にきな臭いものを感じ、一方で警察署内に怪しい連中がウヨウヨしている事にも気付く。そのころDMXは取引相手のボスと接触していたが、その正体はセガールの同僚であるマイケル・ジェイ・ホワイトであった。
 調査を続けるうちに、セガールもDMXがただの密売人ではないこと、そして署内の同僚たちが麻薬密売に加担していることを察知。やがてDMXと接触したセガールは、彼が無実の罪で投獄された弟を助けるため、警察汚職を摘発しようと密売人に化けていたことを知らされる。
協力してくれた署長のジル・ヘネシーが命を落とす中、セガールは麻薬取引の現場に踏み込み、DMXとともにマイケル一味を一網打尽にしようと目論んだ。凄まじい銃撃戦の中、2人はそれぞれの倒すべき敵と相対する!

▲まずストーリーですが、こちらはセガール作品らしく実に適当です(爆)。DMXの正体にまつわる部分は謎めいているものの、怪しい奴がそのまま悪人だったりする真っ正直な展開が多いため、サスペンス性は皆無。珍しくセガールが落ちこぼれであるという特徴も、物語が進むにつれて忘れ去られてしまいます。
とはいえ、これらの点は特に問題ではありません。個性的な登場人物、満遍なく配置されたアクションやカースタントが作品を適度に盛り上げていて、本作に平均的なセガール映画から頭ひとつ抜けた印象を与えているのです。
 これについては格闘シーンも同様で、セガール的な合気道ファイトにワイヤーワークが加わり、いつもと違ったアクションが構築されていました。動作設計は香港から招かれた林迪安(ディオン・ラム)なので、セガールの動きを尊重しつつ新鮮味を加えるのは、彼にとってお手の物だったでしょうね。
しかし腑に落ちないのは、ラストのセガールVSマイケルの一戦です。ともに武術を得意とする俳優同士であり、格闘映画ファンにとって夢の対決が実現した瞬間ですが、この戦いは使用していた刃物が落ちたところで唐突に中断。マイケルはさっさと逃走し、実に呆気ない結末を迎えてしまいます。
 明確な勝ち負けが決まらないばかりか、素手での勝負をスルーしてしまうとは片手落ちもいいところです。DMXが「紐を引っかけた銃を投げて撃つ」という、『タイガー・オン・ザ・ビート』で周潤發(チョウ・ユンファ)がやったのと同じ動作を見せたりと、どうもこの最終決戦はおかしな部分が目に付きます。
ある程度の品質は保っているのに、かゆい所に手が届かない演出のせいで損をしているアンジェイ監督の作品群。本作もラストと適当な展開さえ気にしなければ気楽に見られるのですが……う~ん。

『キック・ファイター』

2012-12-27 21:36:58 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「キック・ファイター」
原題:FULL CONTACT
製作:1992年

▼マーシャルアーツ映画にとって、90年代はまさに最盛期といえる時代でした。この時期で有名なのはジャン=クロード・ヴァン・ダムスティーブン・セガールドルフ・ラングレンの3人でしょう。彼らのエピゴーネンも数多く生まれ、とりわけポスト・ヴァンダムを狙う俳優は無数に存在します。
今回紹介するジェリー・トリンブルは、そういった者たちの1人でした。キックボクシングの使い手である彼は、自慢の足技を武器に次々と主演作を連発。一時は落ち込んでいましたが、スティーブ・オースティン主演最新作『マキシマム・ブロウ(The Package)』で、久々に格闘映画への出演を果たしています。
本作は、ジェリーがロジャー・コーマンのお抱え監督?であるリック・ジェイコブソン(『ザ・ヴァンプハンター』『オーバーヒート・プリズン』もこの人の仕事)とコラボした作品で、闇ファイトに挑もうとする青年の戦いを描いています。

