ロシア軍のウクライナ侵攻で、ロシア語の使用にまで批判がいき、日本政府は、3月31日、ウクラナイの地名をロシア語読みからウクライナ語読みに変えることにした。そして、またくうちに、メディアやネットは、政府の指示にしたがい、ウクライナ地名の表記を変えてしまった。
これまで、キエフ、キイフ、キーウとあったものがキーウに、ドニエプルとあったものがドニプロとなった。
キーウやドニプロが別にウクライナ語であるわけではない。ウクライナでそう発音して通じるわけがない。政府発表ではウクラナイ語に近い日本語を選んだという控え目な言い方をしている。なのに、みんながすぐそれに従うとは、日本人は政府の権威に弱いのではないか、と心配になる。
きょうの朝日新聞の『(Sunday Wide)キエフとキーウの間に』で3人の論者の過去の発言をまとめているが、間淵洋子だけが、カタカナ表記の変わり身の早さに違和感を述べている。外国の地名をカタカナで表記するのはどだい無理である。
ウクライナの首都「キ-ウ」は、ウクラナイ語で“Київ”である。中沢英彦はこれを「クィーィイウ」とカタカナ書きしていて、日本人には発音が難しいから、「キーウ」でいいんじゃないのと言う。
「Ки」の部分が「クィー」で、「ї」が「ィイ」で、「в」が「ウ」である。ウィキペディアに“Київ”の音声ファイルがある。私の耳には「クィーリァ」に聞こえる。「ї」が「リ (li)」に、「в」が「ァ」に聞こえる。だから、「キーウ」と表記されると違和感がある。少しもウクライナ語に近くない。
川の名「ドニプロ」はウクライナ語で“Дніпро”で、単純にラテン文字に置き換えれば“Dnipro”となる。この「Dn」は英語にもない発音なので、私の耳には「ニープロ」に聞こえる。
カタカナ表記の地名は日本語と考えたほうが良いのではないかと思う。ウクライナ語を尊重するならキリル文字を使えばよい。
ヨーロッパの国々の興亡が激しく、地名の呼び名が頻繁に代わっていく。キエフも歴史的にはありうる呼び名である。