goo blog サービス終了のお知らせ 

功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『狼狽爲奸』

2007-11-18 22:06:21 | カンフー映画:佳作
狼狽爲奸/狼狽為奸/鬼馬小子
Wits to Wits/From China with Death
Dirty Partners/Duel of the Dragons
1974

▼以前紹介した『石破天驚』と同じ于洋(ユー・ヤン)主演作である。武術指導が袁和平(ユエン・ウーピン)で、絡み役にも同じ様な面子が出ており、もしかすると『石破天驚』と同じプロダクションの製作かもしれない。ちなみに本作は午馬(ウー・マ)の監督作品でもあるが、製作年度を考えると午馬作品でも初期に位置するものと思われる。

■于洋は詐欺師で風来坊で大泥棒な無頼漢。今日も賭場でひと暴れした後、汽車で切符をごまかし無銭乗車を働いた。その時、于洋と彼に時計をスられた午馬の間に因縁が残った。
一転、舞台は上海へと移る。そこでマフィアの頭目である石堅(シー・キェン)が仕切っている賭場に立ち寄った午馬は、再び1人勝ちしている于洋と出会う。だが石堅が現れ、勝負を迫られた于洋は勝ち目の無い勝負と解ると、潔く手を引いた。
于洋はこの町で金庫破りを計画していた。しかし午馬もまた同じ事を考えており、2人は以前の一件もあって互いに足を引っ張り合うが、目的が同じなので意気投合。石堅に銀行を襲撃させ、その隙に午馬がそっくり金塊を盗み出した。
もちろん于洋はハナっから石堅を利用するつもりだったのですぐにトンズラし、ついでに午馬も始末しようとする。が、したたかな午馬はその企みを見抜き、于洋と激突を繰り広げる。ところがどっこい、金塊は真っ赤なニセモノ!実は銀行と石堅は裏で繋がっており、銀行はニセの金塊で不当な利益を貪っていて…要するに、于洋たちは石堅の手のひらで踊らされていたに過ぎなかったのだ。
金塊が偽物であると知った于洋たちを始末すべく、石堅は大勢の追っ手を動員して2人を捕まえた。処刑の直前に于洋は「待ってくれ…タバコが吸いたいんだ」と最後の願いをする…。だが、これこそが于洋の隠し玉・タバコ爆弾だった!
爆発に乗じて形勢逆転した2人は最後に残った石堅と戦う。だが、その背後には警察の追及が迫りつつあった…。

▲本作は『石破天驚』同様、絡み役が馮克安・太保・袁信義・任世官・黄蝦・李超・元奎・袁祥仁・そしてユンピョウと、かなり豪華な連中が揃っている(袁祥仁だけどこにいたかは解らなかったが…)。『石破天驚』ではラスボスが田豊だったのでイマイチ締りが無い感じだったが、本作では石堅が貫禄を見せており、クライマックスのバトルでは激しい立ち回りを演じていた。
それだけでも見どころに足り得るが、本作で1番の特色はなんといっても午馬が強い(!)ということにある。午馬は『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』でも強い役を演じたが、そんな彼がバリバリの功夫アクションで戦う姿は結構新鮮に見える。本作では于洋と対等に戦い、午馬VS袁信義や午馬VS馮克安という奇天烈なバトルを展開しているのだ(しかも勝ちます)!
それ以外にはこっそりと于洋VS任世官なんてレア対決もあり、ストーリーもオチが小気味良くスッキリしている(もっとも、于洋の独特な髪の解き方を見るに、洋画か何かに元ネタとなったストーリーがありそう)。
なお、ジャッキーは私の見る限り出ていないようです。