■ジェリーは離れて暮らしている兄を探して、ロサンゼルスのダウンタウンを訪れていた。だが、あるチンピラから兄が闇ファイトの選手として活躍していたこと、そして何者かに殺されたことを知らされる。
兄の死に悲しむジェリーは、犯人が闇ファイトの関係者であると確信する。そして彼は闇ファイトに参加して真犯人を探すべく、コーチのマーカス・オーリアスと手を組み、厳しいトレーニングに身を投じていく。十分な実力を身に付け、いよいよ血みどろの戦いに挑戦するジェリー。だが、事件の黒幕は意外な場所に潜んでいた…。

▲まずアクションについてですが、こちらはボチボチの出来でした。本作には例によって本物の格闘家が多数参加しており、いきなり序盤からゲイリー・ブランク(キックの世界王者。現在は自身の道場で養秀会空手を指導)とハワード・ジャクソン(『懲罰』で山下タダシと対戦)が火花を散らします。
中盤では、ジェリーがキックボクシング世界ウェルター級王者のアルビン・ブローダーと死闘を繰り広げ…るんですが、やはり本物を起用したからといって凄いアクションが撮れるわけではありません。ラストバトルの展開についても、賛否が分かれるでしょうね。

 しかしそんなアクション部分より、もっと問題なのがストーリーです。先述のあらすじの続きですが、闇ファイトに出場したジェリーは試合中に兄殺しの目撃者と思われる男を発見し、マーカスに後を追うよう頼みますが、その男は自宅で惨殺されているところを発見されます。
その後、一緒に出場した友人が準決勝で最大の強敵の噛ませ犬にされて再起不能に。決勝に臨んだジェリーは、そこで真犯人の正体を知るのですが……。そう、ここまで書けばご存知の方はピンときたでしょう。本作はドン・ウィルソン主演作『Bloodfist』のストーリーと瓜二つなのです!
 この他にも、主人公と恋仲になるのが友人の妹でストリッパー、目撃者を発見した際に主人公が闘っていた相手が黒人格闘家、友人を倒した強敵が太めの巨漢ファイター、そして真犯人の正体と戦いの結末など、単なる偶然では片付けられないほどの類似点が見当たります。
なぜこんなことになったのか真相は不明ですが、少なくとも全体の出来と予算は『Bloodfist』が、アクションとユーモアなら本作に分があったと思います。なお、本作には下積み時代のマイケル・ジェイ・ホワイトが出演していますが、ただの脇役(アクション無し)なので期待しないように。

『スティーヴ・オースティン S.W.A.T.』

2012-08-06 23:27:48 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「スティーヴ・オースティン S.W.A.T.」
原題:TACTICAL FORCE
製作:2011年

スティーヴ・オースティン率いるロス市警のSWATチームは、超が付くほどの暴れん坊ぞろい。今日もコンビニ強盗と一緒に人質まで一網打尽にしてしまい、上司から大目玉を食らっていた。彼らは罰として廃屋での訓練を命ぜられ、渋々ながら目的地に向かうのだった。
だが、当の廃屋では隠された大事なブツを巡り、ロシアとイタリアのマフィアが火花を散らしていた。連中はスティーヴたちが突然現れたことで慌てるが、相手が訓練用の装備しか持っていないと知って反撃を開始する。
絶体絶命のスティーヴたちと、仲間の増減で優劣が二転三転する2組のマフィア…。果たして、三者の中で生き残るのは誰なのか!?

