猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

「正しく恐れる」とは意味不明、こわがって良い、新型コロナウイルス

2020-03-12 19:53:47 | 新型コロナウイルス

新型コロナウイルスの流行を迎え、「正しく恐れる」と言うコメンテーターや解説者が、また出てきた。この言葉を2011年の東日本大震災での原発事故で、私は、はじめて聞いたが、この「正しく恐れる」というのが、いまだに、何なのか まったくわからない。

昨夜、田園都市線で私のそばでゴホンゴホンと咳をするマスクの男がいた。その晩、私は寝苦しかった。
朝になって、「正しく恐れる」とは何か、ネットで調べると、もともと「正しく こわがることはむずかしい」という意味であった。

この言葉は、寺田虎彦の「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた」からくるらしい。
最初にネット上にあらわれたのは、2009年の新型インフルエンザ流行のときだという。

それが、原発事故後には、「災害や原発リスクについてより深い知識を得、状況を理解して対応する」という意味に転用され使われた。

これは、無理なことである。「こわがる」は情動反応であり、「正しく」は理性の判断である。「こわがる」を「恐れる」に変えたのは、「庶民は専門家の言う通りにしなさい」と政府が言いたかったからだ。「正しく恐れる」の言葉には悪意がひそんでいる。

じつは、「正しくこわがらない」は、精神医学では、「不安症群 Anxiety Disorders」のことをいう。しかし、それが病気かどうかの判断はとても難しいのである。アメリカ精神医学会の診断マニュアル DSM-5には次のように書かれている。

「恐怖は、現実の、または切迫していると感じる脅威に対する情動反応であり、一方、不安は、将来の脅威に対する予期である。」
「不安症群は、恐怖、不安が過剰であったり、発達的に適切な期間を越えて持続していることによって、発達的に正常な恐怖または不安と区別される。」
「不安症群をもつ人の中には、典型的には、恐怖または回避をする状況ではその危険を過剰に評価するので、恐怖または不安が過剰か、それに釣り合ったもの以上かという本質的決定は、文化的な文脈の諸要因を考慮しながら、臨床家によってなされる。」

すなわち、精神医学でも病気か否かの境界は曖昧なのである。「平均的な人」と情動反応が異なれば病気としているだけである。「正しくこわがる」とは無理なことである。

私は、NPOで「不安症群」やその傾向の子どもに接すると、その恐怖や不安を肯定してあげることにしている。

「正しくこわがらない」行動は、災害の分野では、「正常性バイアス」と呼ばれる。「自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性」のことを言う。東日本大震災でこの「こわがらない」ことの危険性が叫ばれた。

この大震災では、避難勧告・指示が出されても、消防団などが直接説得しても、大津波から逃げようとしない住民の数が驚くべきほど多かった。恐怖や不安がとても大きくなると、理由もなく「安全だ」と思い込もうと人間はするのだ。

福島第1原発事故を扱ったNHKの『メルトダウン』シリーズを見ると、すごい恐怖のなかで、原発作業員は楽観論にすがりはじめる。1号機の非常用の冷却装置(IC)が稼働していなかったのに、原子炉建屋のブタの鼻からもやもやの蒸気が出ている、大丈夫だと思いこんだ。じつは、ICの稼働訓練をしたことがなく、稼働させると天にとどろく轟音がをたてて蒸気が吹き出ることを誰も知らなかった。1号機につづいて、つぎつぎと他の原子炉もメルトダウンした。

政府は、「正しく恐れる」ことを国民に要求してはいけない。「こわがる」ことは、危険を回避するための正常な行動である。意味のない言葉を述べるのではなく、政府は、責任をもって、政府がすべきこと、診断と治療の医療体制をととのえることに全力を挙げるべきである。

国立感染症研究所は、感染の実態を調査し、感染や重症化のメカニズムを解き明かし、公表すべきである。中国の研究者のように論文を書いているのか。

政府が、最悪の場合、日本では、約2000万人が新型コロナウイルスに感染するとの予測を公表した。新型インフルエンザ流行では約1000万人が感染したと推定されていることから、これを2倍にしただけだろう。

正確な数値を私は求めているのではなく、これが国民を脅かすための数値ではなく、医療体制を構築するために現実に役立つことである。

新型コロナウイルスの致死率1%は、新型インフルエンザのときの0.1%より10倍も多い。また、高齢者や呼吸系疾患者や糖尿病患者が高リスク者というが、新型インフルエンザのときも同じことが言われていた。感染症一般に言われていることで、子どもや若者は死なないという迷信が生まれ、「こわがる」ことをやめては困る。

政府幹部のなかに、国益のため弱者に死んでもらう絶好のチャンスだと考えている者がいるのではないか、また、下の役人のなかに、「正常性バイアス」で自分だけは大丈夫だと安心して、上の指示通りに動いているフリをしている者がいるのではないか、いろいろと「不安」になる日々である。

[追記]
テレビに出てくる自民党議員や、番組によってはキャスターが新型コロナウイルスのPCR検査の精度を低いという。きょう、 3月13日の『報道1930』では元厚労相の田村憲久は7割だから、検査をしなくても良いと取れる発言をした。
この試薬は国立感染症研究所が開発し配布したものである。こんなに低いはずはないと思う。
外国製では95%から99%である。また、PCRで倍増したRNAをシーケンサーで塩基配列を決定すれば、理論上は100%である。だから、塩基配列を決定した場合は確定検査という。
国立感染症研究所も名誉のために反論したほうが良いと思う。

[追記]
新型コロナウイルス対策は昔ながらの感染者の隔離である。観光立国日本では、水際検疫が成功するはずがない。そして、今回それに失敗した。それなのに、安倍晋三は、中国や韓国からの入国制限強化を、あたかも有効な対策のように、2,3日前に宣言した。
分子生物学の進んだ現在、昔ながらの検疫・隔離だけで、新型コロナウイルス対策を行うのは時代錯誤だと思う。


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