指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『追いつめる』

2021年02月11日 | 映画
1972年の松竹映画、主演は田宮二郎、渡哲也。2年前に大映はつぶれ、日活はポルノに移行していたので、この二人に高橋英樹、松坂慶子は松竹に出ていた。
監督も元日活の舛田利雄で、原作は生島治郎、脚本は野上竜雄。元は、日活で小林旭主演で撮るものだったとのこと。

           

横浜の神奈川県警の暴力団担当の刑事が田宮二郎、ヤクザの組員で浜崎組(永田靖)のナンバー3が渡哲也、一番は頭脳派の佐藤慶で、二番は武闘専門の睦五郎。
渡は、対立する組への殴り込みで逮捕され、出てきたところから始まる。
渡と田宮は、対立しつつ、共同するところは、日活的だと言える。
田宮二郎の妻は、横浜の港湾荷役会社の社長渥美国泰の娘の生田悦子、渡哲也の情婦は、倍賞美津子だったが、今は睦五郎の女になっていて、横浜の大岡川沿いでトルコ風呂(この頃はまだソープランドにはなっていなかったはずだ)をやっている。
田宮の上司の課長が鈴木瑞穂、部下で田宮の放った拳銃の誤射で下半身不随になってしまうのは藤竜也、その妻は吉行和子と旧日活勢が多い。
組の手下が殺され、その拳銃を捜査してゆく中で、田宮と渡の付き合いが始まる。渡は、倍賞を取られたことで、睦五郎に復讐しようとしている。

田宮と鈴木が会うのは、貨物の高島駅で、当時はまだ荷役作業をやっている。さらに、最後の方で、レンター会社の柳瀬志郎のスポーツカーを暴走させて渡は脅すが、場所は新興埠頭の1号と2号倉庫の間で、盛んに荷役作業が行われている。この辺の映像も今日では貴重。
渡は、睦が、子安の漁業組合の家に潜んでいることを聞き出す。ここで、渡は睦に、「組の不法行為をノートしておけ」と言う。
この辺の互いに裏切り合っているのも珍しく、これは日活的でもなく、原作の生島のアメリカのハードボイルド小説的だと言える。
倍賞は、渡への代償としてトルコ風呂で殺されて、風呂は赤い血で染まる。
最後、佐藤慶と睦五郎は、田宮と渡の手で掴まり、組の悪事も暴かれて組長の永田は死んでしまう。
盛大な葬式に来た田宮二郎に渡哲也は、言う。
「今度は俺が組長になるんだ」
松竹を日活が乗っ取ったようなアクション映画で、役者も日活から活劇ができる者達を連れて行ったとのこと。
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