 今回はまたもや『エクスペンダブルズ』以降に続々と実現した、ドリームマッチを主題とした作品の登場です。これまで同系統の作品は『沈黙の復讐』『ゲーム・オブ・デス』『ザ・ハンティング』などを紹介してきましたが、本作はいささかボルテージの低いものとなっています。
内容は限定空間を舞台にした駆け引き重視のアクション映画…なのですが、作品の肝となる駆け引きの描写がちょっと甘い出来で、正直言ってかなり退屈でした(爆)。一応、後半からは攻守逆転が頻繁に起こってくるので割と楽しめるのですが、最後の種明かしは蛇足だったかな?
 しかし、本作のメインはあくまで猛者同士によるドリームマッチにあります。本作では後半でマイケル・ジェイ・ホワイト(『ブラッド&ボーン』)VSダレン・シャラヴィ(『葉門』)が、ラストではスティーヴVSキース・ジャーディン(シウバとも戦った総合格闘家)がそれぞれ拳を交えていました。
しかし、これらのバトルにおいて各々のファイトスタイルに変化が無く、個別化が図れていません。『ゲーム・オブ・デス』や『ザ・ハンティング』で夢の対決が行われた際は、きちんと敵味方で戦法が違いました。スタイルの違いは両者の個性を引き出し、アクションに更なる激しさを加味することができるのですが、本作はそれを怠ってしまったのです。
 その結果、全体的にアクションの出来は今一歩。殺陣と演出次第では素晴らしい勝負になれたはずなので、この程度に終わってしまったのは惜しい限りです(特にマイケルVSダレン)。今さら言っても仕方ないですが、このキャストでスティーヴVSマイケルが無いというのも残念でした。
充実した出演者とは裏腹に、凡庸な出来になってしまった佳作。従来のドリームマッチが軽んじられていた時代のことを思うと、今回のドリームマッチは実現しただけでも快挙と呼べる出来事なのですが…。

『ソード・レジェンド 失われたドラゴンの剣』

2012-06-12 22:17:09 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ソード・レジェンド 失われたドラゴンの剣」
原題:ADVENTURES OF JOHNNY TAO/QUEST OF THE DRAGON
製作:2007年

●砂漠に面した片田舎の町に住むマシュー・トワイニングは、功夫映画が大好きなボンクラ青年。売れないミュージシャンだった亡き父のミュージアムと、古びたガソリンスタンドを経営しながら気ままに暮らしていた。
そんなある日、マシューの友人でUFOマニアのマット・マリンズは、砂漠で奇妙な武器を発見する。それは900年前に邪悪な存在・タイローを封印した槍の一部であり、槍を引き抜いたマットは復活したタイローに体を乗っ取られてしまった。
憑依されたマットは町のワルどもを洗脳し、欲望の赴くままに暴虐の限りを尽くしていく。そこへ魔を封じる一族の末裔である甄子菁(クリス・イェン)が現れ、封印の槍のもう1つの破片を持っていたマシューと共に反撃を開始する。善と悪…最後に勝つのはどっちだ!?

 マット・マリンズ!ドニーの妹の甄子菁!そして監督が『ショウダウン』で主演を演じていたケン・スコット!…ということで前から気になっていた作品だったんですが、これが中々の力作に仕上がっていました。
確かに色々とヘボい点はあります。メインキャストが少なく、敵が行う悪事の内容も規模の大きい食い逃げオンリー(笑)だったりと、ツッコミどころを挙げたらキリがありません。しかし物語はスムーズに進むし、出てくるキャラもそこそこ個性的。香港映画風に味付けされた格闘アクションも非常に良く出来ています。
 本作で気になるのはやはりマットと甄子菁ですが、両者ともソードファイトや華麗な回し蹴りを駆使し、派手な戦いを繰り広げています。もちろんこの2人の直接対決もあり(内容は少々消化不良でしたが)、主演のマシューも負けじと頑張っていました。
また、劇中のアクションはシチュエーションが工夫されていて、小競り合い程度の戦いにも手が加えられています。ゴリラの着ぐるみを着て闘ったり、紙吹雪が舞い散る中で死闘を演じたり…。こういう細かな演出を大事にする格闘映画は意外と少なく、本作のスタッフがどれだけアクションに力を入れているかが良く解りますね。
ストーリーは平均以下ではあるものの、格闘アクションの質は高い本作。1つだけ不満があるとすれば、あまり人が傷付かないストーリーだったのに、甄子菁が後半で○○してしまった事ぐらいでしょうか。何はともあれ、格闘映画ファンは必見の作品です!

