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大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです

少子化少子化とうろたえるな

2024-05-10 16:37:34 | 経済ニュース編

 政府は近年の少子化を憂い「異次元の少子化対策」と謳い、児童手当の充実、育休・時短勤務の奨励、出産費用の保険適用、保育所利用要件の緩和、住宅ローンの金利優遇、大学の授業料無償化などなど、信じられないほどの大判振る舞いを予定している。
 それらに要する予算額は3.6兆円規模と言われているが、いまだにその財源についてははっきりしていない。いずれにせよどのような仕組みを構築したとしても、これだけの大金をバラ撒くのだから結局とどのつまりは、高齢者をはじめとして国民全員に大きな負担増を強いることになるはずである。

 まあそれでも、これらのバラ撒きによって本当に少子化問題が解消するならば、未来の日本のために我々も我慢しても良いだろう。だがどう考えても、バラ撒きだけでは少子化の波は止まるはずがないのだ。まずはそれを検証するために、アジアでの少子化動向を記しておきたい。

韓国の少子化事情
 合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)が0.81(2021年)と圧倒的に低い状況に陥っている(因みに日本は1.30 中国は1.16 米国1.66 英国1.53 ドイツ1.58 ニジール6.82 ソマリア6.31)
 その主な理由は、教育に金がかかり過ぎる、ソウルの大学しか価値がない、行き過ぎた学歴社会、家賃が高く保証金も異常に高い、結婚したら家を持つと言う慣習がある、労働市場の格差と不安定雇用の増加、保育園や放課後教室などの不足、高学歴化と情報過多により家事・育児の負担や姻族との関係に否定的な女性が増加している

中国の少子化事情
 何と言っても過去の一人っ子政策がいびつな男女人口比を生み出したことが最大原因である。さらに韓国同様、莫大な教育費と、男性が家持ちでないと結婚しにくい、女性の高学歴化なども大きな要因となっている

 つまり少子化の一般的な背景として、基本的にアフリカなどの貧しい国では出生率は高くなり、豊かになると少子化が進む傾向がある。また女性の社会進出が進み一人でも暮らせる環境になったことも影響しているという。
 さらに子供は労働力で、老後の支えだった時代が終わり、逆に金食い虫的存在になった。ことにアジアでは一局集中的な傾向があり、地価が高騰し住宅環境が悪化している。また女性が自分より高い学歴を持つ男性を選ぶ傾向が強いことも影響しているようだ。

 さて日本における少子化原因についても、韓国・中国などとほぼ同様に莫大な教育費と高家賃が影響していることは否めないのだが、その根源にあるのは「豊かさ」の中で育ってきた親たち自身が、子供のために自己犠牲を覚悟することができないからであろう。
 子供がいてもいなくても、まずは服やバッグや装飾品はブランド品を買いたいし、美味しい贅沢な外食を続けたい、広くて綺麗な住居にかっこいい車を持ちたいし、ときどき海外旅行にもゆきたい。……といつまでも独身貴族気分から抜けられない。さらにはいじめや不登校などの社会問題も日常化している。

 だから「これらの極楽を投げ打ってまで子供など作りたくない」と考えるほうが正常思考なのではないだろうか。そして彼らは子育てが金だけの問題ではなく、肉体的にも精神的にもかなりの負担を強いられることもちゃんと分かっている。そんな本音が隠されているからこそ、冒頭で述べたバラ撒きだけの「異次元の少子化対策」が実施されたとしても、ほとんどの若者が、子育てなどと言うハイリスク・ノーリターンの一大難事業には絶対に手を出すわけがないのである。

 従ってもう効果の薄い「異次元の少子化対策」などのバラ撒きはやめたほうがよい。ある意味で少子化とは贅沢病だから、核戦争や大地震などが起こって、世界中が貧困に喘ぐようにならない限り、その連鎖は止まることがないだろう。
 当然、少子化でも平和と安定を選択したいし、「少子化の何が問題なのか!」と逆転の発想で前向きに開き直ったほうが得策なのだ。つまり世界的な視点で見れば、少子化こそ食料危機が緩和し二酸化炭素の減少にも貢献するではないか。もちろん一時的に生産性の低下は招くが、必ずしもGDPの増加が正確に豊かさを示す指標とも言い難いはずである。

 だからと言って、黙って指をくわえていればよいわけではない。少なくとも豊かさを目指す限り少子化は避けられないのだから、バラ撒きという安易な手法ではなく、少子化を前提とした社会構造の大改変、技術の大改革、AIの活用などに取り組めば、「たかが少子化」ぐらいは、必ずカバーできるはずだと確信したいのである。

作:蔵研人

 

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