『神腿鐵扇功』

2007-11-01 22:25:47 | カンフー映画:佳作
神腿鐵扇功
Snuff Bottle Connection
1977

●この映画は呉思遠(ン・シー・エン)によって『酔拳』『蛇拳』の前に製作された作品である。スタッフも武術指導が袁和平(ユエン・ウーピン)と徐蝦、出演も劉忠良(ジョン・リュウ)&黄正利の『南拳北腿』コンビが、その他に『蛇拳』の宣教師であるロイ・ホランや『秘法・睡拳』の黄一龍などの顔が揃っている。
話は英語吹替え字幕無しのものを見たので詳しくは解らないが、時代設定は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明』ぐらいの頃のようだ。ある密命を受けた劉忠良がスリで弟分の葉飛楊(と黄一龍)と協力し、ロシア使節団を率いるロイ・ホランの銃を狙う(?)。だが、真の敵は密命を言い渡した黄正利その人だった。
真実を知った二人に黄正利らの間の手が迫り、劉忠良の仲間たちも殺されてしまった。その後劉忠良はあえて黄正利に近付いてその狙いを看破。しかし劉忠良のいない間に葉飛楊が襲撃を受けてしまった。治療のために身を隠すが、その隙を狙ってロイ・ホランらの刺客に黄一龍が殺される。劉忠良と葉飛楊は全てのケリをつけるべく、黄正利とロイ・ホランたちに戦いを挑む!
主演の葉飛楊は"華の無い孟飛"な感じで地味だったが(これ以後目立った出演作が無いところを見ると、あまり売れなかったのか?)、劉忠良は得意の足技と次々と披露しており、クライマックスでの劉忠良&葉飛楊VS黄正利では見事な技のアンサンブルが楽しめる。やはり袁和平が指導していると功夫アクションは安心して見られるなぁ…。絡み役に元彪や元奎に銭月笙という豪華なメンツも見逃せないところでもあります(元奎はザコながら、ちょっとオイシイ役で登場します)が、本作の難点は話が良く解らない点だ。
ややこしい展開が続くのでビジュアルだけで判断するには解りづらい箇所があり、もっとストーリーが把握できていたら更に楽しめたと思うのだが…これだけはちびっと残念でした。

『Angry Tiger/Spirits of Bruce Lee』

2007-10-24 22:55:02 | カンフー映画:佳作
Angry Tiger/Spirits of Bruce Lee
製作:1973年

▼李小龍が香港を席巻した頃、多くのバッタもんスターが現れた。が、バッタもんとまではいかずとも、李小龍的なアプローチを試みた既存のスターたちもいた。白彪、田鵬、そして本作の主演である陳惠敏(チャーリー・チャン)もそうだった。彼の場合は日本初お目見えとなった『空手ヘラクレス』の時からそんな感じで、『空手ヘラクレス』は拳を封印した陳惠敏が楊斯を倒すという薄っぺらい『ドラゴン危機一発』的な作品だった。
そしてこの映画も同じ様に『危機一発』の要素を持ち込んだものである。なにしろ『危機一発』同様にタイ(フィリピン?)で撮影されているからだ。熱気ムンムンのド田舎で濃い顔の男どもを陳惠敏が倒す本作は『危機一発』を髣髴とさせる。中文タイトルが不明で、もしかすると本作はタイ映画の可能性も考えられるが…。

■タイへ兄を探して降り立った陳惠敏は、そこで悪党を蹴散らす現地のナイスガイと出会った。
しかし兄は行方不明となっており、陳惠敏は兄を探してタイの地を放浪する。その後、滞在しているホテルの支配人のつてで華僑のおじさんと知り合えた陳惠敏。おじさんの家は喫茶店を経営しており、そこには都合よく可愛い娘(仮にタイの苗可秀と呼称します)もいたりした。
ところが従業員のデブが兄のペンダントを持っているではないか?デブとタイの苗可秀曰く、陳惠敏の兄は必死に何かを伝えようとしながら事切れ、2人にペンダントを渡したという。埋葬されていた兄と対面し、悲しみに暮れる陳惠敏は、必ず仇を討つと墓前で誓うのだった。
 それからおじさんの家へお世話になることになった陳惠敏だが、とある賭け事で兄の時計を担保として出している男を発見!そいつを問い詰めたところ「別の男からもらった」と言う。その時計を譲ったオヤジに「兄貴を殺したのは貴様か!?」と詰め寄る陳惠敏。オヤジが言うには"ミン・パン・チェン"という名のボスの命令でやったと白状した。
"ミン・パン・チェン"は功夫使いの手下を多く保有する悪党の親玉で、陳惠敏はタイの苗可秀らを巻き込みたくないと申し出るが、あくまでおじさんは協力すると言ってくれた。が、そんないい人たちを巻き添えにしないように、陳惠敏は皆が寝静まった夜に行動を開始した。
 敵の屋敷に潜入する陳惠敏(ちょっと『燃えよドラゴン』っぽい)。しかしボスを討ち損ね、なんとか屋敷からナイスガイの手を借りて脱出に成功した。一方で敵も黙っておらず、おじさんの家に火を放ったが、一行は既に脱出していて事なきを得た。「俺のとばっちりでこんなことに…!」足に怪我を負っている陳惠敏は涙を呑んだ。
そこからナイスガイの屋敷探索を挟んで(ナイスガイはやっぱり潜入捜査官だった!)、ついに傷の癒えた陳惠敏はおじさん一行と共に(笑)敵の本拠へと乗り込む!
 どうにかボスを打ち倒すがおじさんがやられ、更に敵に取り囲まれる陳惠敏一行!東映カラテ映画のようなムチ使いと日本人武道家(ただの浴衣着たおっさん)とのバトルの行方は…!?