『ビリー'S KARATE MAN』

2012-03-08 21:04:53 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ビリー'S KARATE MAN」
原題:BALANCE OF POWER/HIDDEN TIGER
製作:1996年

●かつてビリーズ・ブートキャンプで話題となり、今も日本で活動中のビリー・ブランクスが、90年代の格闘映画ブームの際に主演した作品です。これがまた本当にどうしようもないくらいのB級映画なんですが(苦笑)、当時の格闘映画は大体がこんな感じの作品ばかりでした。
本作のビリーはタイトルにもあるとおり、空手教室の先生に扮しています。ストーリーは治安の悪い地区で空手を教えていたビリーが、教え子の仇を討つために悪の組織へ挑むというもの。例によって組織は闇の格闘大会を主催していて、裏で大金が動いている…という非常にありがちな設定が盛り込まれています。
 物語は全体的に大雑把な作りで、特にビリーがマコ岩松から格闘大会出場を促される(というか突然提案される)場面は展開が強引すぎます(笑)。その後、マコの特訓を受けたビリーは大会に出場し、弟子の仇であるジェームス・リューとその親玉を倒すのですが、クライマックスの流れがどことなく『燃えよドラゴン』に似ていました。
大会の決勝でビリーは胸と頬に切り傷を作り、雄叫びを上げながらリューを踏みつけます。進退窮まった親玉は武器を片手にビリーを誘い、自分のフィールドで決着を着けようとするも、最後は体を貫かれて息絶えます。…中途半端なドラマと精神修行で解りにくいですが、もしかしたら本作はビリー版『燃えよドラゴン』だったのかもしれません。
 格闘シーンは数が多く、各人のアクションスタイルもそれなりに幅があり、水準以上の出来にはなっています。ラストのビリーVSリューの決戦では、蹴りと蹴りが乱れ飛ぶ激しい勝負が行われていました。ただ、作品そのものは思いっきりB級映画じみているので、できるだけ広い心で視聴したほうが良いですね(爆
ちなみに、ビリーの日本語吹替えはブートキャンプでおなじみの小杉十郎太氏が担当していて、本作のB級度を更なる高みに導いています。同じくビリー主演の『ビリー'S GUN & FIGHT!』ではアドリブ度がグッと増し、本作以上にエラいことになっているのですが…それについてはまた別の機会にて。

『スティーヴ・オースティン ザ・ハンティング』

2012-02-19 23:42:25 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「スティーヴ・オースティン ザ・ハンティング」
原題:HUNT TO KILL
製作:2010年

▼近年、『エクスペンダブルズ』の影響によってスター同士の共演が続々と実現し、日本にも多くの作品が輸入されています。本作は『エクス~』で悪役を演じたスティーブ・オースティン、エリック・ロバーツ、ゲイリー・ダニエルズの3人が再結集していて、この顔ぶれこそが最大の売りとなっています(ただしエリックの出番は序盤だけ)。
タイトルを見ると人間狩り映画のようですが、実際は不仲の親子が事件に巻き込まれるというシンプルな話だったりします。監督はセガール作品常連のキオニ・ワックスマンなので、格闘アクション的な見せ場もちゃんと用意されていました。

