指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『わが愛北海道』

2007年04月28日 | 映画
続いて1962年、北海道電力の北海道の紹介映画。
北海道に来た若い男(経済カウンセラーと言っているが、今日で言えばコンサルタントだろう)が各都市を紹介する。
そこに小樽の長靴工場の娘及川久美子への愛が挿入される。
言わば、及川へのラブレターのように各地の産業、歴史が紹介される。
これは、言うまでもなくアラン・レネの映画『24時間の情事』の原題が『わが愛、ヒロシマ』であるのに拠っている。

1960年代の高度成長、重化学工業全盛時代で、夕張の石炭、根室のパイロット・ファームや酪農、室蘭の製鉄、漁業をはじめ各産業が賛美されるのが、今日の惨状を見ると大変に皮肉。
映像がとても美しく、また展開と飛躍が快く、現地の人たちの表情も良い。

主演の及川久美子(真理明美)が生き生きとしていて大変可愛いい。
彼女は松竹の社運をかけた『風と共に去りぬ』のような、大オーディション映画『モンローのような女』に、見事1位合格してスターになり、監督須川栄三と結婚し、後に須川の映画制作にも大きく貢献した。
彼女は、ルックスは素晴らしいが、台詞と声が駄目で、女優としては大成できなかった。ただ、加藤泰の名作で安藤昇主演の『男の顔は履歴書』では、伊丹十三の恋人の朝鮮人女で出て、これは大変印象的だった。

木村功のナレーションの口調は抑制的だが、表現は大変テンションの高い、詩的なもので、最後にタイトルを見ると清水邦夫。
さすがにすごいナレーションだった。

音楽松村偵三、助監督東陽一、小川伸介。
すごいスタッフで作っていた作品なのだ。
会場には東陽一監督も来ていた。

最後のテレビ用の『群馬県』は、正統的な紹介映画だが、カメラが鈴木達夫で微細な描写がさすがである。


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