▲本作を一言で表すなら、「綺麗な陳惠敏主演作」といったところだろう。
陳惠敏の主演作にはドロドロとしたエロいシーン、敵味方が容赦なく殺される、陳惠敏自身も役柄があまりいいものではない、そもそもストーリーが陰惨…といった点が挙げられる。ところが面白い事に、本作にはそれらの要素が全く無いのだ!死んでるのは敵ばかりで、味方の犠牲もラストまで最小限に抑えられている。
そればかりかアットホームな雰囲気のおじさん一行とのやりとり、『ドラゴン危機一発』とは間逆のエンディングなど、いつもの陳惠敏作品にはなかったポイントが多く見られる。アクション・ストーリー共にあまりいいものではないが、彼の作品としてはかなり小奇麗な一本だ。正直同じ『危機一発』的な作品としては『空手ヘラクレス』より本作が好きかな?

『一網打盡/一網打尽』

2007-10-20 21:39:39 | カンフー映画:佳作
一網打盡/一網打尽
英題:The Thunder Kick
製作:1974年

▼功夫映画ドキュメンタリー『死闘伝説TRUBO!!』で最初にスタッフロールと共に流れるアクションシーンがある。染野行雄と濃い顔の李錦坤(ラリー・リー)が一進一退のバトルを繰り広げ、その場面は本編中にも李錦坤の項で再び登場する。実は本作こそがそのシーンがある映画で、監督は大怪作『癲螳螂』の葉榮祖が担当している。

■橋で通行料を搾り取っているチンピラどものところへ李錦坤が通りかかり、あっという間に連中を蹴散らした。しかし李錦坤の母は「ケンカはしないで」と嘆く…その裏にはかつて死んだ李錦坤の父の事があった。
ここまでの流れはいわゆる『ドラゴン危機一発』風だ。ケンカはしないと誓った主人公が拳を振るえず、悪党によって仲間や家族に間の手が伸び、そこでようやく主人公が立ち上がるというものだ。李小龍がブレイクした当時にバッタもん李小龍が横行したが、同様に李小龍の作品スタイルを倣った作品も数多く生まれた。それが『ドラゴン怒りの鉄拳』的な反日映画だったり、『ドラゴン危機一発』的な功夫片だった。本作の場合はここからがちょっと違うのだ。
 さて、その後チンピラどもが李錦坤のお礼参りに現れた。今度は用心棒の楊斯(ヤン・スェ)も一緒だが、ちょうど李錦坤の父を尋ねてきた南宮勲(ナン・ゴンクン)とお供の火星(マース)が立ち上がった。続いて李錦坤も加勢して勝負は決し、李錦坤と南宮勲は改めて墓前で父を弔うのだった。
その後も南宮勲と親交を深める李錦坤とその家族だが、さる事情から南宮勲は彼らの元から去っていった(理由は不明)。そして実家(?)へと帰ってきた南宮勲だが、そこに染野さんら3人組の悪党が現れた。
 染野さんは『龍の忍者』で真田広之に耳を切られた少林僧の役が有名だが、他にも数多くの仕事をこなしている。活動の本拠が台湾だったためか日本ではあまり知られていないが、映画出演以外にも台湾で自身の映画会社を起こし、『ゴーストパワーを持つ少女』などを製作し、現在は『忍者潜龍』のDVDインタビューで語られた豪華キャストによる大作、『大龍七戦』を製作中との事。
そんな染野さん一味に南宮勲が殺され、火星から訃報を聞いた李錦坤はさっそく染野の仕切る賭場へと偵察に向かった。そこでは日常的にイカサマが行われ、染野は不当な利益を貪っている。また、染野の手下である黄培基は阿片を横行させ、別の手下は身売りされた女を使って娼館を経営したりと、非道の限りを尽くしていた。かくして李錦坤は、黄培基・もう1人の手下・そして染野さんを次々と撃破し、南宮勲の仇を討つのだった。