ギル・ベローズ率いる銀行強盗グループは、カジノを襲って1000万ドルの大金を手に入れていた。ところが、ボスのマイケル・ホーガンがそれをネコババし、森林地帯から越境してカナダへと逃走を図ったのである。
強盗グループは裏切り者を追うため、国境付近の保安官事務所を襲撃。偶然居合わせた国境警備員のスティーヴと娘のマリー・アヴゲロプロスは、彼らの案内を強いられてしまう。道中、スティーヴは何度か逆襲を試みるが失敗。強盗グループ同士の空気も険悪になる中、ようやくマイケルを発見した。
 肝心の大金は崖下に落ちており、スティーヴがこれの回収に向かう。しかし、崖を上って金を渡したところをギルに撃たれ、彼は数メートル下の河へと滑落。泣き叫ぶマリーだが、生き抜くために強盗グループの道案内を引き継ぐのだった。
一方、なんとか生きていたスティーヴは、怪我の応急処置を済ませると即座に反撃へと転じた。山と森を知り尽くしている彼は、手製の武器と拾ったボーガンで次々と強盗グループを撃破!最後に残ったギルは、カナダへ到着するとマリーを突き放してバギーで逃げ出していった。
スティーヴは愛娘との再会を喜ぶと、極悪非道のギルを追撃していく。果たして、最後に狩られるのはどちらなのだろうか…?

▲ご覧の通り、ストーリーはかなりベタベタな作りです。特にこれといって盛り上がる場面はなく、ただ淡々と森の中を歩き続けるだけなので、シチュエーション的にはかなり辛いものがありました(たまたま拾ったバッグの中にボーガン一式が入っていたりと、都合の良すぎる展開も目に付きます)。
しかし、スティーヴとゲイリーによるガチンコ勝負がちゃんと実現しているので、この2人が目当ての方は押さえといても損は無いでしょう。ゲイリーは強盗グループの1人を演じ、無口な兄ちゃんを演じています。今回の彼はあまりアクションを見せませんが、ストーリー後半で猛追してきたスティーヴと激突を果たすのです。
 ゲイリーが蹴り技主体なのは『ゲーム・オブ・デス』と同じですが、今回は相手がスティーヴなので生半可な攻撃は通じません!『ゲーム~』の最終対決が拳VS足だったのに対し、本作はパワーVSスピードという図式を構築。殺陣に冗長さは無く、両雄の個性を生かした好勝負だったと思います。
スティーヴは今年も絶賛活躍中で、以前紹介したセガールとの共演作『Maximum Conviction』や、ドルフ・ラングレン&ジェリー・トリンブルとのトリプルスクラムで挑む『The Package』など、話題作が目白押しです。これらの作品も、本作のように是非とも日本上陸を果たして欲しいですね。

『キングダム・オブ・ドラゴン 伝説の魂を受け継ぐ者』

2012-01-19 22:26:10 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「キングダム・オブ・ドラゴン 伝説の魂を受け継ぐ者」
原題:WUSHU WARRIOR
中文題:龍武士/武術戰士(←正字は簡体字表記)
製作:2010年

●時は清朝末期。中国でアヘンを売りさばき、知事と結託して武器を密輸していていた大富豪マット・フルーワーは、これらの悪事を告発しようとした牧師を暗殺する。魔の手は牧師の息子にも及ぼうとしたが、アヘン密売を阻止する中国人の人々が彼を無事に救い出した。
父を殺され、不慣れな土地へ避難した牧師の息子は、悲しみの真っ只中にいた。そんな中、彼は避難先の村で武術を習っている子供たちを見て、自分も習おうと決意する。密売阻止団の長老ツァオ・ガンに師事した彼は、凛々しい青年トッド・フェンネルへと成長。その腕前は高いレベルに達していた…が、まだまだメンタル面は未熟であった。
 ある日、敵の本拠地に潜入するという任務に志願したトッドは、見事に重要な書類をゲットして帰還した。だが、逃げ出すのに使った馬車には、マットの娘アンバー・ゴールドファーブがいた。魅力的な彼女に惹かれるトッドだったが、実はこの女はとんでもない性悪娘。トッドを利用して脱走した挙句、毒を使ってツァオに重傷を負わせてしまったのだ。
この一件はトッドと仲間たちの奔走で解決するが、敵に居場所を知られた以上はアジトを引き払うしかない。しかし、復讐に燃えるトッドがマット率いる軍勢に突っ込んだため、彼を助けようとしたツァオが犠牲になった。密売阻止団のリーダーも捕まり、処刑の時が迫る…。内に秘めるドラゴンの力に目覚めたトッドは、仲間と共に決戦へ向かう!

