先日、亡くなられた堀川弘通監督の1959年の東宝映画、70分と短いもので、軽い青春映画である。
主人公は、雑誌社の編集部に勤めている司葉子で、年上の編集長森雅之との恋、さらに同僚の杉葉子との三角関係的な付き合い、同じく編集部員の太刀川洋一が、司の姉で人妻の津島恵子に傾くが、叶わぬ恋に終わることを描く。
司葉子は、この映画で、年上の中年男に憧れる女性を演じるが、実際に彼女は、いろいろの噂があった後、かなり年上の相沢英之氏と結婚したが、この映画は彼女の将来を予測したことになる。
堀川監督は、意外にも、結構変わった撮り方をしていた。
喫茶店のカウンターに並んだ男女のシーンで、普通は二人を画面に入れるが、そうはせず、一人の表情のアップにして、オフで相手の台詞を言わせている。堀川は、きわめてオーソドックスな表現をする人だが、この時期は結構新しいことをしようとしていたようだ。
作品としては、女優は、司葉子の他、杉葉子、津島恵子、司の姪で星由里子などが出ている。だが、男は森雅之は出ているが、メインが少々失礼だが太刀川洋一という脇役なので、あまり盛り上がらない。
その分を、司の義兄で、人気小説家笠智衆の息子の多川譲二と少女の富永ユキが受け持つ。富永ユキは、大島渚の『愛と希望の町』の主人公の少女であり、少女ロカビリー歌手である。
推測すると、この太刀川洋一の役は、本当は宝田明だったのだが(主題歌は宝田が歌っている)、何かの理由でダメになり、太刀川に代わって、作品の長さも短くなったのではないかと思う。
司と宝田なら、当時の最高の人気コンビである。
だが、この作品での司葉子は実に美しく、同僚の杉葉子も大変きれいで、「昔は美人女優がいたなあ」とあらためて思う。
この雑誌編集部の、司葉子や杉葉子の、「男言葉」の感じは、後に1962年の鈴木英夫の傑作『その場所に女ありて』の広告代理店の雰囲気になったのではないかと思う。
新文芸坐