▲生かし切れていない、という感じがする。李錦坤は相当な実力者である事が『死闘伝説TRUBO!!』で語られているが、本作での殺陣は全体的に思い切りが無く、非常にもっさりとしている。悪くはないが良くもなく、たまに目を見張るような連続蹴りが出てくるが、全体的にペースが守られていないのだ(見どころもラストバトルぐらい)。
クライマックスでの絡み役には劉家榮(!)・馮克安・袁信義といった凄いメンバーが確認できる。出演している黄培基もショウブラで武師の経験があり、武術指導も彼らが担当したのではないかと思われるが、私の所持しているバージョンはスタッフ等のクレジットが無いものだったため、よくわからない。その半端さ加減は作品でも生じており、特にこれといった山場も無いまま終幕している。
 総括すると「もうちょっと贅沢を言ってもいいのでは?」と思うところ。この面子ならもっとグレードの高いものが望めたと思うのだが。胃もたれがするほど濃い風体の李錦坤(笑)についてはこれからに期待か?

『功夫小子』

2007-10-19 21:28:57 | カンフー映画:佳作
功夫小子
英題:He Has Nothing But Kung Fu
製作:1977年

▼のちに様々な作品を世に送り出す劉家榮(リュウ・チャーヨン)の初監督作だ。実は彼の作品であまり面白いと思うようなものに出会ったことが無く、『魔宮拳』では劉家輝が劉家榮をこき使いまくって宝探しに利用し、『破戒大師』では逆に劉家輝が散々劉家勇らに振り回され、周潤發が悪役出演した『復讐は夢からはじまる』は文字通りのごった煮映画であった。
ちなみに彼の作品の中でも有数のヒット作である『魔界天使』もちょっと好きじゃないです。というのも、ホラーコメディと謳ってはいるがパッケージには気色の悪いメイクをしたゾンビみたいなのが大量に…それが気色悪くて、今も手に取っていない状態が続いています。
これ以外にはまだショウブラで監督した作品などが残っているが、本作はそんな彼の初監督作。色々と興味のあるところだが…?

■話はケチで調子のいい乞食坊主の汪禹(ワン・ユー…それにしても彼ってこんな役ばかりですねぇ)の七転八倒を描いている。金儲けに目の無い汪禹は方々で問題を起こすが、ある日記憶喪失の男・劉家輝と出会う。フーアムアイだが功夫の腕はかなり強い劉家輝に目をつけた汪禹は、劉家輝と共に功夫の修行をしながらも、以前痛い目に合わされた唐偉成の賭場でお礼参りに乱闘したりと相変わらずの調子のよさを見せる。
その後、汪禹と劉家輝は劉家輝の失われた記憶を探して旅をしていくのだが、その過程で劉家輝は良家の男で、江島の差し金によって放たれた刺客の唐偉成と銭月笙に谷へと突き落とされた事が発覚する。記憶の断片を探りながら迫り来る敵を撃破していく劉家輝と汪禹は、徐々に真相へ近付いていく…。

▲ストーリーの筋としてはこれだけだが、それにしても劉家榮は"珍道中"という展開が好きである。『魔宮拳』では劉家輝・李海生・劉家榮のトリオが羅烈を探し歩き、『破戒大師』では劉家輝・劉家勇・曾志偉のトリオが追いつつ追われながら機密文書を求めた。また、サモハンと共同で製作した『燃えよデブゴン/豚だカップル拳』も劉家榮とサモハンが互いに技を競い合いながら梁家仁と闘っていた。
本作はそれらの原点といってもいい作品だが、処女作だけに話は間延びしていたりとボチボチの出来だ。功夫アクションは天下の劉氏兄弟によるハイレベルな殺陣で、各所に李海生・劉家榮・唐偉成などといった劉氏系ではおなじみの猛者とのバトルを挟んで飽きさせない作りになっている。
しかし上記に物語の大体は解説してあるが、細部が解らずちょっともどかしい。ぜひとも日本語字幕入りで見直してみたいところだ。