 本作はカナダと中国の合作で作られた作品です。カナダと中国…といっても、舞台は動乱期の中国(アヘン戦争の直前?)であり、中国側からも大勢のスタッフが参加。実際に中国でロケーションも行われており、どこからどう見ても功夫片にしか見えないのです(笑
そのおかげで、間違った中国描写などはほとんど無く、実にまっとうなカンフー映画に仕上がっていました。主人公が、安易に復讐を果たさず精神的な成長を遂げていくという点も大いに評価できます(ヒロインを演じた『ジェイ・チョウを探して』の浦蒲(ポー・ポー)もレベル高し!)。
 しかし本作は、「あまりにもカンフー映画に近付きすぎたせいで、よくあるベタな香港映画にしか見えない」という欠点を抱えているのです。トッドを始めとした外人キャストの動きは悪くないし、格闘映画としては非常に凝ってるんですが……このへんのジレンマは、以前紹介した『Bodyguard: A New Beginning』と非常に似通っていました。
全体的に丁寧な作りですが、その丁寧さがアダになってしまった稀有な作品。…とはいえ、特に出来が悪いわけではないし、それなりのクオリティは維持しています。また、浦蒲の他にも敵の用心棒役で丁小龍(『カンフーハッスル』で陳國坤の手下役だった人)が出ているので、香港映画ファンならチェックしてみるのも一興かもしれません。

『チャック・ノリスin地獄の銃弾』

2011-12-02 21:31:33 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「チャック・ノリスin地獄の銃弾」
原題:The Cutter
製作:2005年

▼ここのところ格闘映画の話題となると『The Expendables 2』に関連したネタばかり振っていますが、性懲りもなく今回も関連作の紹介です。格闘映画界の黎明期に空手ひとつで殴り込み、『The Expendables 2』への出演が確定したチャック・ノリス……本作は、そんな彼が現時点で最後に主演した作品なのです。
物語は旧約聖書に書かれた宝を巡り、ナチスドイツの地獄を生き抜いた男が陰謀に巻き込まれる姿を描いています。こう書くとスケールの大きな内容に思えますが、実際の内容はいたって普通の探偵アクションだったりします(爆
しかし本作の肝は、ずばりダニエル・バーンハードの存在にあります。『ブラッド・スポーツ2』『マトリックス・リローデット』で高い身体能力を見せた彼と、老練のノリスとの真剣勝負!この新旧マーシャルアーツファイター同士の対決こそが、本作の唯一にして最大の見どころといっても過言ではないのです。

■砂漠の遺跡発掘現場から、裁きの胸当てという装飾品と宝石の原石2つが盗み出された。考古学者を皆殺しにしてまで奪った犯人は、国際指名手配犯のダニエルだった。彼はワシントンに現れると、特殊な宝石のカッティング技術を持つ職人バーニー・コベルを誘拐し、原石のカットを強要する。どうやら彼を背後で操っている人物がいるようだが…?
同じ頃、ダニエルの訪れた町には元刑事の探偵・ノリスという男がいた。ノリスは人探しを専門としており、銃の扱いや格闘技にも長けている。彼はダニエルの指示で誘拐されそうになったジョアンナ・パクラ(バーニーの姪)を助けたため、この事件へ関わる事になった。
 ジョアンナの依頼でバーニーの行方を捜索しているうちに、彼が何かしらの大きな事件に巻き込まれたこと、そしてナチスの収容所にいた暗い過去などが判明していく。市警察やインターポールが錯綜する中、ノリスは遂にダニエルと対面する。しかし戦闘で敗北を喫し、アンナも敵の手に落ちてしまった。
僅かな手がかりから敵のアジトを突き止めたノリスは、いよいよ最後の決戦へと挑む。事件の黒幕とバーニーの関係、そして時限爆弾を装着されたアンナの運命は……。