『少林寺武者房』

2007-09-20 21:05:46 | カンフー映画:佳作
「少林寺武者房」
原題:少林與武當
英題:Shaolin and Wu Tang/Shaolin VS Wu Tang
製作:1984年

●劉家輝(リュウ・チャーフィー)がショウブラではない外部のプロダクションで製作した初監督作品である。とはいえ、共演者は王龍威や鄭少秋(アダム・チェン)に李海生などのショウブラ系列のスタッフでまとめられている。印象としては、ミニマムなショウブラ作品といった趣きだ。
 少林派(日本版では金剛派)の劉家輝と武當派の鄭少秋は、互いの親が流派違いで対立してばかりだが大の親友だった。しかし少林派と武當派の武術を研究していた清朝の王龍威は技を盗もうと画策。鄭少秋の父を茶会に招待したと見せかけて毒を盛り、鄭少秋の父は自ら鄭少秋の剣に貫かれて死んでしまう。
鄭少秋も投獄されるが、危機を救うべく劉家輝が潜入。彼と同室だった行きずりの女に鄭少秋を治療させて、見事脱出に成功した。劉家輝とその妹、鄭少秋と行きずりの女は逃走を続けるが、劉家輝の妹の勘違い気味の報告によって劉家輝と鄭少秋の間に亀裂が生じ始める。
 だが、王龍威軍団の襲撃によって劉家輝の妹が命を落としてしまう。そこに武當派が現れて父を殺した鄭少秋を連れて行くのだが、そこだけ見た劉家輝は武當派が自分の妹を殺したと勘違い。一路復讐のために少林寺へ行き、修行を重ねる。一方、武當派で尋問を受けた鄭少秋も更なる技に磨きをかける。
時は流れ、一流の武術家になった劉家輝は王龍威の親善試合へ出場すべく、李海生と戦いこれを打倒する。そして少林派と武當派それぞれの代表が相対するのだが、武當派の代表は鄭少秋だった…。
 正統派の功夫片を次々と打ち出した劉家良、変則的な作品で新たな香港映画を形作った劉家榮ら兄とは違い、この劉家輝の作品作りは至って平凡だ。ラストは駄々っ子の王龍威(笑)を説き伏せ、少林派と武當派が和解するというオチで終わるのだが、王龍威が生きたままだと死んでいった劉家輝の妹と鄭少秋の父が全然浮かばれない気がする。個人的には鄭少秋の話に聞く耳を持たない武當派もヤな感じだったし(理念は解るが、これだと利用されっぱなしで後味が悪い)、だいぶアラも目立った。
修行シーンは『少林寺三十六房』などの焼き増しで、中にはオリジナルそのまんまな修行も登場する。アクションは劉氏兄弟が担当したので文句なしだが、あまり劉家輝監督作としての特色が見い出せず、兄たちの作品へ「右へ倣え」としたようで印象は薄い。
ちなみに冒頭の劇中登場しない謎の男たちによる演舞は、"少林派から独立した武當派の成り立ち"を説明したもの。ここらへんもちょっと劉家良チックな演出でしたね。

『黄飛鴻四大弟子』

2007-09-17 23:31:27 | カンフー映画:佳作
黄飛鴻四大弟子
英題:The Four Shaolin Challengers
製作:1977年

●黄飛鴻とは、香港映画ファンにとっては説明不要の中華英雄である。その下には5人の弟子たちがいて、黄飛鴻と共に幾度も銀幕に姿を現している。梁寛を筆頭に、肉屋の林世榮、凌雲楷、出っ歯の暴牙蘇、鬼脚七らは、それぞれ名だたる演者たちが扮してきた。そして今回のこの作品はその弟子たちが活躍する物語である…とは言っても、タイトルにあるとおり1人だけ(暴牙蘇が)戦力外通告をされる事になるのだが(爆
本作で登場する弟子たちを演じているのは李錦坤(ラリー・リー)、梁小龍(ブルース・リャン)、白彪(バイ・ピョウ)、黄元申(ウォン・ヤンスン)という、豪華なのか地味なのか微妙なメンバーだ。というか、いつもデブな人が扮している林世榮を李錦坤が演じている点が納得できないような…(林世榮はサモハンや呉明才などといった太目の人がよく扮する)。
ちなみに主役格の出演者の中で1人だけよく解らない人がいる…李錦坤だ。梁小龍は言わずもがな、白彪や黄元申は日本公開作もある中で、ただ1人この人だけは詳しい事が不明なのだ。しかもトビー・ラッセルの『死闘伝説TRUBO!!』では「ブルース・リーの跡継ぎになれたかもしれない人」として大フューチャーされて紹介されている。恐らくは海外で人気があるのだろうが、気になるところである。
 話は、黄飛鴻門下である李錦坤の道場が悪党どもに悩まされていて、彼を助けに梁小龍・白彪・黄元申たちが立ち上がるというもの。黄飛鴻があまり出てこないところを見ると、本作は4人の弟子たちがそれぞれ独立した後のことを描いているのだろうか?
物語はその後、敵の親玉であるヒゲオヤジが4人の助っ人(リーダー格が『激突!キング・オブ・カンフー』で高雄の道場破りに来た男)を呼び、最終的に全面対決となる。しかしこのクライマックス以外は、本作のアクションは総じてあまり良い出来ではないのだ。
 もともと全体的に功夫アクションも少なめな本作は、ストーリーもこれといったインパクトは無く進んでいく。しかしメインとなるのが黄飛鴻の4大弟子なんだし、アクションを控えめにしたせいで本末転倒な結果に終わってしまっている。その代わりクライマックスでは各人とものびのびと激闘を繰り広げているが、これもちょっと長いような気がする。要するに本作は、功夫アクションの配分が悪かったというところだろう(武術指導は黄梅と黄志強)。
味付け次第では大化けした可能性もあっただろうが、残念ながら佳作止まりか。

『名單/黒名單』

2007-09-15 22:14:47 | カンフー映画:佳作
名單/黒名單
英題:Black List/Ninja Heat/Ninja Terminator
製作:1972年

●かつて、ショウ・ブラザーズでしがない中堅俳優としてくすぶっていた陳星(チェン・シン)は、呉思遠と出会って『蕩寇灘』『餓虎狂龍』『猛虎下山』等の作品で才能を開花させ、一躍功夫スターとなった。その後も渋い顔立ちとマッチョな体格から繰り出される力強い技の数々は、多くの功夫映画に足跡を残している。
『新精武門』でジャッキーと闘い、『怒れるドラゴン・不死身の四天王』ではジミー先生を差し置いて鹿村泰祥と激突を繰り広げ、日本でもそこそこ知名度のある陳星…本作はそんな彼が最も輝いていた時期に作られた作品で、自身のイメージにぴったりの無骨な作りとなっている。
 ひとり刑務所を後にした陳星。そこに弟の于洋(ユー・ヤン)が現れる。于洋は「アニキはハメられたんだ!アニキを刑務所に放り込んだ連中はこいつらだ!」と陳星に訴える。于洋から手渡された紙には于洋が洗い出した幾人かの敵の名前があり、陳星は怒りに震えつつ自分を刑務所送りにした悪党どもに復讐を誓うのであった。
出だしは、陳星の標的となる面々が顔見せがてらにアクションを披露するのだが、その顔ぶれもなかなか渋い面子ばかり…というか暑苦しい連中ばかりだ(爆)。オープニングの登場順に陳惠敏(チャーリー・チャン)、山怪(サムソン・カイ)、方野、陳元(チェン・ユアン)らが現れ、視聴者にその実力を見せつけていく。ターゲットはこの4人…陳星は于洋と共に死出の旅路に出立した。
最初に陳星らは山怪を撃破し、陳元も根城であるビリヤード場に踏み込んで仕留めた。陳惠敏は先手を打って陳星を捕らえるが、脱出を許し逆襲を受けて倒れた。残るは陳星の恋人を奪った方野のみだが…?
 絡み役には李文泰(リー・マンチン…山怪の手下でバーテン役)、李家鼎(リー・ガーデン…陳元の手下)、陳流(陳惠敏の手下)、更には梁小龍(ブルース・リャン…山怪の手下としてクラブの乱闘に参加)まで登場していてなかなか豪華。梁小龍についてはいまいち確かではないが、陳惠敏や陳元や李家鼎ともども、陳星の『餓虎狂龍』で共演しているので、その縁でちょっとだけ本作に出演したのではないかと思われる。
アクションは制作年代を考慮しても結構な出来映えで、ストーリーも単なる復讐劇ではなく西部劇タッチのハードボイルドな作風だ。悪役に対しての扱いも含めて興味深いものがある(形はそれぞれだが敵にも守るべきものがあり、みんな最後はそれに手を伸ばして死んでいく…まぁ元ネタはありそうですが)。根本こそ『太極八蚊』『胡惠乾血戰西禅寺』と同じ"辻斬りの旅"なので至極単純ではあるが、要は味付け次第ということですね。
 なお、上記画像は本作のものですが、内容と全然関連性がないバカジャケでして…まぁ言わなくても解りますね?(爆