▲本作のノリスは年相応の役柄を演じつつ、今回も悪党を張り倒す空手アクションで頑張っています。さすがにキックの打点は低くなっていますが、パワフルなパンチの応酬で見事にカバー。セガールのようにスタントを使いすぎず、なるだけ生身のアクションに努めていました。
ストーリーはこれといって突出した部分はなく、ソファーで横になりながら見られる安定した内容となっています。ちなみに劇中であっさり死んでしまうインターポールの捜査官を演じているのは、ノリスの実弟であるアーロン・ノリスその人。いつもは製作側に回っていますが、本作では兄ちゃんに向かってスタンガンを打ち込んでいました(笑
 そして注目のノリスVSダニエルのドリームマッチですが、こちらは2度にわたって行われています。まず最初はバスの中という足技が使いづらい限定空間で対決がスタート。ここでは若さで勝るダニエルが徐々にリードし、なんとノリスが負ける(!)という意外な結果に終わります。
雪辱に燃えるノリスは、続くラストバトルでいきなりダニエルに銃を発砲!勝負は手技足技を巧みに交え、一歩も譲らぬ接戦になります。世代の離れた格闘スター同士の対決…といえば『ザ・プロテクター』のヴァンダムVSスコット・アドキンスが有名ですが、こちらも負けず劣らずのファイトが展開されていました。
本作から既に6年の歳月が流れ、御年71歳を迎えた我らがチャック・ノリス。『The Expendables 2』で、彼がどう動くのかに注目です!

『ゲーム・オブ・デス』

2011-10-22 22:31:00 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「ゲーム・オブ・デス」
原題:GAME OF DEATH
製作:2010年

▼セガールやヴァンダムといった格闘スターが大量に現れた90年代において、新世代のブラック・ドラゴンと言うべきスターが誕生しました。詠春拳や空手を習得した黒人格闘俳優の新たな旗手…それがウェズリー・スナイプスでした。
彼は単なるアクション映画にとどまらず、演技派俳優として様々な作品に出演しています。しかし、スナイプスが主演した作品で直球の格闘映画というものは少なく、その並外れた技量をフルに活用する機会は限られていました(このへんはドルフ・ラングレンも同じ問題を抱えていたと思います)。
そんな彼も今や檻の向こうに行ってしまいましたが、本作は収監する前に製作された最後の主演作です。スナイプスは本作の前後に『エクスペンダブルズ』の出演を断っていますが、やはり本人も出演できなかったことを悔やんでいたらしく、本家からゲイリー・ダニエルズが招集されています。

■貧しい町の一角に建つ教会に1人の男が現れた。彼、指名手配犯のスナイプスは大金がぎっしり入ったバッグを下げており、この教会へ寄付したいと言う。どういった経緯があったのか説明を求めた牧師に対し、彼は前日に起きた出来事を語りだした。
CIAエージェントとして活動していたスナイプスは、上司から「武器商人のロバート・ダヴィとその支援者である投資会社のボスを暗殺せよ」との命令を受けた。半年間の潜入工作でロバート専属のボディガードとなったスナイプス。しかし、いよいよ投資会社のボスに会えるというその時、想定外の事態が発生する。
 なんと、土壇場でゲイリーらCIAの仲間たちが反旗を翻したのだ。いつまでも報われない生活に嫌気がさしていた彼らは、投資会社でロバートが受け取る予定の大金を強奪し、そのまま海外に高飛びしようと企んでいたのである。
さらに間の悪いことに、ロバートが取引の直前に心臓発作を起こしたため、病院へ寄り道する羽目に…。スナイプスは任務を優先するが、ゲイリーたちは問答無用で襲い掛かってくる。舞台は病院から投資会社へと移り、ゲイリーの率いていたグループも彼を残すのみとなった。ビルの屋上を舞台に、正義なき決戦が始まるが…?

▲物語は組織に翻弄された挙句、相反する道を選んだ2人の男が闘うというもので、なかなか渋い作風になっています。登場人物も癖のあるキャラばかりで、単なる勧善懲悪ではない本作には良くマッチングしていました。
しかし、本作は最終的に何を言いたかったのかが解らず、スナイプス自身も善悪について大っぴらに悩んだりしません。そのため、面白くなりそうな話題が宙に浮いたまま終わっているのです。カメラワークに関しても、やたらエフェクトに凝っていて見づらいことこの上なしでした。
 アクションシーンは『ザ・格闘王』のサイモン・リー(劇中にもゲイリーの仲間として出演)が指導しているため、見栄えに関しては文句なし。スナイプスとホー・スン・パク(『酔拳2』でジャッキーに顔を焼かれた人)との対決が一瞬で終わり、サイモン本人は一発で射殺されてしまうものの、各所で繰り広げられるファイトはどれも迫力満点です。
注目のスナイプスVSゲイリーもハードな内容で、蹴り技で勝るゲイリーに対してスナイプスが一瞬の隙を突き、怒涛の鉄拳ラッシュを打ち込むシーンには鬼気迫るものがありました。ハッキリ言って見どころはラストバトルのみですが、一定のクオリティは保っていたと思います。ところで……DVDの予告編、悪ノリしすぎ!(笑

『殺しのアーティスト』

2011-09-16 23:42:29 | マーシャルアーツ映画:中(1)
「殺しのアーティスト」
原題:A Grande Arte/High Art
製作:1991年

▼今回紹介するのは、ナイフを題材とした異色のサスペンス映画です。
香港映画では1つの武器を取り扱った作品がよく作られていますが、それ以外の格闘映画などではあまり見かけません。そんな中で本作はナイフに着目しているので実に貴重な作品…なんですが、純粋なアクション活劇ではないため、いつも当ブログで紹介しているような作品とは若干毛色が違います。

■リオに滞在するカメラマンのピーター・コヨーテは、友人の娼婦から「変な男からディスクを渡せって脅されているの…」と相談を持ちかけられた。ところが、翌日になって娼婦は自室から遺体となって発見された。ピーターは役立たずの警察を尻目に捜査を行うが、ディスクを狙う刺客たちによって重傷を負ってしまう。
幸いにも一命は取り留めたが、この一件でピーターは本格的な復讐を決意。ナイフの名手であるチェッキー・カリョとコンタクトを取り、過酷な訓練に身を投じていく。恋人のアマンダ・ペイズに去られるも、次第に事件の核心へと近付いていくピーター。やがて敵の組織で内部分裂が起こり、事件の元凶となった存在が姿を現すのだが…?

▲前述したように、本作はアクション映画ではありません。後半に銃撃を受ける場面があるぐらいで、カーチェイスや爆破シーンといった派手なギミックは無し。格闘シーンも序盤と終盤の2つしか用意されていなかったりします。
監督のウォルター・サレス・Jrはドキュメンタリー出身の方で、本来はロードムービーやドラマを得意とする人物だそうです。本作でもドキュメンタリー調の演出が随所に見られ、普通のサスペンス映画とは一線を画す雰囲気を作り上げています。…とはいえ、恐怖感や緊迫感という点においては物足りない部分があり、冗長と思えるような箇所もいくつかありました。

 しかし、ナイフで修行する一連のシークエンスはとてもリアルに描かれています。鏡を使った捌き方の練習、物差しや線香を使用しての対人特訓など、実戦的な描写の数々には思わず見入ってしまいました(ピーターとカリョの動きもバッチリ!)。
ラストのピーターVS真犯人もこれまた見事で、ナイフの使い手同士によるスリリングなファイトが堪能できます。勝負自体はすぐに終わってしまうものの、かえってそれが本作の現実性をより強調させていました(唯一残念なのは、カリョとピーターの師弟対決が実現しなかったこと)。サスペンス映画としては微妙ですが、ナイフの扱いには光るものがある逸品です(ナイフだけに)