『雌雄雙殺』

2007-09-07 22:45:29 | カンフー映画:佳作
雌雄雙殺
英題:The Two Great Cavaliers/Deadly Duo/Blade of Fury
製作:1978年

●(殺の字は旧漢字体が正字です)
かねてより自分が海外から功夫映画のDVDを仕入れている事は、このサイトのいくつものレビューを見てもらえば分かると思いますが、その中に色々な功夫映画の予告編をしこたま詰め込んだものもあったりします。その中には手を伸ばせる範囲の通販では入手できないものもあったりしまして、非常に歯痒い思いをしていた事がありました。それも今回購入した『Martial Arts 50 Movie Pack』で一部解決したのでひと段落ですが、今回紹介するこの映画も、これまで予告編だけ見るだけで中々手に入れることはできなかった気になる作品でありました。
本作は劉忠良(ジョン・リュウ)&茅瑛(アンジェラ・マオ)主演作で、トレーラーに於いてこの2人が陳星(チェン・シン)を相手取ってボコズコと豪快に蹴りをかますシーンで虜となり、今までずっと見たくてしょうがなかった一本でした。この他に梁家仁や聞江龍といったB級功夫映画おなじみの顔が飛び出す本作、果たして私が期待したような凄い作品だったのか否か…??
 …で、肝心の物語ですが、なんとも複雑な武侠片でございました(笑
密書とその行方を知る男の行方を知る謎の老人を巡る物語(長っ!)で、英語吹替えではいまいち劉忠良と茅瑛らのグループの関係がよく分かりませんでした。しかも噴出する裏切りのドラマでストーリーは非常にややこしい作りになっていて、敢えて形容すると「難解な『蛇鶴八拳』」という感じです(密書を巡る物語も蛇鶴八歩の密書を巡る物語を連想させますし)。
「一匹狼な武芸者で婚約者を持つ劉忠良」「その劉忠良に好意を寄せていた茅瑛」「その仲間で兄弟を劉忠良に殺された(と思い込んでいる)男」「敵か味方か謎多き銀色の剣客・聞江龍」「病床に伏せる物語のキーマン、梁家仁」「密書を手にしようとする大ボス陳星」と、キャラクターの奥行きも『蛇鶴八拳』のようにバラエティに富み、ちょっと置いてきぼりを喰らうこともありはしますが、巧みな功夫アクションが手伝って何とか楽しむ事ができました。
 劉忠良・茅瑛・陳星・聞江龍・梁家仁らが絡むアクションはもちろん見事な出来で、トランポリンを使った武侠片らしい動作と主演の劉忠良が披露する見事な足技は違和感無く馴染んでいて、とても見ごたえがあります。主演は若干劉忠良より茅瑛寄りなので、アクションの比重はどちらかというと茅瑛に集中している気がしますが、陳星一味との乱戦になるクライマックスからは終始毒でラリっていた梁家仁も復活し、劉忠良も相変わらず見事な脚技をビシバシ決めていました。
そしてそして、待っていました劉忠良&茅瑛Vs陳星!冒頭で主演とされながら出番がオープニングとラストだけという陳星(爆)、今回の彼は一撃で相手を瀕死にさせる毒の手が武器。劉忠良と茅瑛もそれぞれ一撃ずつ喰らってしまい、一時は追い詰められます。が、梁家仁を匿っていた老人が死を賭して陳星の動きを抑え、そこを劉忠良と茅瑛と梁家仁が3人がかりでトドメを…あれ?予告編にあったあの怒涛のダブルマシンガンキックのシーンが無い?まさかDVD収録の際にカットされたのか!?そういえばラストの一騎打ちがやけに短い気がしたけど…そ、そんなぁ!!
 すいません、凄いラストバトルを期待していただけあって期待外れでした…。兎にも角にも、後日ちゃんとしたカットが少ないバージョンでも入手できましたら、レビューをし直そうかと思います…。

『太極八蚊』

2007-08-26 22:42:54 | カンフー映画:佳作
太極八蚊
Shaolin Deadly Kicks/Flash Legs/Deadly Kick, Flash Legs
1977

●過去にも『少林門』など主演作を紹介している譚道良(タン・タオリャン)主演作で、台湾系の俳優が集まったオールスター作品でもある。まずは冒頭の盗賊団がある屋敷を襲い、そこから宝物を盗み出す場面からはじまるのだが、登場する面子が羅烈(ロー・リェ)、金剛(カム・コン)、龍飛(ロン・フェイ)、蔡弘とそうそうたる顔ぶれだ。
彼らはその宝物を分解して持ち去り、3年後に再会するよう打ち合わせた。その後、別件で盗賊団の1人が逮捕され、牢屋へと放り込まれた。ここでようやく譚道良が登場し、盗賊団の1人と相部屋である譚道良は、別室の囚人・陳慧樓(チェン・ウェイロー)の「お宝があるんだ!脱走したら掘り出そうぜ!」との誘いに乗り、共謀して脱獄を図った。
その後盗賊団の1人は仲間と共に陳慧樓の指揮で宝を掘り出そうとする。だが、これは潜入捜査官・譚道良の仕組んだ事で、仲間の刑事と合流した譚道良は盗賊団の1人とその仲間から宝物のかけらを奪取した。陳慧樓と刑事はやられたが、譚道良は更なる奪還に向けて旅立つのだった。
そこから譚道良は、3年後の再開を待ってカタギに身をやつした盗賊団たちと宝物を賭けて戦うことになる。まずは金剛と、次いで龍君兒(ロン・ジェンエール…ジャッキーの『天中拳』でヒロインを演じた人)と遭遇しつつ蔡弘&龍飛らと闘っていく譚道良。どうでもいいが今回の蔡弘は堺正章そっくりである(笑
続いて譚道良は龍飛を匿った同じ盗賊団の一員・王侠と対峙したが、王侠は鄭富雄(チェン・フーシェン)ら大勢の仲間を従え、譚道良を捕らえてしまう。しかも王侠は宝物の独り占めを画策し、龍飛を自慢の仕込み刀で殺害した。そこから脱出した譚道良は再び舞い戻り王侠に戦いを挑む。引っ張っていた割には弱かった王侠を倒す譚道良だが、自身も重傷を負ってしまい、山道で行き倒れとなってしまった。
そんな譚道良を助けたのは先の龍君兒だった。しかし運命とは数奇なもので(ご都合的とも言う)、龍君兒の父はかの盗賊団のリーダー格であった。密かに譚道良の殺害を目論む龍君兒の父…しかし龍君兒が譚道良に思いを寄せていることを知ってその手を止めた。迷う龍君兒の父だが、そこに羅烈が現れた。さっさと譚道良を殺そうとする羅烈と、娘の事を思って行動できない龍君兒の父は対立するが…。
その頃、譚道良と龍君兒の距離は縮まり、譚道良は自分が秘密捜査官である事を明かす。しかし業を煮やした羅烈によって龍君兒の父が殺害されてしまった。宝物のかけら全てを奪い逃走した羅烈を追う譚道良と龍君兒!そして全て集まった宝物は、大いなる財宝を開く鍵でもあった。財宝を目前にして、譚道良&龍君兒と羅烈の死闘が始まる!
話のテンポが龍君兒に助けられた辺りからガクッと落ちてしまうのが残念だが、話としては別段悪くはない。本作の監督は午馬(ウー・マ)で、このほかにもいくつか監督作がある。ちなみにその昔、彼が巨匠・張徹と共に仕事をしていた事はあまり知られていない。最後のオチがよくわからなかったが(「欲は身を滅ぼす」という事?)、譚道良の巧みな足技も堪能できる佳作。なかなか面白かったです。